ここで、ちょっと疑問に思っているのは、例えば議決権はないとした優先株式を発行した上で、その優先株式に役員の選任などについて拒否権をつける、といったことがあります。拒否権があればその対象となる株主総会決議を拒否できるので、議決する権利と言い換えてもいいと思うのですが、拒否権と議決権、何か観念的な違いはあるのでしょうか。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
>現状、同族会社の判定において、
>役員の選任などに関する議決権がある株式を有する場合、
>その議決権についても考慮することとされています。
>拒否権があればその対象となる株主総会決議を拒否できるので、
>議決する権利と言い換えてもいいと思うのですが、拒否権と議決権、
>何か観念的な違いはあるのでしょうか。
「拒否権付株式」とは、会社法の建付では、
ある特定の事項について決定する場合に、
通常の株主総会のほかに、拒否権付株式を有している
株主のみの種類株主総会の承認決議も
必要とする株式をいいます。
拒否権付株式の対象とされた事項については、
全体の株主総会で承認しても、
拒否権付株式の種類株主総会で
拒否すれば、通りません。
これがいわゆる「拒否権」と
呼ばれているものです。
つまり、拒否権は、ある特定の事項についての
種類株主総会の100%議決権ということになります。
以下では、
・通常株主総会の議決権を「議決権」
・上記のある特定の事項についての種類株主総会の議決権を「拒否権」
とします。
観念的な違いでいえば、
議決権は積極的に議案を決定する力を有しますが、
拒否権は、拒否することができるにすぎず積極的に
何かを決定する力はない
という説明になるかと思います。
つまり、役員の選任の例を挙げると、
議決権であれば、誰(A)を取締役に選任する
かということについてまで、力を持ちますが、
拒否権であれば、Aを取締役に選任することを
拒否はできますが、例えば、自己が希望するBを
取締役に選任することについては、議決権で
決定してもらわない以上、何もできないという
ことになります。
よろしくお願い申し上げます。