税理士賠償責任

税務プランニング業務に関する税務アドバイスの契約書等について

法人との税務顧問契約における留意点(税倍の観点から)につき質問させてくださ
い。

業務内容は、主に法人税を中心とした税務プランニング業務(起きた事象ではなく、
例えばM&A検討時のストラクチャーなど、今後のことにつき相談を受けたり提案をし
ていき、有利な税務ポジションを確保することを目的とした税務アドバイス)であ
り、申告書作成は行いません。そのため、共有いただいている顧問契約のひな形か
ら、申告業務に関するものを削除し、業務内容を「税務相談」としてDraft化してい
くつもりでおるのですが、この際に税倍の観点から特に留意しておくべきことがもし
ございましたらご教示頂けないでしょうか。
また、賠償上限はひな形では2年分の報酬とされておりますが、これを半年分とする
と、そもそも有効でないとされるリスクはどの程度高まるものでしょうか。

どうぞよろしくお願いいたします。

1 ご質問

>業務内容は、主に法人税を中心とした税務プランニング業務
>(起きた事象ではなく、例えばM&A検討時のストラクチャーなど、今後のことにつき相談を
>受けたり提案をしていき、有利な税務ポジションを確保することを目的とした税務アドバイ
>ス)であ
>り、申告書作成は行いません。そのため、共有いただいている顧問契約のひな形か
>ら、申告業務に関するものを削除し、業務内容を「税務相談」としてDraft化してい
>くつもりでおるのですが、この際に税倍の観点から特に留意しておくべきことがもし
>ございましたらご教示頂けないでしょうか。

>また、賠償上限はひな形では2年分の報酬とされておりますが、これを半年分とする
>と、そもそも有効でないとされるリスクはどの程度高まるものでしょうか。

2 回答

税賠対策で重要な点は、
顧問契約書の雛形の説明書にもある通り、

①契約上の業務範囲の明確化
②資料提供等の役割・責任分担
③確認・説明と免責
④賠償責任の免責・制限
⑤中途解約条項
となります。

ご質問の「税務プランニング業務」
に関する留意点について、
各項目ごとに解説します。

(1)①契約上の業務範囲の明確化

こちらについては、より限定的な方が
税理士の先生の責任が認められない方向に
働きます。

ただ、税務プランニング業務ですと、
この範囲をどこまでに制限するのかは
事案事案の個別事情によってしまいます。

ア 税目による限定

例えば、事業承継対策などではなく相続税や贈与税
に関する業務を含まない見込みである
ということでしたら、

雛形別紙の記載のように「法人税、消費税、地方税に
関する」というような形で限定することは
必要かと思います。

イ 税務相談の範囲を限定

また、「税務相談」とすると
過去に発生した課税要件などについての
アドバイスになります(東京地裁平成24年7月13日)

将来のということですと、

「税務プランニング業務(過去の取引などの課税要件事実・税効果などに関する
アドバイスを含まない。)」

というような形で限定された方が良いと存じます。

記載例としては、
「法人税、消費税、地方税に関する税務プランニング業務(将来的な課税要件事実の発生を前提とする個別の税額計算等に関する事項のアドバイスに限られ、過去の取引における課税要件事実及び税効果などに関する事項に対するアドバイスを含まない。)」

とされた方が良いでしょう。

ウ 申告書などの税務書類の作成及び提出を含まないことの確認

また、税理士業務というと一般的に
税務申告がメインとなるというイメージがありますので、

「確定申告書などの税務書類の作成及び提出に関する業務
は含まない」

という記載もされても良いかと思います。

(2)②資料提供等の役割・責任分担

こちらは雛形のもので良いかと思います。

(3)③確認・説明と免責

特に将来のプランニングの際に
よく問題となるのが、

「将来の予測の過誤に起因する損害」

がどちらの責任となるかです。

これについては、

明確に
「将来の予測の過誤に起因して、甲に不利益が生じたとしても、
乙は責任を負わない。」

ということを記載されても良いでしょう。
(例えば、雛形の第5条第4項などとして追加)

(4)④賠償責任の免責・制限

>また、賠償上限はひな形では2年分の報酬とされておりますが、これを半年分とする
>と、そもそも有効でないとされるリスクはどの程度高まるものでしょうか。

これはミスの内容や損害の大きさや報酬額にもよってくる
ところですので、なんとも難しいところではあります。

2年分であれば絶対良いというものでもないですし、
半年分であれば、絶対ダメというものでもありません。

特に通常の顧問契約ではない今回のような
ケースですとなおさらかと思います。

紛争予防の効果を重視する(トラブルがあった際の
交渉の基準にする)ということですと
半年分とするのも良いかとは思いますが、

ミスがあって、大きな損害が生じたにも関わらず、
1年分の報酬額すら返さないという規定の場合に、
依頼者さんの感情として、そこを基準とするという発想に
なるのかという点があるところかと思います。

(5)⑤賠償責任の免責・制限

こちらは、説明書をご覧いただき、
適宜、業務内容にあわせて、表現を
ご修正いただければと思います。

3 その他

プランニングなどの仕事をされる場合、

特に、言った言わないで争いになる
ケース(説明責任)が
多くなりますし、
もちろん、個別的な要素が強いので、
契約書だけでヘッジできるもので
はありません。

ですので、通常の顧問業務でも
そうですが、

適宜、メールなどで説明したことの
証拠が残る形で、業務を進める
ことが重要かと思います。

よろしくお願い申し上げます。