相談者の姉(95歳)が子供を産んだ際、事情があって、母親の子供として
役所に届出をしたそうです。戸籍上は母親の子として姉、相談者の弟として
記載されています。この事実を姉の子(記載は弟)は認識していて、姉は10
年ほど前に姉の子が事業に失敗したときにその補填をしています。
現在、姉の両親は亡くなっていて、相続人は相談者と姉の子のみです。
【質問】
相続順位は第一順位で、本来なら姉の子のみだと思いますが、戸籍上、
相談者の兄弟になっている場合、第三順位で、相談者と姉の子は1/2
づつ分け合う形でよろしいでしょうか。
姉は姉の子に財産を渡したくないということで、相談者に全て財産を渡す
といった内容の公正証書遺言を作成しているそうです。
この場合の遺留分の問題はどうなるのでしょうか。
よろしくお願いいたします。
>相続順位は第一順位で、本来なら姉の子のみだと思いますが、戸籍上、
>相談者の兄弟になっている場合、第三順位で、相談者と姉の子は1/2
>づつ分け合う形でよろしいでしょうか。
問題としては、戸籍上の「弟」が、
被相続人である姉の「子」と
認められるかどうかですが、
結論としては、認められると考えます。
母親と子の間に、親子関係があるかどうかは、
分娩の事実により判断され、
母親から生まれた子は、
法律上も子として扱われます。
これは戸籍に記載があるかどうかとは関係なく、
「子」であることに変わりはありません。
戸籍上では「弟」となっていることにより、
「子」ではなくなるというわけではありません。
戸籍に記載されていることが真実とは限らず、
また戸籍に記載されたとおりの法律上の効果が
発生するわけでもないからです。
(戸籍に公証力はありません)
したがって、戸籍上の弟(真実は子)が、
法定相続分全部を有しており、
相談者は、ゼロという結論になります。
なお、「子」であるということについて、
当事者間に争いがある場合には、
親子関係存在確認の訴えの中で
争われることになりますが、
母と子の親子関係は、
分娩の事実が認められるかどうかの立証問題
になりますが、
姉から生まれたということが間違いないのであれば、
現時点でそれとは異なる前提でアドバイスなどは
するべきではないでしょう。
また、これまでは、「弟」であることを前提と
して生活してきたにもかかわらず(もしかすると、
「弟」の地位に基づき、父母の相続により、
財産を承継しているのかもしれません)、
いまさら、姉の「子」であるという主張は、
信義則上許されないというような反論も
考えられないではないですが、裁判所が
信義則を適用するほどの事情があったかというと
難しいかと思います。
(信義則は非常に例外的な法理なので、
裁判所も適用には慎重です)
2 ご質問②
> 姉は姉の子に財産を渡したくないということで、相談者に全て財産を渡す
>といった内容の公正証書遺言を作成しているそうです。
> この場合の遺留分の問題はどうなるのでしょうか。
「弟」から遺留分請求が
なされることが前提ですが、
遺留分の計算においても、
上記のとおり、戸籍上の弟は、
真実は子であることを前提として、
計算することになります。
ですので、
法定相続分1×1/2(民法1028条2号)=1/2
が遺留分となります。
なお、姉は、「弟」の事業失敗の補填をしたという
事情があるようですから、
これは別途特別受益にあたる贈与として、
遺留分侵害額の算定の際に考慮する余地は
あると思います。
よろしくお願い申し上げます。