お世話になっております。●●と申します。
下記の件について質問します。
<前提>
〇顧問先が3年契約で店舗の賃貸借契約を結んでいた。
〇当初契約期間は来年8月末まで。
〇今年の9月に物件所有者が変更になった。新所有者は不動産会社。
〇新所有者から変更直後に顧問先に立退の話があったが後に撤回、
その後賃料の増額を求められ、契約更新前に覚書(次回更新時に増額
した賃料での契約をすること)を交わして欲しいと要求されている。
<質問>
1、所有者が変更になっても、契約期間満了までは従前との契約内容はそのまま
という考えでよろしいでしょうか。
2、契約書には貸主が契約解除する場合、6ヶ月前に相手に通告するとなっています。
この覚書には次回契約期間(3年)も記載されており、覚書を交わさず拒否した場合、
貸主より6ヶ月前に通告されたら物件の明け渡しはしなければならないものでしょうか。
3、契約書には契約が期間満了、解約、解除等に終了した場合、借主が原状回復し
移転料、立退料等の金品の請求をする事が出来ないとあります。
前項の契約解除の通告があった場合、借主はいかなる請求も出来ないという考えで
よろしいでしょうか。
顧問先としては事業継続の意思があるので、更新を望んでいますが、賃料増額を
受け入れないと契約解除されることを心配しております。
よろしくお願いいたします。
>1、所有者が変更になっても、契約期間満了までは従前との契約内容はそのまま
>という考えでよろしいでしょうか。
そのとおりです。
所有者(賃貸人)が変更されても、
従前の契約を引き継ぎますので、
新所有者との間で、内容の異なる
合意をしていない限り、
契約内容はそのままです。
2 ご質問②
>2、契約書には貸主が契約解除する場合、6ヶ月前に相手に通告するとなっています。
>この覚書には次回契約期間(3年)も記載されており、覚書を交わさず拒否した場合、
>貸主より6ヶ月前に通告されたら物件の明け渡しはしなければならないものでしょうか。
(1)定期借家契約の場合
ご質問にある契約が、
定期借家契約(契約の更新がない賃貸借契約。借地借家法38条)
である場合には、契約期間満了により、
賃貸借契約は更新されずに、終了します。
(なお、この場合でも、貸主から、
期間満了の6か月前までに、
契約を終了する旨の通知は必要です。)
したがって、定期借家契約で、
貸主から契約が終了する旨の通知を
受けた場合には、契約期間満了により、
終了し物件を明け渡さなければなりません。
なお、次回契約期間が記載してあることを根拠に、
定期借家契約ではない(更新を予定している契約である)
という主張もあり得ますが、
なかなか厳しいと思います。
(2)普通借家契約の場合
ご質問の契約が、普通借家契約である場合
(契約の更新がなく期間満了により終了する旨が
契約書に記載していなければ、普通借家契約と
判断していただいてよいです)、
貸主が、期間満了により契約を終了する
(契約更新を拒絶する)場合には、
期間満了の6か月前までに、更新しない旨を
通知する必要があり(借地借家法26条1項)、
かつ、更新しないことについて、
「正当な事由」が必要となります(借地借家法28条)。
正当事由が認められるかどうかの考慮要素としては、
・貸主が建物の使用を必要とする事情(建替えの必要性なども含む)
・借主が建物の使用を必要とする事情
・建物賃貸借に関する従前の経過
・建物の利用状況・建物の現状
・立退料の支払いの有無
などがあります(借地借家法28条)。
一般的に「正当事由」が認められる
ハードルは高いですが、
建物が老朽化して、取り壊しの必要があったり、
建替えを予定しているような場合で、
立退料の支払を条件として、
認められるのが典型的です。
このような事情がないのであれば、
正当事由はなかなか認められません。
貸主は、賃料増額を求めているようですが、
賃料増額を受け入れないからといって、
正当事由が認められるということにはなりません。
なので、賃料増額が不当であるということであれば、
これを拒否していただいてもよいかと思います。
(なお、周囲の賃料相場が上昇しているなどの事情があれば、
賃料増額自体が、法律上認められる可能性はありますが、
これと立退の根拠となる「正当事由」は別の議論です。)
3 ご質問③
>3、契約書には契約が期間満了、解約、解除等に終了した場合、借主が原状回復し
>移転料、立退料等の金品の請求をする事が出来ないとあります。
>前項の契約解除の通告があった場合、借主はいかなる請求も出来ないという考えで
>よろしいでしょうか。
期間満了に際して、
契約解除(契約の更新拒絶)の通告があった場合、
上記のとおり、定期借家契約であれば、
契約期間満了により契約が終了しますので、
立退料などの支払いを
求めることはそもそもできません。
一方、普通借家契約の場合には、
契約解除(契約の更新拒絶)の通告があったとしても、
そもそも更新拒絶が認められるかどうか
という問題があるのは、上記のとおりです。
(賃料の滞納など、借主側に
帰責事由がある場合は別ですが)
そして、立退料の支払がない場合には、
基本的には、契約更新を拒絶する正当事由が
認められませんので、解除(更新拒絶)自体が
できないという関係にあります。
したがって、普通借家契約の場合、
ご質問のような規定があるからといって、
貸主が契約更新を拒絶する場合に、
立退料を支払わなくてもよくなる
というものではありません。
よろしくお願い申し上げます。
普通借家契約についてですが、契約上、期間満了前の6ヶ月前までに双方の
意思表示がない場合は自動的に更新される旨、更新継続の場合は更新料を
支払う旨が記載されている場合、普通借家契約であると理解でよろしいでしょうか。
重ねて質問申し訳ありません、よろしくお願いいたします。
>意思表示がない場合は自動的に更新される旨、更新継続の場合は更新料を
>支払う旨が記載されている場合、普通借家契約であると理解でよろしいでしょうか。
はい。
そのようにご理解
いただいて問題ありません。
よろしくお願い申し上げます。