会社法 法人税

清算結了の順番について

1.残余財産確定日 12月10日
2.株主総会承認日(清算結了日) 12月10日←登記申請中
3.最終残余財産分配日 12月11日
4.税務申告期限(最終分配前日まで) 12月10日

12月10日に上記の申告をしたら、税務署から別表1の「決算確定の日」を12月11日、「残余財産の最後の分配又は引渡しの日」を12月12日で訂正申告してくれとの依頼があったがどうでしょうか。

宜しくお願い致します。

1 ご質問

>1.残余財産確定日 12月10日
>2.株主総会承認日(清算結了日) 12月10日←登記申請中
>3.最終残余財産分配日 12月11日
>4.税務申告期限(最終分配前日まで) 12月10日

>12月10日に上記の申告をしたら、税務署から別表1の「決算確定の日」を12月11日、「残余財
>産の最後の分配又は引渡しの日」を12月12日で訂正申告してくれとの依頼があったがどうで
>しょうか。

2 回答

清算中の法人の残余財産が確定した
場合の申告は会社法との整合からすると
少しわかりにくいというか実態が異なる
部分があり、
以下、流れの説明をした上でないと、
なかなか伝わりにくいので、長文に
なりますがご容赦ください。

(1)残余財産の確定と確定申告

まず、法人税法上はご存知の通り、
残余財産の確定の日を事業年度の終了
日とみなし(法人税法14条1項21号)て、

残余財産の確定の

残余財産の確定の「翌日」から1か月以内で
あって、「かつ」残余財産の分配が実施される前日まで
に確定申告をしなければなりません(法人税法74条2項)。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(確定申告)
第74条 内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から二月以内に、税務署長に対し、確定した決算に基づき次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。
一 ・・・省略・・・
2 清算中の内国法人につきその残余財産が確定した場合には、当該内国法人の当該残余財産の確定の日の属する事業年度に係る前項の規定の適用については、同項中「二月以内」とあるのは、「一月以内(当該翌日から一月以内に残余財産の最後の分配又は引渡しが行われる場合には、その行われる日の前日まで)」とする。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

つまり、

>1.残余財産確定日 12月10日
>3.最終残余財産分配日 12月11日

としてしまうと

残余財産の分配が実施される前日まで
と考えるとご指摘の通り、

>4.税務申告期限(最終分配前日まで) 12月10日

となるとも思えるのですが、

条文はこれを第1項の「二月以内」の書き換え
としていますので、

申告期間は、各事業年度終了の日の「翌日」(12月11日)
から残余財産の分配が実施される前日(12月10日)まで

という論理矛盾が生じ、申告期間がないという
ことになってしまいます(実務上は、そのままに
適正な申告として扱われてるケースも多いかと
思いますが。)。

>税務署から別表1の「決算確定の日」を12月11日

とのことですが、
法人税法上、このケースの申告は、
株主総会の承認などを前提にはしていない
(残余財産の確定自体は清算人が行い、
その後、申告期限の1ヶ月以内に株主総会の承認
(決算報告の承認)が行われることが必須になっていません。)
ので、この指摘がどのようなことを意図しているのか
わからないところです。

ただ、推論にはなりますが、

>「決算確定の日」を12月11日、「残余財産の最後の分配又は引渡しの日」を12月12日で訂正
>申告してくれとの依頼

という税務署の指摘は、

残余財産確定日:12月10日
申告書の提出日:12月11日
残余財産の最後の分配又は引渡しの日:12月12日

とすれば、残余財産確定日の「翌日」(12月11日)
が申告期間として生じますので、そのようにしてくれという趣旨
なのかなとは思います。
(税務署としては、おそらく下記の
会社法の問題については利害関係がないと
思いますので。)

なお、このあたりの税務署からの指摘については、
現実としては、私は初めて聞きました。

(2)会社法(登記などの関係)

会社法上の論理でいうと、
清算結了の株主総会(決算報告の承認)は、

清算事務終了後に行うものになります(会社法507条第1項)。

そして、この清算事務には残余財産の分配が
含まれていますので、

>2.株主総会承認日(清算結了日) 12月10日←登記申請中
>3.最終残余財産分配日 12月11日

ということは本来想定されていません。

清算の結了により法人格が消滅するのも、

清算事務(残余財産の分配含む)終了後
かつ決算報告の承認をした時点になります。

もし、このいずれかの要件を満たさない
場合には、登記が入ったとしても、法人格
自体は消滅していないという解釈には
一応なります。

ただ、実務上は債権者がでてこなければ
特に法務上問題にならないので、
そのままになっていることも多いです。

なお、実務上は、最終残余財産の分配日と
株主総会承認日(清算結了日)は同一とする
ケースが多いかと思います。

(3)今後の対応

おそらくは税務署の指摘通りに
訂正しても、税額などの
変動はない事案なのかと思います。

ですので、対応としては、
税額などに変動が生じない場合には、
従っておくというのも1つかとは思います。

(税額の変動等不利益があるという場合には、
早急に個別相談のご連絡をいただければと思います。
事案によっては、手続自体をやり直すという選択肢もあるため。)

ただ、税務署の言っていることも
会社法的には誤りを含んでおりますので、

このような短期的に、
残余財産の確定から清算結了までを行う場合には、

1.残余財産確定日 12月10日
2.最終残余財産分配日 12月12日
3.株主総会承認日(清算結了日) 12月12日
4.税務申告期限         12月11日

というのが法人税法上も会社法上も辻褄があう
オーソドックスな形になるかとは思います。

その他、
法人税法74条第2項括弧書きは、

(「当該翌日」から一月以内に残余財産の最後の分配又は引渡しが行われる場合には、
その行われる日の前日まで)

とされていますので、

1.残余財産確定日 12月10日
2.最終残余財産分配日 12月10日
3.株主総会承認日(清算結了日) 12月10日
4.税務申告期限         12月11日

というのも理論上はありえます。
(ただし、法人格消滅後に誰が申告をするのか
という点はありますが、これは清算結了後の
登記も同様かと思いますので、特に問題は
起きないかと思います。ただこの場合、
清算人がいる12月10日までに委任状や支払いは
頂いておいてください。)

よろしくお願い申し上げます。