不動産 所得税

土地の持分割合と異なる比率で駐車場収入を受け取る場合の法的な取扱いについて

税務調査から関与した以下の案件に関連して、法的な考え方をご教示いただけれ
ば幸いです。

1.依頼者:甲及び乙(甲の母)

2.対象不動産

(1)土地:600平方メートル(居宅利用:1/2、貸駐車場利用:1/2)

(2)建物:甲のみが居住(甲と生計を別にする乙は、他の子(甲の姉)の近く
で居住)

3.対象不動産の持分(甲及び乙とも所有期間は10年超)

(1)土地の持分(甲:1/3、乙:2/3)

(2)建物の持分(甲:1/2、乙:1/2)

4.事実関係

(1)過去における貸駐車場収入はすべて乙の不動産所得として所得税の確定申
告を行っていた。

(2)平成29年1月に、甲及び乙は開発業者へ土地を3億円で譲渡し、以下の
通り、所得税確定申告を行った(建物の除却損は譲渡費用として必要経費に算
入)。

甲:居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除と居住用財産を譲渡し
た場合の軽減税率(所得金額6,000万円まで10%)を適用

乙:所有期間5年超の長期譲渡所得(15%)を適用

5.今回の税務調査における指摘事項

甲の持分のうち、貸駐車場として利用していた面積(600平方メートル×1/
3×1/2)は居住用財産に該当しないため、甲の受領代金1億円のうち、5,
000万円については居住用財産を譲渡した場合の軽減税率は適用できない

6.指摘事項に対する反論

土地の持分だけで判断すると、調査官の指摘はもっともだが、過去において乙が
貸駐車場収入のすべてを不動産所得として申告していた事実を踏まえると、甲の
土地持分(1/3)はすべて居住用財産に該当すると言えるのではないか?

7.質問事項

共有者は本来、土地の持分に応じた貸駐車場利用料を受け取る権利があるはずで
すが、過去において乙が貸駐車場収入のすべてを受領しています。

共有者である甲乙間の合意により、乙が貸駐車場収入のすべてを受領するという
行為は、法的にどのように説明されるのでしょうか?

甲から乙への贈与ではなく、甲乙間の合意により、甲は持分に相当する面積のす
べてを居住用建物の敷地として使用、乙は持分に相当する面積のすべてを貸駐車
場用地として使用するというような契約であると言えればいいのですが・・・

どうぞ宜しくお願いいたします。

1 ご質問

>共有者は本来、土地の持分に応じた貸駐車場利用料を受け取る権利があるはずで
>すが、過去において乙が貸駐車場収入のすべてを受領しています。
>共有者である甲乙間の合意により、乙が貸駐車場収入のすべてを受領するという
>行為は、法的にどのように説明されるのでしょうか?
>甲から乙への贈与ではなく、甲乙間の合意により、甲は持分に相当する面積のす
>べてを居住用建物の敷地として使用、乙は持分に相当する面積のすべてを貸駐車
>場用地として使用するというような契約であると言えればいいのですが・・・

2 回答

共有者である甲、乙は、
共有物のあくまでも「全体」に対して、
持分に応じて使用収益を
することができることになります(民法249条)。

具体的な利用方法は、原則として、
共有者間の合意で決定することになります。

法的に言えば、

本来、甲は駐車場の持分(1/3)割合で
乙に請求する債権(不当利得の返還請求権)があります。

この債権を放棄する対価として、
建物を乙は利用せず、甲が単独利用する
(つまり乙から甲への居住用建物の敷地の2/3×
1/2(乙が建物の持分として利用している部分)+建物の1/2の賃料相当額を請求できる
債権を放棄する)
という合意があったと評価することまでは
可能かと思います。

しかし、

今回、問題となっているのは、あくまでも
物権である所有権(今回は持分権)の移転
を捕捉する譲渡所得に関する特例の課税判断であること

持分権は、上述の通り、あくまでも
共有物「全体」に及ぶ権利(特定の一部に
及ぶものではない)こと

から、

税法的には、共有者の間の利用方法の
合意が何であったか(債権的な問題)
と今回の課税判断が
リンクするものではないと考えられます。

もちろん、
先生がご対応されているのは、
調査段階から(申告時点ではない)
ということですので、

共有者間の合意の法的性質
から調査官に対して、「反論する」
こと自体はありだと思います。

よろしくお願い申し上げます。