資産承継プランイング(ニュー・エステイトプランニング)依頼書で契約して
財産額に応じて生前にプランニング料の支払いをしています。
そこには遺言執行報酬額の40%相当額を減額とは記載があります。
遺言執行者は三菱UFJ信託銀行㈱になっています。
相続が発生し、相続人から遺言執行報酬が高いので、何とかしたいという相談を受けました。
質問1
遺言信託は解除することはできるのでしょうか?
解除した場合には公正証書遺言書の正本は信託銀行が保管していますが、
返却を受けて家庭裁判所にて遺言執行者を選任してもらい遺言執行する
流れになるのでしょうか?
質問2
遺言執行の部分解除はできるのでしょうか?
たとえば、不動産は登記を司法書士に依頼するのみなので預貯金と株式は信託銀行に
執行してもらい、不動産のみは相続人が直接依頼することは可能なのでしょうか?
質問3
もし分かればですが、遺言信託の場合の相続税申告について、遺言執行者である
三菱UFJ信託が申告する税理士を指定する権限はあるのでしょうか?
それとも自由なのでしょうか?
質問4
今回は父が亡くなりましたが、母も同日に同じように契約して公正証書遺言書の作成をしていました。
母は生存中なので生存中の解約は、普通に問題なく可能でしょうか?
どれくらい解約金がかかるか目安はありますでしょうか。
http://www.trkm.co.jp/souzoku/11030501.htm
http://www.trkm.co.jp/souzoku/11030601.htm
http://www.fudosan-consulting.jp/trouble/detail_883.html
遺言執行者たる信託銀行が就任を承諾する前であれば、就任を辞退するように「仕向ける」ことはできたかもしれません
(信託銀行は相続人間に争いがあるとわかると辞退する傾向があるようです)。
ご質問ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①
>遺言信託は解除することはできるのでしょうか?
釈迦に説法かと思いますが、
ご質問の「遺言信託」は、法的な意味での「信託」
ではなく、いわば商品名にあたるもので、
法的には、遺言により、
遺言執行者に信託銀行が指定されるもの
をいっているにすぎないものをおっしゃているのか
と存じます。
そして、遺言執行者を遺言により定められた場合には、
相続人全員の合意によっても、解除することはできません。
(遺言を相続人が書き換える効果を持たせた場合には、
遺言の意味がなくなってしまうため)
ただし、家庭裁判所に解任を請求することはできます(民法1019条)。
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民法1019条 遺言執行者がその任務を怠ったとき
その他正当な事由があるときは、利害関係人は、
その解任を家庭裁判所に請求することができる。
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しかし、上記の通り、
「任務を怠ったときその他正当な事由があるとき」
といえなければなりませんので、
金額が高いという理由では認められることは
まずないかと思われます。
この辺りは、上記の通り、遺言者の意思を尊重
することが遺言の趣旨でもありますから、明確な
義務違反行為などが必要と考えられます。
なお、ご質問に記載のあるURLの相続人全員で、
遺言と異なる遺産分割をし、執行の必要
をなくすことで、報酬の支払いを免れるとする
弁護士の先生のご見解ですが、
少なくとも、
根拠としている
平成13年6月28日東京地裁判決など
は、民事上の効力としては、
遺言執行者の同意なき遺産分割は無効であるが、
遺言で財産が帰属した者を含む相続人同士での
新たな贈与ないし交換的に譲渡する旨の合意
があったと捉えるもので、
遺言の効力を否定するものではありません。
(登記は現状を反映しているので、戻す
必要はないと判断しているに過ぎない。)
ですので、
遺言執行者の報酬請求権を否定する
根拠になるものではない(論理の飛躍がある)
かなと思います。
もちろん、遺言書などの報酬金の定め方が、
タイムチャージなど実働に紐づく形式で
あれば、実働は生じていないので、
タイムチャージが発生しないという
根拠にはなると思います。
(それでも、より厳密に言うと、
相続人の一方的な事情で、義務の履行ができなかったのみ
であることから、通常かかるであろう相当額の支払いを
請求できるのではないかという議論は残ります。)
ですので、このような方法が
法的にとれるという前提で、
お客様にご提案するのは控えられた方が
良いかと個人的には思います。
実務上、このような方式で
行って、銀行が応じてくれれば、
それも1つの方法ですねという程度
かと思います。
(必要ないので、執行者にならないでくださいと伝えることと同程度の
意味合いかと思います。)
2 ご質問②
>遺言執行の部分解除はできるのでしょうか?
上記の通りですので、一部解除ということは
想定ができないかと思います。
3 ご質問③
>もし分かればですが、遺言信託の場合の相続税申告について、遺言執行者である
>三菱UFJ信託が申告する税理士を指定する権限はあるのでしょうか?
>それとも自由なのでしょうか?
相続税申告は、あくまでも「相続人」がするものですので、
被相続人が遺言などで税理士の先生などを指定することは
できません(遺言事項でないため)。
ですので、そこは相続人の自由です。
4 ご質問④
>今回は父が亡くなりましたが、
>母も同日に同じように契約して公正証書遺言書の作成をしていました。
>母は生存中なので生存中の解約は、普通に問題なく可能でしょうか?
>どれくらい解約金がかかるか目安はありますでしょうか。
まず、そもそも、遺言執行者は遺言で定めてあるものですので、
その後、母が定めを撤回するものや他の遺言執行者を指定する遺言を作成すれば、
その後の遺言が優先適用されますので、相続開始後に
信託銀行は将来遺言執行者にはなれません。
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(遺言の撤回)
民法第1022条 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
(前の遺言と後の遺言との抵触等)
民法第1023条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
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これを「解約」という意味にとらえるのであれば、
解約はできるということになります。
ただし、このような行為があった場合の
違約金などについては、母と信託銀行の
契約内容などにもよることになりますので、
まずは、契約書をご確認いただくしかないかと存じます。
しかし、相手が銀行ということもあり、裁判まで想定すれば、
そのような規定があっても、遺言撤回の自由を奪うものであり、
無効であるという主張が認められる可能性は十分にあるかと
思われますので、
その旨も伝えた上で交渉なされるのが良いかと思います。
なお、この部分は、税理士の先生が間に立ったりすると
非弁の指摘を受けること多い(銀行に不利益になる可能性が
ある交渉なので、特に)ので、本人様で行うようにしていただくことに
なります。
よろしくお願い申し上げます。