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破産宣告したテナントに対して未収入金及び預り保証金がある場合の処理

以下のことについてお教えいただきたく思います。

(前提)
1.甲社の賃貸ビルに入居していたテナントA社が破産宣告した。
2.甲社は3月決算法人である。
3.A社は昨年の11月中に退去した。
3.A社が滞納した家賃(共益費を含む)については保証会社から入金された
 が、駐車料金及び電気料は保証の対象ではなく、これらの未収入金額の
 合計は約13万円である。
4.A社からの預かり保証金は、然るべき償却後で80万円である。
5.契約上、A社が滞納した場合にはその金額を甲社は保証金に充当でき、
 A社は遅滞なくその金額を補てんすることとされていた。
6.A社が破産した場合などには甲社は契約解除できるとされていた。
7.甲は、契約が終了した場合、A社の債務に保証金を充当した後の保証金
 残額を明渡し完了後3ヶ月以内にA社に返還するとされていた。
8.破産管財人側からは、何も連絡が来ていない状況ということである。
9.A社との契約時に不動産会社が仲介している。なお、この仲介会社から
 も何も指示がないということである。

(質問等)
1.この決算においては上記前提に掲げました未収入金と預り保証金は残った
 ままでありますが、決算書には未収入金を相殺した後の預り保証金残高を
 表示するか、そうではなく、上記の未収入金及び預り保証金の両方を表示
 するかということについてですが、法務上の観点からはどうすべきでしょ
 うか。
2.保証金の返金に関してですが、今回のように相手方が破産した場合には、
 破産管財人から何らかの連絡があり、その指示に従って返金するのでしょ
 うか。
 それとも、自主的に返金すべきでしょうか。もしその場合には、前記の
 不動産会社を通してでしょうか、あるいは直接、破産管財人にでしょうか。
 (もし、後者の場合には返金する口座などを教えていただく必要があると
 思いますが)
3.いずれにしても返金するときの金額は、未収入金額を相殺後の金額と
 相殺前の金額のどちらになるでしょうか。

以上のことに関してご教示いただきたく思います。
よろしくお願い致します。

各ご質問事項に対しての結論を示してから、
理由とさせていただきます。

1 回答の結論

(1)ご質問1
>1.この決算においては上記前提に掲げました未収入金と預り保証金は残った
>ままでありますが、決算書には未収入金を相殺した後の預り保証金残高を
>表示するか、そうではなく、上記の未収入金及び預り保証金の両方を表示
>するかということについてですが、法務上の観点からはどうすべきでしょ
>うか。

下記の通り、厳密には、
契約書の内容に依存する部分もありますが、

>決算書には未収入金を相殺した後の預り保証金残高を表示する

という形で良いと思います。

(2)ご質問2

>2.保証金の返金に関してですが、今回のように相手方が破産した場合には、
>破産管財人から何らかの連絡があり、その指示に従って返金するのでしょ
>うか。
>それとも、自主的に返金すべきでしょうか。もしその場合には、前記の
>不動産会社を通してでしょうか、あるいは直接、破産管財人にでしょうか。
>(もし、後者の場合には返金する口座などを教えていただく必要があると
>思いますが)

管財人から連絡があるはずなので、
わざわざこちらから連絡する必要はありません。

実際に返金する際は、管財人口座に行うことに
なります。

なお、早くスッキリしたいということであれば、
こちらから管財人に連絡して、口座を教えて
もらいましょう。

(3)ご質問3
>3.いずれにしても返金するときの金額は、未収入金額を相殺後の金額と
>相殺前の金額のどちらになるでしょうか。

下記の通り、管財人との軽い交渉が必要になる
かもしれませんが、

実務的にも「未収入金額を相殺後の金額」と
考えていただいて問題ないでしょう。

2 理由

(1)保証金で駐車料金と電気料金は担保されるか

まず、相殺できるかどうかについては、
駐車料金と電気料金が、保証金(敷金)により、
担保される範囲に入っているかどうかが
問題となります。

判例によれば、敷金は一般的に、
「賃貸借契約により賃貸人が賃借人に対して取得することのあるべき一切の債務」
を担保するものとされています。

敷金がどこまでの範囲の債務を担保しているかは、
契約書の個別の文言にもよるところなので、
まずは契約書をご確認いただければと存じますが、

賃貸借契約に付随する駐車場の代金、
テナントの電気料金もその範囲に含んでいると
されている契約書が多いかと思います。

その場合であれば、建物明渡しがあった
時点で、保証金から未収入金額の合計
約13万円を差し引く処理で問題ありません。

(2)契約書が明確でない場合

このような場合には、管財人から
保証金で保証される範囲には
入っていないといわれることも
あるかもしれません。

しかし、この点は結局のところ、
管財人がOKならばOKなので、

こちらとしては、
敷金でカバーされることを前提として、
駐車料金と電気料金を控除した金額の
返金を申し出ればよいでしょう。

上記の通り、通常、駐車場料金と電気
料金も含まれる趣旨であったとされる
可能性が高いことや

金額も13万円と比較的少額であることから、
管財人も、そこは争ってまで(払わないと
言われれば裁判をしなくてはならないため)
回収しようとはしないと思いますので、
その前提で動いてくれる可能性が極めて高い
かと思いますよ。

よろしくお願い申し上げます。