質問を2つお願いします。
質問①
今回の民法改正により、相続人に対する贈与は、
相続開始時の10年間にしたものに限り遺留分算定基礎財産へ算入すると理解してい
ますが、
遺留分に関する民法の特例の固定合意がある非上場株式が相続開始前10年超の贈与に
なった場合の遺留分算定基礎財産の算定について教えてください。
疑問になっているのは、固定合意をした非上場株式の贈与が相続開始前の10年超に
なった場合です。
この場合は、遺留分算定基礎財産の算定から除外されるのでしょうか。
それとも固定合意時の価額によって算入されるのでしょうか。
質問② 遺留分侵害がなく、特別受益持ち戻し免除が無い場合の特別受益の持ち戻し
について
遺留分侵害がなく、特別受益の持ち戻し免除が無い場合の特別受益の持ち戻しは
10年を境に取扱いが変わることはあるのでしょうか。
具体的には、10年超のものについては、遺留分算定基礎財産の算定と同様に、特別受
益の持ち戻しの計算から除外されるのでしょうか。
以上です。
よろしくお願いします。
>質問①
>今回の民法改正により、相続人に対する贈与は、
>相続開始時の10年間にしたものに限り遺留分算定基礎財産へ算入すると理解してい
>ますが、
>相続開始時の10年間にしたものに限り
の部分について、先生はご承知のとおりですが、
正確には、
いわゆる相続人に対する特別受益に
該当する贈与について、
10年間に限り遺留分算定の基礎に
算入することとされています。
(改正後の民法第1044条3項、1項1文目)
そして、これには例外もあり、
「当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与」
については、10年の期間制限なく、
どれほど前になされた贈与であっても、
遺留分算定の基礎に含まれることになるのは
先日の回答のとおりです。(改正後の民法第1044条3項、1項2文目)
(他の会員様もご覧のため念のためです。)
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【改正後の民法】
第1044条
1 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
2 第904条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。
3 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については
、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。
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>遺留分に関する民法の特例の固定合意がある非上場株式が相続開始前10年超の贈与に
>なった場合の遺留分算定基礎財産の算定について教えてください。
>疑問になっているのは、固定合意をした非上場株式の贈与が相続開始前の10年超に
>なった場合です。
>この場合は、遺留分算定基礎財産の算定から除外されるのでしょうか。
>それとも固定合意時の価額によって算入されるのでしょうか。
この部分については、相続法改正前から
10年限定の絡みで、どのようにケアされるのか
私も注目していた部分でしたが、
特段解釈上のケアもされませんでした。
(審議会の段階でも、議論の対象にすらされて
いませんでした。)
固定合意は、そもそも民法上遺留分基礎財産に
入る財産の「価額」についての合意ですから、
贈与財産が、民法上、遺留分算定基礎財産に含まれない
ということであれば、固定合意時の価額が算入されること
にはならないと考えるのが筋は通るかと思います。
ただし、固定合意をした以上は、期間関係なく
算入する合意になるという考え方もないわけでは
ないというように認識していますし、
円滑化法10条の合意の効力の消滅事由に、
相続法改正に合わせて、このことが規定
されなかったという点も併せて考えると、
微妙な判断になるかと思っています。
ですので、実務的には将来の紛争を防ぐため、
合意書に相続開始時に適用される民法の規定に
より、合意対象財産が遺留分算定基礎に
含まれない場合にはこの限りではない
ことを確認するなどの文言を入れた上で
許可がおりるのかなどの実務検証を含めて、
対応を考えていたところです。
なお、一般論としては、
税金などと異なり対国との関係の
問題ではなく、家族の問題であるため、
(単純な損得ではない)
後者の解釈になったとしても、
現状の株式価格を前提に揉めないように
対策をするという意味では、
固定合意の存在意義自体は残るかとは思います。
(先日、ご質問いただいた事項は、
この趣旨だったのかと改めて気付きました。
失礼いたしました。)
2 ご質問②
>質問② 遺留分侵害がなく、特別受益持ち戻し免除が無い場合の特別受益の持ち戻し
>について
>遺留分侵害がなく、特別受益の持ち戻し免除が無い場合の特別受益の持ち戻しは
>10年を境に取扱いが変わることはあるのでしょうか。
>具体的には、10年超のものについては、遺留分算定基礎財産の算定と同様に、特別受
>益の持ち戻しの計算から除外されるのでしょうか。
10年超えのものでも、
特別受益については、相続分の算定の
基礎には含まれることになります。
こちらについては、遺留分の算定基礎とは異なり、
民法改正により、変更はありません。
よろしくお願い申し上げます。