相続 贈与 遺産分割

贈与契約書や分割協議書の自署について

贈与契約書や遺産分割協議書の署名に関しての相談です。
本来であれば「自署」すべきところ本人に手の障害があるような場合、
自署と同一の法律的効果が及ぶ方法がありましたらご教示ください。
例えば、契約書等に何らかの文言を表記して家族が代筆することでも
有効になるのであれば、その文言をお教え頂けましたら幸いです。
なお、本人の意思能力には全く問題ない前提です。

宜しくお願い致します。

1 ご質問

>本来であれば「自署」すべきところ本人に手の障害があるような場合、
>自署と同一の法律的効果が及ぶ方法がありましたらご教示ください。
>例えば、契約書等に何らかの文言を表記して家族が代筆することでも
>有効になるのであれば、その文言をお教え頂けましたら幸いです。

2 回答
(1)「自署」が必須ではないこと

贈与契約にしても、遺産分割協議にしても、
当事者間の合意ですので、
法律上は、当事者間の合意があればよく、
書面に「自署」することは、契約の効力を
発生させるうえで、必須ではありません。
(ただ、ご認識のとおり、証拠を残すのは
紛争予防のためには重要です。)

(2)贈与契約書や遺産分割協議書に「自署」することの法的な意味

裁判で贈与契約書や遺産分割協議書を証拠として
使うためには、契約書が作成者(本人)の意思に
基づいて作成されたことを
証明しなければなりません(民事訴訟法228条1項)。

そして、契約書に、本人の署名または捺印があれば、
その署名・捺印をした人の意思で文書を
作成したことが推定されます(民事訴訟法228条4項)。

契約書に「自署」しておくというのは、
法律上このような効果があるという点で、
法的な意味を有しています。

ただ、「署名または捺印」なので、
契約書には絶対に署名がないといけないわけではなく、
捺印でも大丈夫です。

ですので、署名ではなく、
住所・氏名などは印字しておき(記名)、
本人の印鑑(実印)を押しておいて
もらえばよいかと思います。

(3)ビデオなどで証拠を残しておく

状況にもよりますが、本人の署名がなく、
また、高齢で字も書けない状態の方が贈与や遺産分割協議を
するということだと、後に他の相続人などから、
親族が無理やり本人に契約書を作成させたのだ、などと、
争いになることが想定されます。

そのような場合に備えて、
本人が贈与や遺産分割の内容を理解していること、
本人にその意思があること、贈与であれば贈与する理由などを
本人が話している様子や、実際に契約書に押印をする様子などを
ビデオで撮影しておき、

本人が真に契約書の内容に同意していること、
本人が印鑑を押したことを、
証拠として残しておいた方がよいでしょう。
(もし、本人が印鑑も押せない状態であれば、
本人の了承を得たうえで、押印行為を代行する様子を
残しておいた方がよいでしょう)

>例えば、契約書等に何らかの文言を表記して家族が代筆することでも
>有効になるのであれば、その文言をお教え頂けましたら幸いです。

ご想定のケースで問題になるのは、
そもそもその契約書を本人のご意思の介在しない
ところで、勝手に作成したという主張・反論かと
思いますので、

契約書内の文言では、ヘッジできる
ものではないでしょう。

よろしくお願い申し上げます。