【前提条件】
昼営業(9時から15時)のみしているカフェ(A社)があります。
夜の時間を知人に貸して、営業しようと思っています。
形態としては、売上、経費等はA社で計上し、利益が出た分
のうち、A社の手数料を引いて、知人に支払う形を考えています。
もし、利益が出ていない場合は、0円ということもあり得ます。
このような形で営業することについて、A社と知人の間で、
合意しているところです。
【質問】
この場合、「完全歩合制」の形なので、業務委託契約を結ぶのがいいかと
思うのですが、税務上の「給与か?外注費か?」という論点にてらすと
「外注費(業務委託)」は難しいように思います。
(営業時間があるので、時間的拘束は出てきますし、調理用具等、
設備は、カフェのものを使うことになります。)
調べてみると、給与の場合、「完全歩合制」は労働基準法に違反とありました。
「固定給+歩合給」の場合、固定部分を低く抑えて、成果に応じて歩合給を
支払うような記載があったのですが、この「低く抑える」はどの程度のことを
いうのでしょうか?
それとも、「完全歩合制」でも「固定給+歩合給制」でも、賃金と時間をてらして、
最低賃金以上であれば、問題ないという解釈でしょうか?
上記のような前提条件の場合、どのような形にするのが、
一番合致する形になるのか?悩んでいます。
お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
>この場合、「完全歩合制」の形なので、業務委託契約を結ぶのがいいかと
>思うのですが、税務上の「給与か?外注費か?」という論点にてらすと
>「外注費(業務委託)」は難しいように思います。
>(営業時間があるので、時間的拘束は出てきますし、調理用具等、
>設備は、カフェのものを使うことになります。)
>調べてみると、給与の場合、「完全歩合制」は労働基準法に違反とありました。
>「固定給+歩合給」の場合、固定部分を低く抑えて、成果に応じて歩合給を
>支払うような記載があったのですが、この「低く抑える」はどの程度のことを
>いうのでしょうか?
>それとも、「完全歩合制」でも「固定給+歩合給制」でも、賃金と時間をてらして、
>最低賃金以上であれば、問題ないという解釈でしょうか?
>上記のような前提条件の場合、どのような形にするのが、
>一番合致する形になるのか?悩んでいます。
2 回答
以下、前提条件にあるとおり、
売上を分けたりはしない前提で、
回答いたします。
(1)雇用と業務委託(個人事業主)の区別
法律上の雇用と業務委託(個人事業主)の区別基準について、
大きく分けると、以下の2つの要素から判断されます。
①使用者の指揮監督下における労務提供か否か(労務提供の態様の従属性)
②報酬の労務対償性の有無(報酬の計算方法など)
事案に応じて、以下のような要素が考慮されます。
~~~~~~~~~~~~~~~~
・仕事の依頼・業務従事の指示等に対する諾否の自由がない
・業務遂行上の指揮監督の程度が強い
・勤務場所・勤務時間が拘束されている
・報酬の労務対償性の有無
※報酬が、仕事の成果ではなく働いたことそのものに対するものである場合や、
報酬が時間給や日給によって定められているような場合を指します。
・機械・器具が会社負担によって用意されている
・報酬の額が一般従業員と同一である
・専属性がある(「その会社の仕事しかしない」など)
~~~~~~~~~~~~~~~~
この中でも、特に要素として大きいのは、
以下の観点です。
・仕事の依頼・業務従事の指示等に対する諾否の自由がない
・業務遂行上の指揮監督の程度が強い
ご質問の内容からすると、
業務遂行上の指揮監督をなくし、
店の運営も任せる(裁量をかなり広くする)という
方向性で検討すれば、業務委託ということも
可能ではないかと思います。
たとえば、店のメニューや価格などを
自由に決めてもらう、その他の運営管理についても
口を出さないなどが考えられます。
たしかに、
>(営業時間があるので、時間的拘束は出てきますし、調理用具等、
>設備は、カフェのものを使うことになります。)
の事情は、業務委託というには大きなマイナスの要素です。
例えば、営業時間や休業日の決定権まで
Aに与える契約・実態があれば、業務委託と
いえる可能性が非常に高くなりますが、
現実論として、A社としてそれで問題が
ないのかはご検討いただくことになるかと思います。
もちろん、グラデーション(程度)の問題です
ので、譲れないところは譲らず、譲れる部分で
裁量を広くするという部分を探るという
方法もありだと思います。
今回の業務内容でいうと営業時間は譲らないけども、
休業日の裁量をAに与えるという方法でも、
業務委託であるとされる可能性はかなり高くなります。
ただし、譲らない
ところは譲らないというスタンスですと、
最終的には実態の認定の問題になりますので、
100%安全ということはないので、その部分は
A社様にご判断いただくことにはなるでしょう。
ただ、具体的なご事情をお伺いし、
詳細な検討+契約書の作成などをしないと
判断するのは難しいですが、
業務委託の方向性を探るのはありかと思います。
その他の方法として、
知人に法人を設立してもらい法人間の契約に
するというのも一つかと思います。
この形態であれば、業務委託とされる可能性が
極めて高くなります(法人格否認の法理など
例外的な論理で、実態はAと知人個人との契約であるという
ことも理論上はありえますが、ハードルが
かなり高くなります。)。
(2)雇用の歩合制における規制
ア 出来高払いの保障給
雇用契約では、
歩合制の場合、労働基準法27条により、
一定額の賃金を保障しなければならないとされています。
この規制により、いわゆる「完全歩合制」(一定額の
賃金保障がない)は雇用契約においては
採用することができません。
~~~~~~~~~~~~~~~~
労働基準法
(出来高払制の保障給)
第27条 出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。
~~~~~~~~~~~~~~~~
「一定額」について、特に明確な定めはありませんが、
厚労省の見解としては、だいたい平均賃金(月々で
平均した給与額)の60%程度とされており、
これが目安になると思います。
イ 最低賃金法による規制
また、実際に支払われる賃金が、
最低賃金を下回っていれば、これも違反となります。
よって、雇用である以上は
・だいたい平均賃金の60%程度は毎月保障する
かつ
・最低賃金を下回らない
の両方が必要ということになります。
(3)今後の対応について
業務委託であると言い切れる事案ではないので、
対応として安全なのは、「雇用」とすることです。
実際は業務委託の実態であるが、
「雇用」としておくことで、特に文句を
言われることもありませんので。
(労働者にとっては、保障が手厚くなるだけです)
ただ、雇用とすると、上記のような給与に関する
規制がかかってきますので、
想定されているような「利益がゼロであれば、報酬もゼロ」
というようなことはできません。
この部分が譲れないということであれば、
上記のように、業務遂行上の指揮監督をなくし、
店の運営も任せる(裁量をかなり広くする)という
方向性で、業務委託といえるような実態を作り、
業務委託として整理することも
検討してよいかと思います。
また、業務委託でいくのであれば、
上記のとおり、法人を設立してもらい、
法人間の契約としておくという方が
安全性は高まりますので、
ご検討いただいた方がよいかと思います。
よろしくお願い申し上げます。