質問1
一般に連帯債務者間の負担部分は、当該債務者の特約
(合意)によって定まるものであり、特約がないときには、連帯債務により受けた
利益の割合によって定まり、なおこれによっても定まらないときは、各自が平等の
割合により負担するものと解されるところと記載がありました。
負担割合を合意書でなくても実際に負担している事実と登記の割合が等しければ
実務上は、問題になることはないでしょうか?
つまり、特約がなく合意書の作成はなくても、実態でそれぞれ負担している割合を
もって負担額の合意と解することで、実務上はあまり合意書を見たことが私はないのですが、
作成していなくても問題は生じないのでしょうか?
相続税法基本通達14-3
保証債務及び連帯債務については、次に掲げるところにより取り扱うものとする。
(昭57直資2-177改正、平15課資2-1改正)
(1) 保証債務については、控除しないこと。ただし、主たる債務者が弁済不能の状態にあるため、
保証債務者がその債務を履行しなければならない場合で、かつ、主たる債務者に求償して返還を受ける見込みがない場合には、
主たる債務者が弁済不能の部分の金額は、当該保証債務者の債務として控除すること。
(2) 連帯債務については、連帯債務者のうちで債務控除を受けようとする者の負担すべき金額が明らかとなっている場合には、
当該負担金額を控除し、連帯債務者のうちに弁済不能の状態にある者(以下14-3において「弁済不能者」という。)があり、
かつ、求償して弁済を受ける見込みがなく、当該弁済不能者の負担部分をも負担しなければならないと認められる場合には、
その負担しなければならないと認められる部分の金額も当該債務控除を受けようとする者の負担部分として控除すること。
質問2
連帯債務で10:0はあり得るのでしょうか?
0の人で債務の負担もなくて、登記の持分もないという状況は、あり得ますでしょうか?
下記のサイトでは0もあり得るとあります。
下記のサイトも合意書とあります。
その割合は、債務者間の特約または連帯債務を負担することによって受けた利益の割合によって定まるが、
これらの特別の事情がないときは、平等の割合と解される(判例・通説)それぞれの事情によって、
一人の債務者が全部を負担することもあれば、他の債務者の負担部分がゼロであることもありうる。』
三和一博『基本法コンメンタール』114頁(日本評論社、別冊、2005年)
http://d.hatena.ne.jp/sumusu/20120425/p1
質問3
下記の合意書は作成義務はあるものなのでしょうか?
連帯債務は見たことありますが、銀行側からは、関係ないので作成を求められたことは
ありませんが、実務上(対税務署)は必須でしょうか?
<連帯債務における負担割合を決める場合の合意書の例>
http://shm-keiei.com/asset_guide/tax_courses/acquirer_name1.html
質問4
仮に負担割合と負担額がずれたら、
その借入者が贈与を受けたものとして取り扱う金額は、歴年ごとにその返済があった部分の金額を基として計算することにされたい
とあるため、まとめて贈与ではなく(どのみち将来の負担額は計算できないのでまとめての計算はできなさそうですが・・・)、
その返済の都度、差額の贈与を受けていると考えることで合っていますでしょうか?
つまり毎年の贈与になるということで合っていますでしょうか?
http://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/590616/01.htm
=====
質問4について、自分なりに考えてみました。
パターンが2つあると考えました。
1.当初の登記割合と借入の負担割合がずれたら、ずれた差額は一時に贈与税がかかる。
2.連帯債務していて、片側に収入がなくなったりして、返済の途中から負担割合
の支払ができなくなった場合で負担してもらったときは、その返済の都度、暦年贈与となる。
>一般に連帯債務者間の負担部分は、当該債務者の特約
>(合意)によって定まるものであり、特約がないときには、連帯債務により受けた
>利益の割合によって定まり、なおこれによっても定まらないときは、各自が平等の
>割合により負担するものと解されるところと記載がありました。
>負担割合を合意書でなくても実際に負担している事実と登記の割合が等しければ
>実務上は、問題になることはないでしょうか?
>つまり、特約がなく合意書の作成はなくても、実態でそれぞれ負担している割合を
>もって負担額の合意と解することで、実務上はあまり合意書を見たことが私はないのです
>が、作成していなくても問題は生じないのでしょうか?
そうですね。
実務上は、実際に負担している事実と登記の割合が等しければ
この「利益の割合」として、扱われているケースがほとんどかと
思います。
ただ、問題になるケースがほとんどないのですが、
この「利益」の意味については、若干疑義のある
概念ですので、明確に合意書があればより良いと
思います。
>相続税法基本通達14-3
の「負担すべき金額が明らか」
と微妙な表現が取られていますから、
合意書があるとより安心かとは思います。
2 ご質問②
>連帯債務で10:0はあり得るのでしょうか?
>0の人で債務の負担もなくて、登記の持分もないという状況は、あり得ますでしょうか?
>下記のサイトでは0もあり得るとあります。
はい。ありえます。
3 ご質問③
>下記の合意書は作成義務はあるものなのでしょうか?
>連帯債務は見たことありますが、銀行側からは、関係ないので作成を求められたことは
>ありませんが、実務上(対税務署)は必須でしょうか?
連帯債務者間の負担については、銀行に利害関係がない
(銀行はいずれの連帯債務者にも全額請求できる)
ので、銀行が作成を求めることはありません。
実務上については、上記のとおりです。
4 ご質問④
>仮に負担割合と負担額がずれたら、
>その借入者が贈与を受けたものとして取り扱う金額は、歴年ごとにその返済があった部分の>金額を基として計算することにされたい
>とあるため、まとめて贈与ではなく(どのみち将来の負担額は計算できないのでまとめての>計算はできなさそうですが・・・)、
>その返済の都度、差額の贈与を受けていると考えることで合っていますでしょうか?
>つまり毎年の贈与になるということで合っていますでしょうか?
民法上、連帯債務者間で、負担割合より
多い金額を負担した者がいる場合、その超えた金額について
は、負担した者が負担してもらった者に対する求償権を取得します。
ですので、
この求償権を(債権)放棄した事実がないと
贈与があったとは評価できません。
それを前提にすると、
返済した時点で、贈与課税というのは、
おかしい話になります。
この点については、
相続税基本通達8-3にも明確に表れています。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/01/05.htm#a-8_3
たしかに、代わりに払ってあげたという事実から
そもそも求償権も放棄するという合意(
や一方的な債権放棄)があったという
ところまで読み取れる(認定できる)場合は、
贈与になりうるのでしょうが、
法律の考え方は上記なので、
特に連帯債務のケースでは
その後、長年求償権を行使していない、親族関係である
等の事実認定と評価の問題が含まれるところかと存じます。
(銀行から請求されれば支払う義務を負っている
わけですので、支払った事実のみで、求償権を放棄したというのは、
法制度を真っ向から否定するものになりかねません。)
ご記載の通達は
たしかにミスリードを招くもので、良くないですね。
よろしくお願い申し上げます。