平成26年5月に解散した合同会社Aは、
音楽制作事業を営んでおり、
所属アーティストの原盤権(共同原盤)を有しておりました。
解散にあたり、その原盤印税の入金先につき、
Aの代表社員であったYが経営する有限会社Jの銀行口座に変更して、
現在に至っております。
Jに入金され続けている印税については、
会計上、「預り金」として処理しています。
解散に際し、当時の社員4名(Yを含めて全員が代表社員で均等持分)の間では、
この印税の処理(分配等)については何の取り決めもせず、現在に至りました。
2018年7月末現在、Jの預り金残高は約600万円となっており、
この処理について相談を受けております。
Yとしては、解散当時の状況からして、預り金がこのような多額になることは、
他の社員3名も含めて、誰も予期しておりませんでしたので、
できれば、このまま分配等をせずに、Jだけで収益計上する等の処理をしたい意向です。
このような処理をすることは、法律的に可能でしょうか?
宜しくお願い致します。
>Yとしては、解散当時の状況からして、預り金がこのような多額になることは、
>他の社員3名も含めて、誰も予期しておりませんでしたので、
>できれば、このまま分配等をせずに、Jだけで収益計上する等の処理をしたい意向です。
>このような処理をすることは、法律的に可能でしょうか?
2 回答
>平成26年5月に解散した
ということで、清算手続きは未了と
いうことでよろしかったでしょうか。
以下、
(1)は、清算手続きが未了の場合
(2)は、清算手続きにより結了登記がされている場合
に分けて回答します。
(1)清算手続き未了の場合
ア 清算中の合同会社
合同会社は、解散すると、
清算手続きに移行します。
解散により、いきなり会社が消滅するわけではなく、
清算手続が終了するまで、清算中の会社として
存続します。
>所属アーティストの原盤権(共同原盤)を有しておりました。
とありますが、
原盤権自体の権利と、
そのライセンスによる印税を受け取る権利(厳密には、
ライセンス契約上の地位)
の2つを有しているものと思います。
清算中の会社であっても、
このような権利は保有したままですので、
印税収入は、合同会社Aが受け取る
ことになりますし、それはAに帰属する
ものと考えられます。
なお、
>解散にあたり、その原盤印税の入金先につき、
>Aの代表社員であったYが経営する有限会社Jの銀行口座に変更して、
>現在に至っております。
とのことなので、
これをもって、Jに権利を譲渡した
という立論もあるかと思います。
ただ、Jにおいて収受した印税を、
「預り金」として処理されているとのことなので、
権利を譲渡してJに受け取る権利がある
という認識ではなかったのだと思いますし、
また、無償でこのような権利を
譲渡したということであれば、
Yの行為が清算人の忠実義務(会社法651条2項)違反となり、
合同会社から(他の社員が会社を代表して)、
責任追及される可能性もあります。
したがって、このような処理は
法的には難しいと考えられます。
イ 残余財産の分配について
収受した印税は、Aに帰属しており、
Jがこれを預かっているという状態です。
したがって、Aは、残余財産として、
社員に分配する手続きをとることになります。
その配分は、定款の定めがあればそれに従い、
なければ、各社員の出資額(4人で等分)に
応じて、社員に分配することになります。
(会社法666条)
ですので、
>できれば、このまま分配等をせずに、Jだけで収益計上する等の処理をしたい意向です。
との処理は法的には難しいと考えられます。
(2)清算手続きにより結了登記がされている場合
仮に、清算終了して、清算決了登記が
すでになされているとしても、
残余財産が残っている状態であれば、
法的には、合同会社の法人格は消滅しません。
清算決了登記後に、残余財産が発見された場合、
通常であれば、清算決了登記を抹消して、
清算未了の状態に戻した上で、
残余財産の分配を行うのが、正式なルートです。
ただ、社員への残余財産の分配を行うのみで、
利害関係者が社員しかいないということであれば、
上記のように正式な手続きをとらなくとも、
総社員の同意さえ得ておけば、
その効力が問題視されることは
事実上ないと思います。
よろしくお願い申し上げます。