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クレジットカードのポイントを私的使用している者への対応と課税

表題の件について、法律上の問題点をご教示頂ければ幸いです。

【前提】
代表取締役(長男)と仕入担当取締役(次男)を中心とした
家族経営の同族会社(株主は父100%)です。

最近、仕入担当取締役が個人名義のクレジットカードを利用して
仕入を行い、経費精算を行っていることが発覚しました。

個人名義のクレジットカードで貯まったポイントは、
法人のために使われること無く、仕入担当取締役が私的使用しています。

【ご相談】
代表取締役としては、個人名義のクレジットカードの使用をやめさせ、
法人名義のクレジットカードで決済するように改めさせたいと考えています。

一方で、仕入担当取締役は何ら問題ないので現状維持したいと
主張しており議論は平行線です。

まず、このようなポイントの私的使用をやめさせるために、
法律上どのような問題点を指摘したら良いかご教示下さい。

また、仕入担当取締役が受けた利益は当該法人からの経済的利益と考え
給与課税(源泉徴収)とすべきか、クレジットカード会社から与えられた
所得(一時所得)と考えるべきか、法律上の観点からアドバイスをお願いします。

以上です。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

1 ご質問①
(1)ご質問

>代表取締役としては、個人名義のクレジットカードの使用をやめさせ、
>法人名義のクレジットカードで決済するように改めさせたいと考えています。

>一方で、仕入担当取締役は何ら問題ないので現状維持したいと
>主張しており議論は平行線です。

>まず、このようなポイントの私的使用をやめさせるために、
>法律上どのような問題点を指摘したら良いかご教示下さい。

(2)回答
ア ポイントの法的な帰属

通常、クレジットカードのポイントは、
クレジットカード会社とカードの名義人との間で、
決済をした場合に、名義人が使用できるものとして
与えられます。

したがって、クレジットカード会社との関係では、
民事上、ポイントが帰属するのは、名義人である
取締役個人であり、法人ではありません。
(カード規約に異なる定めがあればそれに従いますが、
おそらく、このような形になっていると思われます)

イ 法律上の問題として指摘しうる点

法人名義のクレジットカードで決済したとすれば、
法人にポイントがつき、これにより、
法人が利益を得ることができるものと思います。

これを前提とすると、現在のように
取締役が自己の個人カードで
決済を行い、本来法人が得るべきポイントを、
自己に帰属させることは、
取締役としての忠実義務違反(会社法355条)
に該当しうる行為であると考えます。

今後、ポイントの私的使用をやめさせるべく、
法律上の問題を指摘するとすれば、
このような立論があり得るところです。

ウ 忠実義務違反を確実にする方法

また、以下の決定をしておくことで、
取締役の個人カード利用が
忠実義務違反になるという点が
確実になりますので、
場合によっては、このような決定をして
おいていただければと思います。

(ア)取締役会非設置会社の場合

株主総会は、取締役の業務執行に関する
事項も含め、会社の一切の事項について
決議することができます(会社法295条1項)。

そして、株主総会で決定した事項については、
取締役はこれに従って、業務執行を行う
義務を負っています(会社法355条)。

したがって、株主総会で、会社の
経費の仕入れについて、個人名義カードではなく、
法人のカードで決済しなければならないということを
決めておけば、取締役はこれに従わざるを得ません。

仮にこれに反した場合には、
取締役は忠実義務に違反することになります。

>株主は父100%

とのことですので、父親が
これに賛成してくれれば、
決議は可能でしょう。

(イ)取締役会設置会社の場合

取締役会設置会社では、
取締役の上位の決定機関として
取締役会があり、取締役会は、
会社の業務執行の決定を行うことができます
(会社法362条1項1号)

そして、取締役会で決定された事項に
反する業務執行を取締役が行うことはできません。

ですので、取締役会で上記のとおり決定しておけば、
取締役にこれに従うよう指示することができます。

取締役がこれに反した場合には、
取締役の忠実義務・善管注意義務
違反の問題が生じることになります。

2 ご質問②
(1)ご質問

>また、仕入担当取締役が受けた利益は当該法人からの経済的利益と考え
>給与課税(源泉徴収)とすべきか、クレジットカード会社から与えられた
>所得(一時所得)と考えるべきか、法律上の観点からアドバイスをお願いします。

(2)回答

上記のとおり、民事上は、
ポイントは、クレジットカード規約に基づき、
カード会社から取締役個人に与えられているものです。

会社に帰属しているわけではありません。
したがって、法律上の観点からは、

>クレジットカード会社から与えられた所得
と考えるのが素直かと思われます。

ただし、
https://zeirishi-law.com/kashidaole/songaibaishou-jyugyouin
「1.4」をご参照いただきたいのですが、
取引先からのリベートが法人に帰属するか
個人に帰属するかという論点があり、
最後は事実認定の問題となります。

今回は、通常のリベートと異なり、
権利関係が、クレジットカード会社と名義人間であることが
明確ですので、法人に直接帰属すると考えるのは難しいかと
は思います。

その他、

例えば、会社と仕入担当取締役の間に、
ポイント相当額の返還の約束や本来ならば法人に帰属
するはずであったポイント相当額の
損害賠償請求の要件を満たす場合に、
それを放棄したという構成であれば、放棄を理由に給与
課税という構成も理論上はあり得るかとは思います。
(今回のケースでそういう認定は難しいかなと思いますが。)

よろしくお願い申し上げます。