不動産 民法 借地借家法

定期借地契約の該当性

定期借地権と考えて良いか否か・・・についての質問です。

「土地賃貸借契約書」をお預かりしてきたのですが
「定期借地権」と言う表現は
契約書上のどこにも出て来ません。
また、登記簿上にも出てきておりません。

しかし第2条には
「本契約における賃貸借期間は2005年6月1日より2015年6月1日までの10年間とする」
とあります。

また第5条は下記のようになっています(甲は貸主、乙は借主です)。

1.「乙は本契約が満了したときは、直ちに自己の費用を以て更地に復し、
 本件土地を甲に明け渡さなければならないものとする」

2.「乙は本契約の満了時には借地権、居住権、地上権等いかなる権利も主張しないものとし、
 契約満了に伴う明け渡しに際し、移転費及び立退料、営業保証料等、その他本件土地に存在する
 全てのものについて、買い取り等、理由の如何を問わず一切の金員を請求しないものとする」

これは定期借地権契約と考えて宜しいでしょうか?

お教え戴ければ幸いです。

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追伸です。

土地賃貸借契約ですが、公正証書にはなっておりません。

1 ご質問と回答の結論

>これは定期借地権契約と考えて宜しいでしょうか?

いただいた契約は定期借地権の要件を満たして
いないため、定期借地権とはならず、
普通借地契約と評価されるものと考えられます。

なお、第5条の規定は、無効となるものと考えられます。

2 回答の理由

借地借家法における「定期借地契約」には、
①普通定期借地契約
②事業用定期借地契約
の2種類があります。

今回の借地契約は、
このどちらかの趣旨で行われたものと
考えられますので、
2つについて、要件該当性を検討します。

①については、借地借家法22条に規定があります。

②については、現行の法令では、
借地借家法23条に規定がありますが、
ご質問の定期借地契約は、
2005年(平成17年)に締結されており、
平成20年改正前の借地借家法(以下「旧法」といいます)では、
事業用定期借地契約は、
借地借家法24条に定めがありました。

今回の契約の成立に関しては、
旧法が適用されることになりますので、
これを前提に回答します。

なお、基本的な要件は、変わっておらず、
大きな違いは、契約期間を10年以上20年以下に
しなければならないとされている部分です。
(現行法令では、10年以上50年未満)

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旧借地借家法(平成20年改正前条文)
(事業用借地権)
第24条
1 第三条から第八条まで、第十三条及び第十八条の規定は、専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を十年以上二十年以下として借地権を設定する場合には、適用しない。
2 前項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。
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(1)①普通定期借地契約

大まかにいえば、
普通借地契約では行うことができない
・契約の更新がない
・建物買取請求ができない
などの特約を定めることができる契約です。

普通定期借地契約であることの要件の1つに、
契約期間が50年以上であることが
必要とされています(借地借家法22条。
なお、旧法の条文も変更ありません)。

今回の借地契約における契約期間は、

>「本契約における賃貸借期間は2005年6月1日より2015年6月1日までの10年間とする」

ということなので、
契約期間の要件を満たしません。

したがって、
①普通定期借地契約とはならないと
考えられます。

(2)②事業用定期借地契約

上記のとおり、旧法24条の
該当性を検討します。

②事業用定期借地契約は、
土地の使用目的を、
事業用の建物を建築することに絞ることで、
定期借地契約の中でも、
①とは異なり、10年~20年の契約期間で、
定期借地契約を結ぶことができるものです。
(現行法令では、10年~50年未満)

ただ、こちらについては、
①とは異なり公正証書で契約する
ことが要件となっています(旧法24条2項)。

今回の契約では、

>土地賃貸借契約ですが、公正証書にはなっておりません。

とのことなので、要件を満たさず、
②事業用定期借地契約とは
解されないと考えられます。
(契約書の契約期間からすれば、
当事者は、②を意図したものだったのかな、
と思われます。)

(3)何契約なのか?

①普通定期借地契約において、
契約期間の要件は、
普通定期借地契約であることの前提条件であり、
これを欠いた場合には、定期借地ではなく、
普通借地契約(通常の借地契約)となると
考えられています。

また、②事業用定期借地契約において、
公正証書で締結しないといけない
という要件は、契約の効力発生要件であり、
これを欠いた場合には、
契約が無効になると解されています。

ただし、土地の賃貸借契約を締結し、
すでに土地の利用も開始・継続している場合には、
当事者間の意思として、通常の賃貸借契約
(普通借地契約)を締結したと
考えられる場合が多いです。

以上から、今回の契約は
・定期借地契約にはならない
・普通借地契約となる
と考えてよいかと存じます。

よろしくお願い申し上げます。