株式 会社法

組織再編の反対株主の買取価格

以前、ある税理士の株対策のセミナーで、株式移転を行う場合
それに反対する株主から買取請求を受けるリスクがあると説明され、
その時の買取価格は「なかりせば価格」になると聞きました。

ただ、以下を前提とすると、会社法が施行された今は「なかりせば価格」では
買取価格にならないと思うのですが、どうでしょうか。

http://www.aiben.jp/page/library/kaihou/2204_02zitumu.html

その他、以下のように、組織再編のシナジー効果を考慮しての解説もあり混乱しておりますので、正しい解釈についてご教示ください。

https://blog.goo.ne.jp/minatokoike/e/b4420301091377282d784b4a1dbc6cc5

よろしくお願いいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>ただ、以下を前提とすると、会社法が施行された今は「なかりせば価格」では
>買取価格にならないと思うのですが、どうでしょうか。
>その他、以下のように、組織再編のシナジー効果を考慮しての解説もあり混乱しておりま
>すので、正しい解釈についてご教示ください。

2 回答

ご指摘のとおり、会社法の改正により、
組織再編の際の株式買取請求における価格は、
「公正な価格」とされており、
これは、いわゆる「なかりせば価格」を
指すものではありません。

「公正な価格」は、組織再編によって生じる
シナジーも考慮したうえで決定されるものと
解されています。

現状の最高裁の整理は、
以下のようになっています。

◯最高裁平成23年4月19日決定
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/262/081262_hanrei.pdf

まとめると、組織再編における株式買取請求では、

・組織再編によりシナジー効果が生じて
企業価値が上昇する場合には、
そのシナジーを織り込んだ価格が、
「公正な価格」になると解されています。

・一方、組織再編により企業価値が毀損される
場合や企業価値の変動が生じない
場合には、シナジーは考慮する必要がないため、
組織再編がなかったものと仮定した価格
を指すと解されています(いわゆる「なかりせば価格」)。

なお、ご質問の趣旨とはズレるかと思いますが、
特に非上場会社の組織再編時の「公正な価格」に
ついての評価方法は、

DCF法、配当還元方式、収益還元方式、類似会社比準方式、純資産方式
などを、個別の会社の事情に応じて複合的に利用する
例が多いかと思いますが、個別事情によるところになります。

最終的にはあくまでも裁判所の裁量で決めるような形になって
しまうのが現状です。

よろしくお願い申し上げます。