損害賠償の制限について、下記の文言に修正して欲しいとの要望を頂きました。
特に文中の「乙の責めに~を除き」の部分が引っ掛かります。
何でもかんでも賠償請求できるような印象を受けるのですが
いかがでしょうか。
さらに、関節及び二次的損失・損害を含むの文言の具体的な
リスクの内容が良くわかりません。
どのような場合を指すのでしょうか。
また、損害賠償請求が無制限にならないような
契約文言等あればお教えください。
記
本書面による契約に記載された甲からの委嘱業務に関連もしくは起因する損失・損害
(間接及び二次的損失・損害を含む)に対する乙の責任の総額は、乙の責めに帰する
損失・損害(間接及び二次的損失・損害を含む)を除き、甲からの委嘱業務に関連も
しくは起因する損失・損害(間接及び二次的損失・損害を含む)の原因となった甲か
らの委嘱業務を乙が遂行した年度における第3条に記載する乙が甲より現実に受領し
た報酬総額に限定するものとする。
よろしくお願い致します。
(1)ご質問
>特に文中の「乙の責めに~を除き」の部分が引っ掛かります。
>何でもかんでも賠償請求できるような印象を受けるのですが
>いかがでしょうか。
(2)回答
法律上、損害賠償責任を負うのは、
故意または過失(不注意な落ち度)が、
ある場合のみです。
こちらに落ち度がない場合には、
そもそも賠償請求はそもそもできません。
ご質問の条項は損害賠償額の上限を定める規定で、
損害額の上限を限定しているところに意味があります。
(なお、この条項自体の有効性について、
疑義がないわけではありませんが、
その辺りは、弊社からメーリングリスト会員様向けに
特典として、お渡ししている「税務顧問契約書の雛形の
説明書」をご覧ください。)
ただ、先生がご懸念されている通り、
「乙の責めに~を除き」という文言を入れることにより、
「乙の責めに帰する」場合には、
上限額の限定の効果がない(適用が排除される)
という内容になってしまいます。
「乙の責めに帰する」というのは、
故意・過失がある場合とほとんど同じ
意味なので、
【損害賠償責任を負う=上限の限定規定が働かない】
ということになり、
ご質問の条項は、無意味なものに
なるかと思います。
したがって、できれば「乙の責めに~を除き」と
いう文言は削除する方がよいでしょう。
もし、このままの条項ということであれば、
無用な混乱を招く(先生に過失などがない場合
でも、損害賠償できるのか?など)ので、
むしろこの規定自体削除された方が良いでしょう。
また、折衷案としては、
「乙に故意または重過失がある場合を除き」
というように、少し限定しておくということも
考えられます。
このようにしておけば、
「軽過失」(不注意による落ち度だが、著しいものではない)
にとどまる場合は、
損害賠償責任を負うとしても、
その損害額は、ご質問の条項のとおり、
限定されることになります。
このようにしておけば、
ご質問の条項が意味のあるものになります。
2 ご質問②
(1)ご質問
>さらに、関節及び二次的損失・損害を含むの文言の具体的な
>リスクの内容が良くわかりません。
>どのような場合を指すのでしょうか。
(2)回答
「間接損害」「二次的損失・損害」
というのは、法律上定義されている
用語ではなく、具体的に、どのようなことを
指すのか、明確ではありません。
このような文言は、
一般的には、損害賠償対象となる
損害の範囲を広くするために
用いられるものですが、
税賠でいうと、
加算税の納付などにより、
キャッシュがなくなり、事業投資が
できなくなったことで生じた損害や
紛争対応に必要になった弁護士費用などが
想定されるかと思います。
このような抽象的な規定で、
これらが全て賠償対象の損害に含まれる
という判断が裁判上認めれるわけではない
と思いますが、
抽象的な危険は広がってしまうため、
削除することが望ましいです。
賠償対象になる損害の範囲が不明確になってしまうため、
民法のデフォルトルールに従うことにしましょう、
ということで、
「(間接及び二次的損失・損害を含む)」という
文言を削除するよう交渉して
いただいた方がよいと存じます。
(このような規定がなければ、民法に
したがって、賠償対象になる「損害」にあたるか
どうかが、判断されることになります)
3 ご質問③
(1)ご質問
>また、損害賠償請求が無制限にならないような
>契約文言等あればお教えください。
(2)回答
記載例は、
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(PWをご失念された場合には、info@pct-law.jp
まで別途メールでお問い合わせください。)
上記の回答のとおり、
この条項(損害賠償額の上限)の適用範囲が広がる
よう、依頼者の方と交渉していただければと存じます。
よろしくお願い申し上げます。