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一般社団法人の理事と社員の権限

一般社団法人の理事と社員の権限について教えて下さい。

サイトなどを見ると、社員の権限は理事よりも大きく、非理事会設置一般社団法人の場合は、最高万能の決議機関として、一般法人法に定めた事項及び一般社団法人の組織、運営、管理その他一般社団法人に関する一切の事項について決議することができるとあります。

http://syadan.office-saito.jp/kengen/

定款などで理事の業務につき、重要な財産の処分などについては社員総会の決議を必要とする、といった形で理事の業務を大幅に制限することは可能でしょうか。

可能であればですが、表見理事のような形で社員が知らぬ間に一般社団法人の財産を処分されるような場合はあると思いますが、それ以外のリスクはないような気もしますが、リスクはありますでしょうか。

よろしくお願いいたします。

1ご質問①
(1)ご質問

>定款などで理事の業務につき、重要な財産の処分などについては
>社員総会の決議を必要とする、といった形で理事の業務を大幅に
>制限することは可能でしょうか。

(2)回答

先生ご指摘のとおり、
非理事会設置一般社団法人の場合、
社員総会は、
「一般社団法人の組織、運営、管理
その他一般社団法人に関する一切の事項」
について決議することができると
されており(一般社団法人法35条1項)、
その権限が広く認められています。
(もちろん、法律により、
社員総会の専権事項とされている事項
以外の事項については、理事が
決定することもできます。)

問題は、定款で、
>重要な財産の処分などについては社員総会の決議を必要とする

というような理事の業務執行権限を
制限するような定めを
設けることが可能かどうか、
という点です。

この点について、
一般社団法人法76条1項は、
非理事会設置一般社団法人では、
理事の業務執行権限は、
定款で制限できることを、
前提とした規定となっています。

~~~~~~~~~~~~~~~
(業務の執行)
第76条1項
理事は、定款に別段の定めがある場合を除き、一般社団法人(理事会設置一般社団法人を除く。以下この条において同じ。)の業務を執行する。
~~~~~~~~~~~~~~~

したがって、非理事会設置
法人については、広く、
理事の業務執行権限に制限を
かけるような定款の規定も
有効となると考えられます。

2 ご質問②
(1)ご質問

>可能であればですが、表見理事のような形で社員が知らぬ間
>に一般社団法人の財産を処分されるような場合はあると思い
>ますが、それ以外のリスクはないような気もしますが、リス
>クはありますでしょうか。

(2)回答

たとえば、定款で、社員総会の決議がなければ
重要な財産の処分を行うことができない、
というような制限をかけていたとしても、

先生ご指摘のとおり、
表見法理の適用があります。

具体的には、一般社団法人法77条5項で、
定款により、理事の代表権に制限をかけたとしても、
善意(+無重過失)の相手方には、
無効であることを主張できず、
取引は有効とされてしまいます。

~~~~~~~~~~~~~~~
(一般社団法人の代表)
第77条
4 代表理事は、一般社団法人の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
5 前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
~~~~~~~~~~~~~~~

このように、定款で制限しても、
必ず重要な財産処分を防げると
いうわけではありませんが、

理事の権限をできるだけ制限しておきたい
というご要望であれば、
定款規定を設けておいた方が
よいといえるでしょう。

ただ、逆にいえば、
社員総会の権限が重くなりすぎて、
理事による迅速な業務執行を
阻害するおそれもあります。

社員総会は、開催の手続も面倒で、
たびたび開催するというのは
なかなか大変です。

これがリスクといえばリスクです。

社員総会の権限を定款により
広く認めるというのは、

社員総会以外に理事という代表機関を設け、
理事に一定の権限を与えて、
法人の経営・業務執行の迅速性を図る
という趣旨の正反対に位置する考え方です。

結局は、理事の権限濫用による弊害を防ぐということと、
経営・業務執行の迅速性の要請との
バランスの問題といえます。

よろしくお願い申し上げます。