相続 遺言 遺産分割 不動産 相続税 税理士法

遺言書の解釈と相続税申告について

遺言書の内容について教えてください。

公正証書遺言書にて

壱 建物の表示Aを遺言者の七男に相続させる

弐 遺言者は、次の者に前記「壱」に掲記の建物を除く、
  その余の不動産の全部を遺贈する。
  次男の子(養子になっていません、遺言書作成時には相続人ではなかったです)
  (土地は数筆あります)

その他一切の文章はありませんでした。

遺言執行者は次男が指定されていました。
遺言書作成時には次男は生存していましたが、遺言者が亡くなった時にはすでに次男は
亡くなっています。
遺言執行者の変更もされていないので不存在の状況になっています。
これについては、司法書士に遺言執行者を選任してもらい、権利証をそえて相続登記は
できると回答をいただいています。

質問1
上記の文章からすると不動産しか記載がないものと思いますが、
不動産以外の財産は遺産分割協議対象となるということで合っていますでしょうか?
弐からはすべての財産を遺贈するとは読み込むことは不可能でしょうか?

質問2
現時点でもめそうな気配があります。
仮に不動産以外の財産について、預金は数万円あります。
介護保険料過誤納付金、後期高齢者保険料還付金を次男の子は申請してすべてもらっている
事実はありますが、預金は別として次男の子が相続したとすることは無理がありますでしょうか?
仮にもめた場合は、やはり不動産以外の財産は未分割として取得者なしの相続税申告書を
作成し、1表と納付書をもめた人にも郵送するのが一般的なのでしょうか?
アドバイスをいただけると助かります。

1 質問1について

>上記の文章からすると不動産しか記載がないものと思いますが、
>不動産以外の財産は遺産分割協議対象となるということで合っていますでしょうか?

ご指摘の通りの解釈になり、不動産以外の
財産は、遺産分割の対象になるもの解釈されます。

>弐からはすべての財産を遺贈するとは読み込むことは不可能でしょうか?

こちらはあえて「不動産」とされていることから、
そのようには解釈できないと思います。

2 質問2について

>仮に不動産以外の財産について、預金は数万円あります。
>介護保険料過誤納付金、後期高齢者保険料還付金を次男の子は申請してすべてもらっている
>事実はありますが、預金は別として次男の子が相続したとすることは無理がありますでしょ
>うか?

そうですね。法的には、次男の子がこれら全額について
相続したとする根拠がないです。

>仮にもめた場合は、やはり不動産以外の財産は未分割として取得者なしの相続税申告書を
>作成し、1表と納付書をもめた人にも郵送するのが一般的なのでしょうか?

(1)介護保険料過誤納付金、後期高齢者保険料還付金について

介護保険料の過誤納付金、後期高齢者保険料還付金
の請求権は、単純な金銭債権(可分債権)であり、
相続開始と同時に、法定相続人に法定相続分により当然に
承継されますので、「共有財産」にはならないと考えられます。
◯最高裁昭和29年4月8日
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=56093

紛らわしいのですが、
「預金債権」が「共有財産」になり遺産分割の対象に
なるとされた(最高裁平成28年12月19日)のは、
金銭債権だけども、その原因の「預金契約上の地位」に着目して、
そのような解釈をされたもので、その射程は、他の金銭債権には
及ばないというのが、現在の考え方となっています。

◯最高裁平成28年12月19日
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86354

ですので、そもそも、これらの金銭債権は、
共有財産ではないため、各法定相続人に確定的に
帰属しており、

未分割申告を定めた相続税法55条の
「分割されていない財産」には該当しないため
未分割申告をするということにはなりません。

なお、さらに以下が法律と実務の間で、
混乱を招いているように思いますが、

可分債権も相続人全員の合意のもと、
遺産分割の対象に含めることが実務上
認められています。
(今回は、もめた場合にということですので、
関係はないかと思いますが。)

(2)その他、共有となる財産について

預金や物などがあれば、上記の通り、
共有財産となり、

遺産分割の対象になるため、

先生のご指摘の通り、この財産については、
未分割申告をすることになります。

>1表と納付書をもめた人にも郵送するのが一般的なのでしょうか?

状況によりますが、
紛争が顕在化している場合には、次男の子や次男の子と
争う関係にない方から、相続税申告の依頼を受けることに
なります(気持ち悪いですが、相続財産自体に争いが
ある場合などは、申告内容がそもそも違いますので)。

実務上は、逆ですが、
法律上は、原則、相続人各人による申告が予定されています。

ですので、先生として、申告をしたからといって、
依頼者ではない、もめた人に郵送する義務はないかと
思います(仮に勝手に送れば、守秘義務違反を問われる可能性も
あります。)

よろしくお願い申し上げます。