ついてご教示ください。
自筆証書遺言に次のような記載があります。
「相続人甲はA社株式(上場株式)を100,000株相続する。
相続人乙は上記株式の時価に相当する金額の現預金を相続する。」
相続は平成30年3月×日に開始しました。
遺言書の検認手続きが終わり、これから分割を行なうわけですが、
A社株式は上場株式のため常に価額が変動し、現在では3月×日の
価額よりも上昇しております。
そして、日々、価額は変動します。
甲と乙は不仲の関係で両者で直接の話し合いをすることができない
状況となっております。
このような場合に乙が相続する「株式の時価相当額」の金額を算定
する場合、いつ時点の時価を基準として計算すべきでしょうか。
明確な解釈や根拠となる条文等がございましたら、
合わせてご教示頂けましたら幸いです。
どうぞ宜しくお願い致します。
(1)ご質問
> 自筆証書遺言に次のような記載があります。
> 「相続人甲はA社株式(上場株式)を100,000株相続する。
> 相続人乙は上記株式の時価に相当する金額の現預金を相続する。」
> このような場合に乙が相続する「株式の時価相当額」の金額を算定
> する場合、いつ時点の時価を基準として計算すべきでしょうか。
(2)回答の結論
時価の算定基準時は、
遺言者の死亡時(相続開始時)
になると考えられます。
2 回答の理由
> 上記株式の時価に相当する金額の現預金
は遺言に定められているものなので、
この「基準時がいつなのか」も、
遺言の解釈として、遺言者が基準時をいつにすることを
意図していたかという観点から考えるべきものに
なります。
今回の遺言は、その記載内容からして、
いわゆる「相続させる旨」の遺言であり、
判例上、遺言の効力発生(民法985条1項:遺言者の死亡)と
同時に、相続させるとされた特定の財産は、
直ちに特定の相続人のものとなると解される形式のものです。
判例の根拠は私の書いたこちらの記事参照
https://zeirishi-law.com/souzoku/igon/jikou/1#i-6
ですので、理論的には、
> 相続人乙は上記株式の時価に相当する金額の現預金を相続する。
により、この時価相当額の預金は、
遺言者の死亡時に、乙のものとすることが
意図されていたと推認できます。
(移転時より後に評価をすることに矛盾があるため)
したがって、遺言の解釈(遺言者の意思)として、
時価の算定基準時は、遺言者の死亡時になると考えられます。
なお、遺言の内容と異なる遺産分割協議も可能で
ですので、相続人全員の合意のもと、別の基準時を
採用することは可能ですが、
甲乙間が不仲で調整がつかないということであれば、
上記の遺言の解釈を前提として、手続きを進める
ことになると思います。
よろしくお願い申しげます。