1.被相続人甲(平成28年6月死亡)、相続人A及びBは平成30年1月に遺産分割協議。
その際、契約者=甲、被保険者B、死亡保険金及び生存給付金受取人=甲という
生存給付金付終身保険契約があり、この生命保険契約は相続人Aが取得しました。
甲の死亡後、平成28年7月に生存給付金の支払事由が発生していましたが、
遺産分割協議が成立していなかったため、保険金の請求が行われずにいました。
この度、相続人Aが保険契約の解約手続きを行ったところ、生存給付金の支払事由
発生時(平成28年7月)に生存給付金の受取人(=甲)が死亡している場合には、
約款により、給付金の受取りは被保険者(=B)の権利となり、遺産分割協議による
継承の対象にはならない(保険会社より)とのことでした。
2.質問
遺産分割協議書には、「本協議書にて分割を定められなかった被相続人の遺産、
及び本協議成立後において発見された被相続人の遺産は、相続人A、Bが
各2分の1の割合にて取得する。」とあります。
この生存給付金はどのような扱いになりますでしょうか?
相続人Aの弁護士は、A、Bで2分の1ずつ分けるのが適当であると言っていますが、
いかがでしょうか?
よろしくお願いいたします。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>遺産分割協議書には、「本協議書にて分割を定められなかった被相続人の遺産、
>及び本協議成立後において発見された被相続人の遺産は、相続人A、Bが
>各2分の1の割合にて取得する。」とあります。
>この生存給付金はどのような扱いになりますでしょうか?
>相続人Aの弁護士は、A、Bで2分の1ずつ分けるのが適当であると言っていますが、
>いかがでしょうか?
2 回答
契約者甲の死亡により保険契約が終了するかどうかについて、
約款の定めによるところですが、
>その際、契約者=甲、被保険者B、死亡保険金及び生存給付金受取人=甲という
>生存給付金付終身保険契約があり、この生命保険契約は相続人Aが取得しました。
ということなので、
契約者甲の死亡によっても
保険契約は終了しておらず、
保険契約における契約上の地位を
相続人Aが取得したということだと思います。
(その後の保険会社からの回答も、
これを前提としているものと思います)
保険金の請求権という権利は、
支払事由が生じたときに発生し、
そのときの受取人が保険金を受領する
権利を有します。
そこで、
>生存給付金の支払事由発生時(平成28年7月)
の受取人が誰であったかが問題となりますが、
保険会社のいうように、
>受取人(=甲)が死亡している場合には、
>約款により、給付金の受取りは被保険者(=B)
となるということであれば、
受取人はBということになります。
(保険法には、受取人が死亡し、新たな
受取人の指定もない場合に受取人となるのは、
その相続人であるという規定が
ありますが、これは保険約款で変更する(自由に定める)
ことが可能です)
もちろん、ご本人様にも、約款をご確認
いただいた方がよろしいかとは思います。
そして、保険金請求権は、受取人であるB固有の
権利なので、遺産にはならず、
Bが取得することになると考えられます。
保険約款に上記と異なるような
定めがあるのであれば別ですが、
論理的には、このような結論になると考えられます。
その他、
>その際、契約者=甲、被保険者B、死亡保険金及び生存給付金受取人=甲という
>生存給付金付終身保険契約があり、この生命保険契約は相続人Aが取得しました。
ということですが、
この遺産分割の合理的意思解釈
として、生命保険契約から生じる
保険金相当額を代償金として、B→Aに
支払う趣旨であったなどの主張は
あり得るところかと思いますが、
通常の分割協議書ですと、
そのように考えることは難しいかと
思います。
なお、
>相続人Aの弁護士は、A、Bで2分の1ずつ分けるのが適当であると言っていますが、
>いかがでしょうか?
こちらについては、根拠がよくわかりませんが、
いただいた事情から判断すると
公平に1/2だと言っているだけの
可能性が高いのかなというところです。
よろしくお願い申し上げます。