相続 会社法 相続税

原始定款紛失の場合の対処方法

相続税の申告で、特定同族会社事業用宅地等の特例適用の為の添付書類として
(原始)定款がありますが、相続人は保有していません、見当たりません。

平成元年設立の株式会社です。法務局に電話をし、定款を取得できますか、と問
合せたところ、保存期間超過につき保管していません、とのことです。

この場合、どのようにして添付資料とする原始定款を入手したらよいのでしょう
か。ご教示の程、宜しくお願い致します。

1 ご質問

>平成元年設立の株式会社です。法務局に電話をし、定款を取得できますか、と問
>合せたところ、保存期間超過につき保管していません、とのことです。
>この場合、どのようにして添付資料とする原始定款を入手したらよいのでしょう
>か。ご教示の程、宜しくお願い致します。

その他の法的な取得方法を
ご説明した後、

それができない場合の
実務上の対策について、以下回答いたします。

2 回答

(1)法的にできる他の方法

会社・法務局にも保存して
いないとのことなので、
あとは定款を保管してある
可能性があるとすれば、
定款の認証を受けた公証役場です。

認証を受けた公証役場(基本的には、
会社本店の所在地の最寄りの
公証役場だと思われますが、
違うところで認証を受けられている
場合もあるかと思います)に、
定款の保管の有無について
問い合わせをしていただければと
思います。

ただし公証役場での定款の
保管義務がある年数は
原則20年となっていますので、
(公証人法施行規則27条1項1号)、
すでに破棄されている可能性も
高いかと思われます。

~~~~~~~~~~~~~~~~
公証人法施行規則
第27条 公証人は、書類及び帳簿を、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に掲げる期間保存しなければならない。ただし、履行につき確定期限のある債務又は存続期間の定めのある権利義務に関する法律行為につき作成した証書の原本については、その期限の到来又はその期間の満了の翌年から十年を経過したときは、この限りでない。
一 証書の原本、証書原簿、公証人の保存する私署証書及び定款、認証簿(第三号に掲げるものを除く。)、信託表示簿 二十年
~~~~~~~~~~~~~~~~

ただ、運用として、
保管義務の期間を過ぎても
残しているということもなくはないので、
問い合わせをしてみる価値はあると思います。

(2)実務上の対策

もし、上の方法でも取得ができない場合の
実務上の対策となります。

会社の定款は、原始定款を除けば、
その後、変更などがあった場合、
正式にどこかに保存されるものではありません。

厳密に法的には、原始定款と定款変更がされた
株主総会議事録を見て判断していくことになります。

ただし、実務上で定款を確認をする際や提出する際、
そのようにすると確認処理の書類が膨大になりえますので、

原始定款から変更させた事項
を修正した「全体の定款」を紙ないしデータで保存しおき、
それの写しを提出するというケースが多いです。

それを前提にすると、

特例の添付要件としては、
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
特措法23条の2第8項4号ロ
法第69条の四第三項第三号に規定する法人の定款(相続の開始の時に効力を有するものに限る。)の写し
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

となっておりますので、
あくまでも、今から効力を発生させるものではなく、

以前の定款を記憶の限り再現したものを、

法的な行為でなく、事実的な行為として作成し
提出するという方法を私であればとるかと思います。

定款を紛失したから特例の適用が受けられない
というのもおかしな話ですし、定款の紛失
を理由に過去のものを再現して作成する行為
が何ら違法になる行為ではないからです。

ただし、あくまでも、法的にその時に成立した
ものではなく、過去からそうなっているものを
再現して作成した形にしてください。

そうしないと、
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(相続の開始の時に効力を有するものに限る。)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
の要件を満たしません。

そして、作成の際には、登記事項など
他の資料と矛盾がないようにご注意ください。

これは経験に基づくもので、法的な
話ではありませんが、

これまで私が訴訟資料などを含めて
見たことがある資料ですと、
原始定款でなく、修正後の定款が
提出されているものも
見たことがありますので、原始定款を
提出せずとも認められるのではないかと
思っています。

なお、民事上の対策として
株主が複数いるケースであれば、
申告後に株主総会で
新たな定款変更するということも
ありかと思います。

よろしくお願い申し上げます。