こちらで以下の解説がありましたが、ある会社の創業者がなくなり、弔慰金を支給するということになり、現在『「配偶者」がいるにも関わらず、「子」を(受給者として)指定』することを検討しています。
・配偶者もある程度の財産を保有しているため、配偶者がなくなった際の相続税を考慮し配偶者の財産を増やすことは避け、子供に支給したいという背景です。
・弔慰金規程はありません。
・こちらの会社からの死亡退職金の支給はありません。
・当該弔慰金は、業務上の死亡に基づくものではないため、普通給与額の半年分相当額を支給するため、相続税の対象外です。
>「配偶者」が受給者になっている
場合は、生活保障の側面が強くなり、「固有財産」
とされる可能性が高くなりますが、
例えば、「配偶者」がいるにも関わらず、「子」を指定
しているようなケースですと、生活保障という意味では
固有財産と認定される可能性が「配偶者」への指定よりも
低くなるでしょう。
(質問)
①弔慰金も、死亡退職金同様、民法上「相続財産」と扱われることもあるのでしょうか?(相続人全員(全員がその会社に関与しています)で弔慰金の受給者を決定するため、裁判になることはないのですが)
②仮に、弔慰金が民法上「相続税」と扱われた場合、当該弔慰金は相続税の課税対象になるという理解で正しいでしょうか(税務マターの話なので、差支えない範囲でご回答いただければ幸いです。)
よろしくお願いいたします。
>①弔慰金も、死亡退職金同様、民法上「相続財産」と扱われることもあるのでしょうか?
>(相続人全員(全員がその会社に関与しています)で弔慰金の受給者を決定するため、裁判
>になることはないのですが)
そうですね。理論上は死亡退職金と同様に
相続財産と扱われることもあります。
まさに、
メルマガでも紹介した
死亡退職金の半額を固有財産、
半額を相続財産と認定した
東京地裁平成26年5月22日判決も、
「退職慰労金として702万円、
弔慰金として78万円」の合計額の780万円を
「本件退職金等」として、
390万円ずつ固有財産と相続財産に振り分けて
いることからも、そのように考え
られるものと思われます。
ただし、
>相続人全員(全員がその会社に関与しています)で弔慰金の受給者を決定
というような事情があれば、会社から特定の子への固有財産として支給と
認定されやすいかとは思います。
2 質問②
>仮に、弔慰金が民法上「相続財産」と扱われた場合、
>当該弔慰金は相続税の課税対象になるという理解で正しいでしょうか
>(税務マターの話なので、差支えない範囲でご回答いただければ幸いです。)
おっしゃる通り、
民法上は上記の通りなので、理論的には
そのような考え方に整合的です。
しかし、
そもそも、相続税法基本通達3-20(ご指摘の
「普通給与額の半年分相当額として相続税対象外」の根拠)
の趣旨は、この程度の支給であれば、みなし相続財産である
「退職手当金等」に含めて相続税を課税しないという趣旨
にあるとすると、
行政側では確定できない
民法上の「相続財産」か「固有財産」かという論点から
遡って前者に当たるため、後者であれば課税されないものを
課税するというような理論構成による措置をとることは
実務上はあまり想定できないかと思います。
なお、あくまでも、今回のご質問の非課税の金額基準自体は
通達に過ぎません(相続税法をこのような画一的な基準で解釈し、
行政行為をしますよというもの)ので、
それを前提に「理論的」な議論を
すること自体はあまり意味がないかもしれません。
(通達がなければ、行政としても統一的な処理ができませんし、
実務上重要なものであることはもちろん大前提です。)
よろしくお願い申し上げます。
下記のご回答について、ご教示いただけますでしょうか。
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ただし、
>相続人全員(全員がその会社に関与しています)で弔慰金の受給者を決定
というような事情があれば、会社から特定の子への固有財産として支給と
認定されやすいかとは思います。
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「相続人全員(全員がその会社に関与しています)で弔慰金の受給者を決定」していると、どうして「特定の子への固有財産として支給と認定されやすい」のでしょうか?
先日のメルマガに以下の記載がありますが、上記の「相続人全員(全員がその会社に関与しています)で弔慰金の受給者を決定」と下記の「支給を受ける者の生活保障などために固有の権利として支出」・「給与の後払的性質を有するか」とは何か関係はありますでしょうか?
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具体的には、
支給を受ける者の生活保障などために固有の権利として支出される
ものなのか、
それとも、給与の後払的性質を有するか
(被相続人の功績に報いるためのものであり、
被相続人の勤続年数や功績等を考慮して算定されている
か)
により前者であれば「固有財産」
後者であれば「相続財産」というような方向性になっています。
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よろしくお願いいたします。
一般的な基準というのは、下記の引用の
通りです。
~~~~~~~~~引用~~~~~~~~~~~~~~~~~
一般的に最近の裁判例などを見ていると、
死亡退職金が相続財産に当たるか受給者の固有財産に
当たるかという点は、
「死亡退職金の支給の根拠や経緯、
支給基準の内容等の事情を総合考慮して判断する」
としているものが多いです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
裁判になる事例では、
先生もご指摘の通りですが、
>①弔慰金も、死亡退職金同様、民法上「相続財産」と扱われることもあるのでしょうか?
>(相続人全員(全員がその会社に関与しています)で弔慰金の受給者を決定するため、裁判
>になることはないのですが)
一部の相続人の議決権行使などにより、
その一部の相続人に支払われた事例などです。
それを前提にすると、
————————————————————–
具体的には、
支給を受ける者の生活保障などために固有の権利として支出される
ものなのか、
それとも、給与の後払的性質を有するか
(被相続人の功績に報いるためのものであり、
被相続人の勤続年数や功績等を考慮して算定されている
か)
により前者であれば「固有財産」
後者であれば「相続財産」というような方向性になっています。
——————————————————————-
というような方向性が導かれます(当然争いになる
事例の事実認定と評価の方向性)という趣旨です。
一方で、
>相続人全員(全員がその会社に関与しています)で弔慰金の受給者を決定
ということですと、一般的な基準である
「死亡退職金の支給の根拠や経緯、
支給基準の内容等の事情を総合考慮して判断する」
という部分で、
相続人全員関与にもかかわらず、あえて法定相続分などではなく、
ある特定の者への支給を決定している経緯(名称などは別として)
などから、当該特定の者の固有
財産として支給しているという方向性に
働く大きな事実だと思いますので、
そのように回答しました。
一般論は、あくまでも、
事実認定と評価の「総合考慮」です。
ですので、紛争予防の観点から、
遺産分割協議書にも「相続財産でないことの確認」
として入れることが可能であるならば、
より大きな証拠になりますね。
繰り返しになりますが、
争いなっている裁判例では、
上記のような方向性になっているというところです。
よろしくお願い申し上げます。