被保険者父
受取人母(父より以前死亡で受取人の変更をしていない場合)
の朝日生命の生命保険で、父が亡くなりました。
受取人は母で変更していない状態でした。
相続人は5人です。
うち1人が自己破産の手続き中で相続放棄申述受理証明書は発行済です。
遺言書(ほとんどの財産は長男に相続させるという内容)はありますが、
もめていないため遺産分割協議でいこうと思っている案件です。
朝日生命は最高裁の均分取得を提示してきて、
相続放棄している人が死亡保険金の受取に自署、押印ができない人(弁護士さんに言われてい
るみたいです)がいて、現状書類に自署、押印している4名分については
全体の死亡保険金の4/5は支払いますが、記載ができない1名分の1/5は払い出せないと言っています。
4/5は代表の長男に振込みはするとは言っています。
本部に確認してもらうということで帰ってもらいました。
質問1
法律的に自己破産中に保険請求をした場合には、自己破産の免責に抵触するものでしょうか?
弁護士さんの言っていることは合っているのでしょうか?
死亡保険金としてみなし相続財産=受取人固有財産をもらった場合は債権者に分配という
ことになってしまうのでしょうか?
他の相続人が書類にサインして提出したらいいのではと言っている人がいます。
質問2
プルデンシャルジブラルタ生命、明治安田生命は代表の長男のみ記載して死亡保険金を受け取った
と言っていますが、朝日生命の人の対応は合っているのでしょうか?
保険請求にサインしない人の分は他の相続人が受取ることはできないものなのでしょうか?
ご質問ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問1
>質問1
>法律的に自己破産中に保険請求をした場合には、自己破産の免責に抵触するものでしょうか?
>弁護士さんの言っていることは合っているのでしょうか?
>死亡保険金としてみなし相続財産=受取人固有財産をもらった場合は債権者に分配という
>ことになってしまうのでしょうか?
>他の相続人が書類にサインして提出したらいいのではと言っている人がいます。
(1)保険金の受取人とその割合(前提)
今回のように、保険金の受取人が先に亡くなり、
受取人の変更がなされないうちに、
被保険者(兼契約者)も亡くなった場合には、
保険金は、その相続人が受け取ることになります(保険法46条)。
~~~~~~~~~~~~~~~
(保険金受取人の死亡)
第46条 保険金受取人が保険事故の発生前に死亡したときは、その相続人の全員が保険金受取人となる。
~~~~~~~~~~~~~~~
そして、保険金を受け取れる割合については、
民法427条により、相続人間で
均等になるとされています。
(最高裁平成5年9月7日)
>朝日生命は最高裁の均分取得を提示してきて、
というのは、この最高裁判例のことかと思います。
したがって、今回のケースでは、
相続人5人には、5分の1ずつの割合で、
保険金請求権がある状態です。
(なお、保険約款にて、異なる定めがなされていれば、
それに従うことになりますので、一応ご確認は
いただいた方がよいかと思いますが、
保険会社が上記と同様の話をしてきているので、
異なる定めはないのではないかと思われます)
(2)各ご質問へ回答
>法律的に自己破産中に保険請求をした場合には、自己破産の免責に抵触するものでしょうか?
上記のとおり、5分の1の保険金請求権が
ある状態なので、破産をするのであれば、
保険金請求の権利を行使し、
これを回収して、債権者に分配することになります。
少なくとも、自己破産の免責に影響することは
ないと考えられます。
(むしろ、回収せず、そのまま破産してしまうと、
財産を隠しているというようなことになりかねません。)
>弁護士さんの言っていることは合っているのでしょうか?
>相続放棄している人が死亡保険金の受取に自署、押印ができない人(弁護士さんに言われて
>いるみたいです)
相続放棄をしたとしても、保険金請求権は、
受取人の固有の権利であると考えられますので、
これを受け取る権利は消滅しないと考えます。
なので、相続放棄をした人が、
保険金を受け取ることは可能でしょう。
>死亡保険金としてみなし相続財産=受取人固有財産をもらった場合は債権者に分配という
>ことになってしまうのでしょうか?
上記のとおりで、そのような扱いに
なると考えられます。
>他の相続人が書類にサインして提出したらいいのではと言っている人がいます。
5分の1の受け取りの権利は、
あくまで、相続人に5等分されていますので、
残りの1名分について、他の相続人には、
受け取る権利はありません。
なので、このような扱いは難しいですし、
他人が、その相続放棄をした人の
名前を記載するという意味ですと、
一応犯罪(私文書偽造、同行使)になります。
特に今回は、破産手続が絡んでいるという
ことですと、裁判所の関与があるので、
現実的にも問題が大きくなりやすいので、
注意した方が良いでしょう。
2 ご質問2
>質問2
>プルデンシャルジブラルタ生命、明治安田生命は代表の長男のみ記載して死亡保険金を受け取った
>と言っていますが、朝日生命の人の対応は合っているのでしょうか?
>保険請求にサインしない人の分は他の相続人が受取ることはできないものなのでしょうか?
「代表として受け取る」ということと、
「受け取った保険金を最終的に自分のものにできるか」というのは、
別の問題です。
他の保険会社の扱いは、
最終的な権利帰属は5人に均等(5分の1ずつ)だけど、
代表として長男に事実上渡します(または代理受領権限が
代表にあるとする約款がある)、
ということだと思われます。
(長男が最終的に全部もらえるわけではありません。)
5人に5分の1ずつ渡すのが原則的な扱いですが、
誰かが代表して受け取ることも、手続上できるというだけです。
このような扱いをするかどうかは、保険会社により異なりますし、
基本的には、保険会社が自由に決めてよいことです。
(保険約款などに、この点についての規定があれば別ですが、
ここまでの手続きは定めていないのではないかと思います)
ただ、他の保険会社が応じてくれていることからも、
交渉の余地はあると思います。
なお、仮に、代表して長男が全額を
受け取ることができたとして、上記のとおり、
最終的には、5分の1を相続放棄をした人(自己破産予定)に
返還しなければなりません。
(法律的には、代表して受け取った長男に対して、
相続放棄した人が5分の1の返還請求権を
有している状態)
相続放棄した人に返還して、
最終的には、破産手続きの中で、
債権者に分配されることになります。
よろしくお願い申し上げます。