相続 遺言 株式

遺言書に同族株式を「相続させる」と書いた場合と「遺贈する」と書いた場合

遺言書に「子供A(長男、後継者)に同族株式を相続させる」と
書いた場合について教えてください。

〇ケース1

・株主構成:社長60%、長男A40%

・相続人は長男A、次男B、三男Cの3人(子供3人)

・平成3年4月19日最高裁判決があるので、
「相続させる」という表現で書いてあっても改めての遺産分割は不要

・3人の準共有となることによる議決権の問題は発生しない

・「相続させる」、「遺贈する」のどちらの表現でも問題ない

〇ケース2

・株主構成:社長60%、長男A10%、古参の役員(第三者)30%

・定款に会社法174条による「相続その他の一般承継により~」の定めあり

・「長男Aに相続させる」と書いてあっても遺産分割は必要ないが、
一般承継による会社買い取りのリスクがあるので、「遺贈する」と書くべき

この理解で合っていますでしょうか?

よろしくお願い致します。

>〇ケース1
>・株主構成:社長60%、長男A40%
>・相続人は長男A、次男B、三男Cの3人(子供3人)
>・「相続させる」、「遺贈する」のどちらの表現でも問題ない

株式の移転という点のみに着目すれば、
その通りです。

なお、
一般的な「相続させる」旨の遺言と
特定遺贈の区別は下記をご参照ください。
https://zeirishi-law.com/souzoku/igon/jikou/2

ただ、理論的には
特定遺贈=譲渡=特定承継

となるため、特定遺贈の対象が譲渡制限株式の場合には、
別途譲渡承認の手続が必要となります。

>〇ケース2
>・株主構成:社長60%、長男A10%、古参の役員(第三者)30%
>・定款に会社法174条による「相続その他の一般承継により~」の定めあり
>・「長男Aに相続させる」と書いてあっても遺産分割は必要ないが、
>一般承継による会社買い取りのリスクがあるので、「遺贈する」
>と書くべき

こちらについては、これまでの裁判例から
理論的に判断すると

・相続させる旨の遺言=相続=一般承継

・特定遺贈=譲渡=特定承継

になりますので、ご指摘の通り、
会社法174条は、一般承継を対象とするもの
ですので、特定遺贈については、
会社法174条の適用がないということになります。

ただ、174条の解釈として、
相続人に対する特定遺贈のケースで、
紛争になれば、裁判所はわりと柔軟な
解釈をする可能性は一応残りますね(実態としては
変わらないとの判断)。

上記の通り、特定遺贈の場合、
別途株式承認手続きが必要となる関係で、
異なる判断をする可能性自体は低いとは思いますが。

形式論のみで判断するかは、疑義がある
ところはありますが、理論的には先生のおっしゃる通りですので、

予防という観点からはそのような対策
となるかと思います。

なお、状況次第では、社長の
生前に、会社法174条の規定を
廃止してしまうというのも一考です。

技巧的な面は否めませんが、
会社法の立法担当者の見解と現状の裁判例では、
事後的(第三者死亡後)に会社法174条の
定款の創設も認めていますので、
近くに弁護士などがいる会社さまであれば、
第三者が亡くなったケースではこの方法もありえる
かとは思われます。
(その他、種類株式(取得条項付株式)の利用など
さまざま対策はあります。)

よろしくお願い申し上げます。

> 会社法の立法担当者の見解と現状の裁判例では、
> 事後的(第三者死亡後)に会社法174条の
> 定款の創設も認めていますので、

立法担当者の見解が記載されている資料、URLなどがあれば、
教えてください。

また、この判断がされた裁判例を教えてください。

よろしくお願いします。

1 追加質問①(立法担当者の見解の資料など)

>>会社法の立法担当者の見解と現状の裁判例では、
>>事後的(第三者死亡後)に会社法174条の
>>定款の創設も認めています

>立法担当者の見解が記載されている資料、URLなどがあれば、
>教えてください。

立法担当者が著者になっている
下記の書籍などがあります。

◯相澤哲、葉玉匡美、郡谷大輔「論点解説 新会社法(商事法務)」162頁

なお、書籍のデータ化による
送信は著作権法等に鑑み、
控えさせていただきます。

2 追加質問②(現状の裁判例)

>この判断がされた裁判例を教えてください。

◯東京地裁平成18年12月19日
◯東京高裁平成19年8月16日

になります。

こちらも、現状、
ネット上で公開されている
ものではありません。

私の場合は、以前
裁判所へ行き内容を確認しております。

また、この裁判例自体は、株式の設計などの分野で
会社法を専門とする弁護士の中では有名なもので、
一応の先例にはなるとされているものではあります。

なお、裁判所では、閲覧はできるのですが、
利害関係人以外の謄写(コピー)は認められて
おりませんので、データなどで
お渡しすることができません。ご了承ください。

よろしくお願い申し上げます。