・地方で農業を営む個人(事業主)のAさんがいます
・農協の薦めで15年ほど前から借入をして、アパート経営もしています
・確定申告は農協がしており、申告書の税理士署名欄や収支報告書の依頼税理士欄には「民間団体(○○農協)」と記載され、税理士名や押印はありません
・賃貸物件の管理、修繕、保険、借り入れなども農協が間に入り一手に行っているそうですが、詳細はよくわかりません
・今般、税務の受託となりますが、総勘定元帳等の資料を農協側が出してくるかが微妙です
・Aさんは農業以外にあまり興味がないようですが、Aさんの母の相続が近いこともあり、相続の相談から、農協にいいようにされているのではないかとの不安が出てきています
・Aさんの母についても公正証書遺言書が作成されていますが、これも農中信託銀行の主導で行われています
(質問事項)
・今までの申告については、農協側は税理士法違反ということになるのでしょうか?
・申告内容を含めた状況を確認することが主目的ですが、このような場合、有効な手立てはありますでしょうか
よろしくお願いいたします。
>・今までの申告については、
>農協側は税理士法違反ということになるのでしょうか?
この農協についてですが、いわゆる臨税として
税務申告書の作成をしていたものと思われます。
最近は、税理士の先生の増加などに伴い実質廃止
している地域も多いですが、地方によっては
まだ認めているケースも多いです。
根拠は以下になります。
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税理士法第50条
国税局長(地方税については、地方公共団体の長)は、
租税の申告時期において、又はその管轄区域内に災害があつた場合その他特別の必要がある場合においては、申告者等の便宜を図るため、税理士又は税理士法人以外の者に対し、その申請により、二月以内の期間を限り、かつ、租税を指定して、無報酬で申告書等の作成及びこれに関連する課税標準等の計算に関する事項について相談に応ずることを許可することができる。ただし、その許可を受けることができる者は、地方公共団体の職員及び公益社団法人又は公益財団法人その他政令で定める法人その他の団体の役員又は職員に限るものとする。
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(臨時の税務書類の作成等を許可する役職員の属する法人その他の団体)
同法施行令第14条 法第50条第1項ただし書に規定する政令で
定める法人その他の団体は、農業協同組合、漁業協同組合、
事業協同組合及び商工会とする。
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2 ご質問②
>・今般、税務の受託となりますが、総勘定元帳等の資料を農協側が出してくるかが微妙です
>・申告内容を含めた状況を確認することが主目的ですが、このような場合、有効な手立ては>ありますでしょうか
こちらは、どのような契約で
農協が税務書類の作成などを引き受けていたかにも
よってしまうところですが、
無償だとしても、委任契約は成立しています(むしろ、民法上は特約なき限り無償)。
仮に、総勘定元帳の資料をAさんは持っておらず、
農協だけが保有しているという状態であれば、
委任契約がある以上、備え置きがなければ、
いわゆる「青取り」対象になりえますので
引き渡す義務自体は委任契約から導かれるでしょう。
仮にAさんから農協が受け取っていたケースであれば、
委任契約に基づく「受取物」として、引き渡しが必要に
なります(民法646条)。
また、申告内容の確認についてですが、
委任契約の受任者は、委任者の請求があった場合には、
委任が終了したのちは、遅滞なくその経過及び
結果を報告しなければならない(民法645条)
とされています(確かに既に説明したと言われ
てしまうといった言わないの話になるのですが)。
まずは、教えてくださいというスタンスで、
情報を聞き、
対応が悪いようであれば、上記のような法的な
根拠から、しっかりと説明などするように
求めていくということになるかと思います。
よろしくお願い申し上げます。