相続の案件ですが
相続人4名の中に
「療育手帳」をお持ちの方が1名みえます。
判定は「B」となっていますので軽度と思われます。
この場合の遺産分割協議書ですが
この方の署名・押印は有効と考えて宜しいでしょうか?
>この場合の遺産分割協議書ですが
>この方の署名・押印は有効と考えて宜しいでしょうか?
2 回答
今回のご質問のケースでは、
遺産分割協議書の作成に際して、
「意思能力」の有無が問題となると
考えられます
こちらも最終には事実認定の問題と
なるため、明確にOK、NGで判断
できない事柄になる点はご了承ください。
(1)意思能力の一般的な基準
遺産分割協議も契約(意思表示)の一種ですので、
意思表示の一般理論として、
「意思能力」(自分の行為の結果を判断することができる能力
(契約の意味を理解できる能力))が必要となります。
未成年者、ご高齢の方、また、
今回のような知的障害をお持ちの方に
ついても問題になります。
契約を行う際に意思能力が備わっていないと
無効な意思表示となりますので、
遺産分割協議が無効となります。
意思能力の有無は、
知的な能力レベルだけで決まるものではなく、
・契約内容の複雑さ
→複雑であれば、否定の方向に働く
・金額の大きさ
→大きければ、否定の方向に働く
・契約により不利益を被ることになるか否か(契約者に不利な内容かどうか)
→不利な内容なあれば、慎重な判断が求められるという意味で、否定の方向に働く
など、様々な要素を考慮して判断されます。
(もちろん、個人の能力が重要となるのは
いうまでもありませんが。)
知的能力の一般的な年齢の目安でいえば、
7歳くらいから徐々に意思能力が備わりだす
と言われています。
(7歳になれば、一律にOKというものではなく、
この頃から、だんだんと意思能力が備わりだす
という感じです。)
(2)本件について
今回、問題となっている方は、
「療養手帳」判定「B」ということですが、
これは、知的障害の程度が、
「中度~軽度」(重度ではない)を
指すものです。
「重度」ではないという意味では、
軽いといえるかもしれませんが、
その障害の程度は、個々人により区々であり、
一概に、「重い」「軽い」と断定できる
ものではありません。
知的能力の点でいえば、
医師の診断書など、医学的な所見が
重要な判断要素になります。
また、実際に直接対面して話をした上、
契約内容への理解が可能かどうか、
その影響などを理解することができるか、
その理解の程度などを確認してみないと、
厳密な判断は難しい部分があります。
(話をしても、判断が難しいケースも多いですが)
さらに、上記に挙げたような、
意思能力の有無の判断に
あたっては、その方の能力だけではなく、
具体的な契約内容等に関する要素も、
重要になってきます。
ですので、いただいた事情のみでは、
意思能力の有無に関する判断は
難しいところです。
もし、今後遺産分割協議書を作成されるという
ことであれば、直接会って能力の程度を確認してみる
というのは行われた方がよいかと存じます。
(またしっかり判断できている状況を撮影する
などを保全しておく)
全く問題なさそうならそのまま作成されて
よいと思いますが、疑問が残るというレベルで
あれば、
依頼者の方に、無効になるリスクについては
ご説明された上で、作成するかどうかを
判断してもらった方がよいと存じます。
よろしくお願い申し上げます。