【前提】
・顧客のA氏が、義兄(妻の実兄)B氏に住宅購入資金として2,000万円貸出すことになった。
(B氏、及び同居予定のB氏両親(A氏の義父母)に懇願され、最後は折れたそうです)
・A氏は、無利息とする代わりにB氏購入予定の住宅に抵当権を付した「金銭消費貸借契約 兼 抵当権設定契約書」を締結することを考えている。
【ご質問】
A氏は上場企業に勤めており、法的・税務的に問題のある行為は避けたいと考えております。
当該契約及び貸付行為について、法的に留意すべき事項や契約に盛込むべき項目、よくあるトラブル事例等がもしありましたらご教示頂けますでしょうか?
私の方からは抵当権設定登記を確実に行うこと、また元本の返済は少額でもいいので定期的に受けて贈与と疑われないようにすることを伝える予定です。
漠然としたご質問で恐縮ですが、アドバイスございましたら何卒宜しくお願いいたします。
>A氏は上場企業に勤めており、法的・税務的に問題のある行為は避けたいと考えております。
>当該契約及び貸付行為について、法的に留意すべき事項や契約に盛込むべき項目、よくある
>トラブル事例等がもしありましたらご教示頂けますでしょうか?
>私の方からは抵当権設定登記を確実に行うこと、また元本の返済は少額でもいいので定期的
>に受けて贈与と疑われないようにすることを伝える予定です。
>漠然としたご質問で恐縮ですが、アドバイスございましたら何卒宜しくお願いいたします。
2 回答
(1)抵当権の設定について
最も重要なのは、ご指摘のとおり、
>抵当権設定登記を確実に行うこと
です。
不動産の抵当権は、確実な資産価値を
担保できる強い権利ですので、確実に設定して
おけば、とりっぱぐれは基本的にはありません。
したがって、抵当権を確実に設定する
ことが何より重要になります。
具体的には、金銭の貸付(交付)と同時に、
抵当権の設定登記が
できる状態を確保することです。
通常、不動産の売買で、銀行が住宅ローンの融資をする場合、
・所有権の移転登記
・移転後の抵当権の設定登記
を、司法書士が同時に行うのが一般的です。
決済日(金銭の貸付と不動産代金の支払いを同時に行う日)に、
上記の登記に必要な書類を、不動産の売主から司法書士が預り、
これらの登記を行うのです。
そうすれば、お金は貸したが、
抵当権設定登記ができなかった、
という事態を防ぐことができます。
詳細な手続や、決済、登記の手順などについては、
司法書士の先生の専門分野ですから、
1度ご相談にいかれた方がよいと存じます。
(何れにしても、登記の関係で
司法書士の先生にご依頼されると
思いますので。)
重要なことなので、
司法書士の先生に頼まず、
ご本人で行われるというのは、
避けられた方がよいでしょう。
(2)金銭消費貸借契約書について
ア 期限の利益喪失条項を入れる
期限の利益喪失条項とは、
決められた期限までの返済を怠った場合、
返済の猶予がなくなり、残りの債務全額についても、
すぐに返済しなければならなくなるという条項です。
このような条項を入れておかないと、
相手が、返済期限に返さなくなったにもかかわらず、
残額については、返済期限がまだだという理由で
請求できない、という事態が起こり得ます。
このような事態が生じないよう
金銭消費貸借契約には、必須の条項ですので、
必ず入れるようにしてください。
イ 公正証書で作成する
金銭消費貸借契約書を
公正証書で作成することは検討に値するかと思います。
金銭消費貸借契約書を、公正証書にして、
強制執行認諾文言(返済を怠った場合には、
強制執行されても、異議を述べない旨)を
つけておくことで、
裁判をしなくても、公正証書に基づき、
義兄の財産に強制執行することが可能になります。
非常に強力な効力があるので、
公正証書にしておくに越したことはないと思います。
また、公正証書にしておくことで、
しっかり返さないといけないという
意識づけになるという副次的な効果もありますので、
できれば公正証書にしておいた方がよいです。
もっとも、抵当権を設定できるということであれば、
他の財産への強制執行ということはあまり考えられないので、
通常の場合よりは、公正証書にしておく必要性は
高くはないでしょう。
公正証書にする手間や、相手の協力が得られるかなどの
事情を考慮の上、相談者ご本人に決めてもらえればよいと
いうレベルの問題かと思います。
ウ 連帯保証人をつける
抵当権以外の担保として、
連帯保証人をつけることもありうる選択肢かと存じます。
候補としては、義兄の妻、義父、義母あたりが
考えられます。
連帯保証人をつけることで、
義兄に、連帯保証人に迷惑はかけられないという
心理が働き、ちゃんと返済義務を履行してくれる
可能性が高まるという効果はあると思います。
ただ、抵当権をつけることで、
ある程度の価値の保証はできているとは思いますので、
関係性を悪化させてまで、どうしても
連帯保証を迫る必要性があるというわけではないと思います。
この辺りは、義兄の妻、義父、義母などとの関係性も考慮の上、
相談者ご本人に決めていただければよいでしょう。
よろしくお願い申し上げます。