民法 倒産法 貸倒 法人税

貸倒時期と金額を把握するための破産終結の決定又は廃止の確認

以下のことに関してお教えいただきたく思います。

(前提)
1.甲社の決算日は8月31日である。
2.昨年の8月31日までの間において、甲社の得意先A社が破産法の適用を受け
た。
3.また同日までの間において、甲社が有するゴルフ会員権に係るゴルフ場を経営
 するB社も破産法の適用を受けた。

(質問等)
1.破産債権については、破産終結の決定や破産廃止の決定があった場合、
その決定 による回収不能額について、その決定のあった日の属する事業年度の貸倒損失として認められるため、
前提2及び3について、それぞれ破産終結又は廃止の決定の日並びに決定による
回収不能額を知る必要があります。

2.官報を購読して常に確認するようにすればよかったのでしょうが、甲社の担当者は
官報は購読しておらず、また、今後も購読するつもりはないようです。(何かと忙しいのでということがあるようです)
3.これは参考としてついでにお教えいただきたいのですが、
官報によって回収不能額まで知ることができるのかという疑問があるのですが実際にはどうなのでしょうか。
4.そもそも破産終結の決定や廃止の決定の連絡に関しては何もなされないものなのでしょうか。
5.もし上記4の通りの場合、甲社側から問い合わせるしか方法はないと考えます
が、そういうことでよろしいでしょうか。
また、問い合わせ先は破産管財人でしょうか。

上記のことに関してご教示いただきたく思います。
よろしくお願い致します。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

>破産債権については、破産終結の決定や破産廃止の決定があった場合、その決定
>による回収不能額について、その決定のあった日の属する事業年度の貸倒損失と
>して認められるため、前提2及び3について、それぞれ破産終結又は廃止の決定の
>日並びに決定による回収不能額を知る必要があります。

ご質問の1番のご趣旨は、

①破産手続終結決定または廃止決定確定の日(貸倒基準時期=法人格消滅の日)
②回収不能額(いくらが貸倒れとなるか)

の2点を知る方法について知りたいという
ことかと思いますので、以下解説し、
その他の質問について回答します。

1 ①破産手続終結決定または廃止決定確定の日(貸倒基準時期)

まず、時期(法人格が消滅した日)を知るには、
破産した会社の閉鎖登記簿謄本を取得することです。
(ネットで登記情報の閲覧が
利用可能な環境があれば、300円程度で取得できます。)

この決定がされた場合、登記簿に
破産手続終結決定日または廃止決定確定の日

が裁判所書記官の職権で登記されていますので、
そちらで確認することが可能です。

2 ②回収不能額(いくらが貸倒れとなるか)

(1)廃止決定確定の場合

登記情報をご確認いただき、
廃止決定の場合は、残余財産の債権者への
配当はなかったということですので、
このケースでは、全額回収不能という
ことになります。

なお、廃止決定の場合は、
「破産手続廃止決定証明書」というものを
管財人に対し請求して、
受け取る債権者(特に会社)が実務上は
多いです(明確な証拠取得のため)。

(2)破産手続終結決定の場合

この場合、
破産手続の流れとしては、
私のサイト記事に
https://zeirishi-law.com/kashidaole/houtekiseiri/1#31
ある通り、

破産開始決定後に「破産債権の届出」という
手続がありますが、この届出は、

債権者(つまり先生のお客様)から行う必要
があります。

ア 破産債権の届出をしている場合

この場合、配当がある(廃止ではない)場合には、
債権者集会により配当計画を確認できますし、その後
実際に配当がされますので、そこで知ることができます。

なお、管財人に各関連資料を請求することも可能ですので、
管財人に連絡を入れるというのが最も安全ではあります。

イ 破産債権の届出をしていない場合

この場合は、破産手続への参加の機会を
与える必要はない(自ら債権の届出をしていないため)
と法律は考えるため、

その後、何の連絡も来ません。

その場合にも、法人格の消滅(終結決定)時点で、
法人格が消滅している以上、その時点で、
全額貸倒れになると考えることになるでしょう。

(なお、更生手続における非更生債権(債権届出をしていない)等の処理でも、
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/14/14_03_02.htm
法人税法基本通達4-3-7の通りとされていますので、
法人格の消滅を伴う破産の場合は、なおさらでしょう。)

3 その他

>これは参考としてついでにお教えいただきたいのですが、官報によって回収不能
>額まで知ることができるのかという疑問があるのですが実際にはどうなのでしょう
>か。

官報では、回収不能額までは知ることができません。

>4.そもそも破産終結の決定や廃止の決定の連絡に関しては何もなされないものなの
>でしょうか。

決定自体の連絡はありません。
債権者集会で口頭にて、

任務終了の債権者集会というものの日付
が説明されるというのが通常ですね。

ですので、上記の通り、
配当があり、破産手続終結決定のケースで、
金額を実際の配当額以上の証明も含めて知りたいということで
あれば、管財人に問い合わせるというのが安心な方法には
なります。

よろしくお願い申し上げます。