※修理事象が起きる
※注文書がある
※見積書がある
※工事完了の報告を受けている
※請求書がある
※支払いがある
一般的な流れは上記の例が多いと思います。
下記にいくつかのパターンで質問させていただきます。
前提で管理会社と大家が通謀して請求書を調整していないものとします。
大家は善意です。
質問1
大家個人が、注文書を交わしている、見積書をもらっている、
工事の完了の報告を受けているのすべてを満たさないときは債務確定とはならないでしょうか?
債務確定の基本的な考え方を教えてください。
個人的には請求書の発行兼工事完了の報告が重要かと思います。
下記の質問で請求書の発行遅延、工事完了の報告をしていない場合はどうなりますでしょうか?
見積書のみでは変更があるかもしれないため請求書でないと債務確定はしないのでしょうか?
大家は工事完了の報告を受けていなくても債務確定は修理会社の工事完了日なのでしょうか?
質問2
個人大家が賃貸不動産の修理について修理会社に注文書をかわして修理を依頼(修理を認識)したけど、
修理会社がずさんで、修理の報告と請求を修理が完了した翌年にしたため、大家は翌年に気付いた場合は、
翌年の必要経費でしょうか?大家は善意であるときは、完了報告と請求を受けていないので
個人的には翌年の必要経費でいいと考えますが合っていますでしょうか?
質問3
個人大家が賃貸不動産を管理会社に管理を依頼しています、
その依頼を受けた管理会社は修理も請け負っています。
入居者からのクレーム対応で大家に電話報告した程度で修理をしたものについて、
管理会社の担当者がずさんで請求を忘れていて、翌年に修理の報告と請求をしたときは、
大家は翌年に初めて請求を受けているため翌年の必要経費でしょうか?
完了報告と金額の提示を受けていないので個人的には翌年の必要経費でいいと考えますが合っていますでしょうか?
質問4
個人大家が賃貸不動産を管理会社に管理を依頼しています、
その依頼を受けた管理会社は修理も請け負っています。
クレーム対応で大家に報告なしで管理会社が修理をしたものについて、
管理会社の担当者がずさんで報告も請求を忘れていて、翌年に修理の報告と請求をしたときは、
大家は翌年に初めて請求を受けているため翌年の必要経費でいいでしょうか?
大家は知りえる機会がなかったため翌年の必要経費になると個人的には考えますが合っていますでしょうか?
参考
債務確定とは、
例えば、建物の修繕費では、建物等の修繕を発注し、業者によって修繕が完了し、
かつ金額の見積りが客観的にできる状況にあれば必要経費に計上できます
第2号のカッコ書きにおいて、法人税法における損金計上の要件として、
債務の確定したものであることが必要である旨が規定されています(ただし、減価償却費は除きます)。
また、いかなるものを債務が確定したものとするのかの判定基準として、
法人税法基本通達2-2-12では以下の通り規定しています。
法第22条第3項第2号の償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務が確定しているものとは、
別に定めるものを除き、次に掲げる要件の全てに該当するものとする。
1.当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること。
2.当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
3.当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。
債務確定の考え方については、抽象論である故、
各学者や研究者によって、いろいろなことが
言われている部分です(明確な最高裁判例も
ないため)。
下記は、そちらの議論に触れていくと、
論文になってしまうため
実務上、最も一般的であると
考えられるであろう見解を前提に以下、
いただいた質問に回答したいと思います。
一般論→質問への回答の順になり、
長文になる上、
法的に「厳密に」ということですと、
下記の通り、
事案全体から見た総合的な事実認定の
問題になるため、
必ずしも条件分岐により整理できる問題
ではない点は、ご容赦くださいませ。
1 一般論
所得税法37条の括弧書により、
一般対応の費用については、
債務確定が必要とされています。
この要件については、
一般的に所得税法基本通達37ー2
https://www.nta.go.jp/law/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/shotoku/05/05.htm
により、<参考>にあげていただいた
法人税法基本通達と同趣旨に解されており、
①債務の成立
②具体的給付原因事実の発生
③金額の合理的算定可能性
のすべてが充足されることが必要とされています。
2 ご質問について
ご質問でいただいた事項については、
上記の問題についての事実認定の問題となります。
(1)質問1
>大家個人が、注文書を交わしている、見積書をもらっている、
>工事の完了の報告を受けているのすべてを満たさないときは債務確定とはならないでしょうか?
>個人的には請求書の発行兼工事完了の報告が重要かと思います。
>下記の質問で請求書の発行遅延、工事完了の報告をしていない場合はどうなりますでしょうか?
>見積書のみでは変更があるかもしれないため請求書でないと債務確定はしないのでしょうか?
>大家は工事完了の報告を受けていなくても債務確定は修理会社の工事完了日なのでしょうか?
法的に厳密にということですと
個別の請負契約内容も確認すべきかと
思われますが、一般的に工事などの
請負契約における代金請求支払債務の
②具体的給付原因事実の発生(請負人が請求可能となる時期)は、
工事完了日となるかと思います。
>下記の質問で請求書の発行遅延、工事完了の報告をしていない場合はどうなりますでしょう
>か?
この場合、工事の完成はあるので、
③金額の合理的算定可能性があるか
が問題となります。
あくまでも、「合理的」とされており、
絶対的に変動がない金額まで必要とされている
わけではないものと考えられます。
請求書、工事完了の報告は、あくまでも
②③を基礎付ける証拠という位置付けになります。
>見積書のみでは変更があるかもしれないため請求書でないと債務確定はしないのでしょうか?
こちらも、
③金額の合理的算定可能性の要件充足性として、
工事の内容などによって、
合理的(常識的)に考えて、
大きな変動がない場合には、請求書がなくとも
債務確定は認められると考えられるでしょう。
ただし、請求書があると証拠としては明確なため
実務上は請求書がある前提で処理するのが一般的
という意味合いです。
(2)質問2
>個人大家が賃貸不動産の修理について修理会社に注文書をかわして修理を依頼(修理を認識)したけど、
>修理会社がずさんで、修理の報告と請求を修理が完了した翌年にしたため、大家は翌年に気付いた場合は、
>翌年の必要経費でしょうか?大家は善意であるときは、完了報告と請求を受けていないので
>個人的には翌年の必要経費でいいと考えますが合っていますでしょうか?
厳密には、上記3要件が充足された時点ですので、
上述の通り、修理の完了日(もちろん、契約書に
工事の完了後に請求を妨げる記載がある場合は
個別考慮が必要)になるかと思います。
一方で、
③金額の合理的算定可能性
の「合理的」の考え方として、
完了報告や請求書がなければ、
金額がわからないと反論すれば、
国側としては、工事完了日や
その時点で算定可能であったことを
立証しなければなりませんし、
請求書の日付が翌年となっていれば、
あまり問題にされていないのでは
ないかと思料しています。
(3)質問3
>個人大家が賃貸不動産を管理会社に管理を依頼しています、
>その依頼を受けた管理会社は修理も請け負っています。
>入居者からのクレーム対応で大家に電話報告した程度で修理をしたものについて、
>管理会社の担当者がずさんで請求を忘れていて、翌年に修理の報告と請求をしたときは、
>大家は翌年に初めて請求を受けているため翌年の必要経費でしょうか?
>完了報告と金額の提示を受けていないので個人的には翌年の必要経費でいいと考えますが合
>っていますでしょうか?
そもそも、管理契約の中での
包括的な依頼しかない本件において、
個別の修理の請負契約が
成立しているかどうかという点に
疑問があるところです。
(金額の合意もない)
もちろん、管理契約の中に、修理の金額の
計算方法の記載があるとすれば、それに
従うことになり、見積書があった場合と
同様に考えることになるのでしょう。
または常にこのような形になって
いた場合には、金額などの裁量も
管理会社に与えている委任契約などが当事者の
合理的意思解釈として成立していると認定される
こともあります。
民事的には後で、請求書が来て支払いをすれば
何も問題はない(時期は問題にならない)
ため、実務的にはずさんになされることも
あるかと思います。
その場合は、翌年とせざるを得ないかとは
思いますが、厳密に何が正しい処理なのかという
と当事者の具体的認識や工事の内容などの個別事情による
判断ということになるでしょう。
(4)質問4
>個人大家が賃貸不動産を管理会社に管理を依頼しています、
>その依頼を受けた管理会社は修理も請け負っています。
>クレーム対応で大家に報告なしで管理会社が修理をしたものについて、
>管理会社の担当者がずさんで報告も請求を忘れていて、翌年に修理の報告と請求をしたときは、
>大家は翌年に初めて請求を受けているため翌年の必要経費でいいでしょうか?
>大家は知りえる機会がなかったため翌年の必要経費になると個人的には考えますが合っていますでしょうか?
こちらも(3)と同様の問題で
(報告すら受けていない点で、より請負契約自体
の成立がいつなのかが問題になりますが。)
または常にこのような形になって
いた場合には、金額などの裁量も
管理会社に与えている委任契約などが当事者の
合理的意思解釈として成立していると認定される
こともあります。
この場合も、翌年とせざるを得ないかとは
思いますが、厳密に何が正しい処理なのかという
と当事者の具体的認識や工事の内容などの個別事情による
判断ということになるでしょう。
よろしくお願い申し上げます。