以下の状況ですが
法定相続人が1名の場合、遺言執行者は実質的に機能するのでしょうか。
遺言執行者としての業務、又、責任はあるのでしょうか。
(状況)
・10年前に被相続人(母)が公正証書遺言作成、知人を遺言執行者に指定
・作成時、法定相続人2名(長男、長女)
・5年前に長女死亡
・今年9月に本人(母)が死亡
・相続財産は不動産と預貯金(相続税申告必要)
よろしくお願い致します。
>以下の状況ですが
>法定相続人が1名の場合、遺言執行者は実質的に機能するのでしょうか。
>遺言執行者としての業務、又、責任はあるのでしょうか。
2 回答
遺言の内容が、長男と長女(すでに死亡)のみに
財産を承継させるもので、それ以外の者に
遺贈するという内容は含まれていないことを前提とします。
また、遺贈ではなく、「相続させる」旨の
遺言であることを前提として回答します。
(「遺贈」であったとしても、実務的にとるべき
方法・結論に影響はしませんが、法的な説明が若干変わるため)
(1)法的な扱い
遺言の内容は、おそらく、
長男、長女に、不動産・預貯金を
それぞれ一部ずつ相続させるという
内容でしょうから、長女の死亡により、
長女へ相続させるとした部分は効力がなくなり
法的には、
①長男に相続させるとした財産は、遺言により長男に
②その他の残りの財産は、相続により法定相続人である長男に
帰属することになるかと思います。
(なお、長女に子がいる場合には、代襲相続人が法定相続人に
なりますが、ご質問内容から今回はいない前提かと思いますので、
その前提で回答します。)
今回の問題は、
①の部分について、遺言執行者の関与が
必要かどうかですが、相続させる旨の遺言は、
遺言執行者の関与なく、直接、相続させるとされた者に
財産が移転することになります。
したがって、長男に相続させるとされた
不動産・預貯金ともに、
すでに長男に帰属しており、
不動産の登記手続も、長男単独で行うことができます。
なので、遺言執行者が関与する余地はない
ということになるかと思います。
なお、遺言執行者は、遺言で指定されると
当然にその職務を行う義務があるものではなく、
就任を承諾したときから業務を行う義務を負います(民法1007条)。
なので、遺言執行者と指定された知人が就任を
承諾しないと、いずれにしても、その義務を負うものではありません。
(2)実務上とるべき方法
上記のとおり、特に遺言執行者が
関与する必要はありませんので、
知人に知らせることもなく、
実務的には
長男のみで登記と預貯金の解約・引出しの手続を
進めてしまってよいと思います。
その際に、遺言があるという事実を出すと、
上記のように①、②でそれぞれ別途資料の提出などを
求められると面倒がかかるので、
遺言の存在は銀行等に伝えずに、
単純に相続人が長男1人であり、法定相続により
承継したということで手続を進めるのが
簡便ですので、実務上はそのように対処する
ケースが多いでしょう。
上記の前提ですと、遺言があろうがなかろうが、
長男が1人で全財産を相続したことに変わりは
ないですし、このようにしても
特に問題にもなりませんので。
よろしくお願い申し上げます。