被相続人の長男、長女が相続人で、現物財産である土地建物、現金預金等全
て被相続人と同居していた長女が取得し、代償分割として長男に現金で遺産総
額の1/3を代償金として支払うことにしています。
【質問】
① 家事審判規則109条は、「特別の事情があると認めるとき」に限り、現物分
割に代えて代償金の支払いの方法による遺産分割の方法を採ることができる
と規定されています。
相続財産のほとんどが現金預金であり、被相続人が亡くなってから既に預金
は解約されて長女の預金口座に移されています。この場合、不動産のように細
分化するのが難しい特別の事情があるわけではありませんが、全ての財産を
長女 が取得して、相続人の長男、長女の間で遺産分割に係る協議がまとまっ
ていれば、代償分割で長女が長男に代償金を支払うことは可能でしょうか。
② 遺産分割協議の件ですが、相続人である長男、長女が協議して遺産を分割
するのは当然のことですが、遺産分割協議書を作成した場合は、長男、長女
立会の場で被相続人の遺産総額を提示して署名押印していただかないといけ
ないでしょうか。長女に遺産分割協議書を渡して長男の署名押印をいただくの
はまずいでしょうか。
よろしくお願いいたします。
(1)ご質問
>① 家事審判規則109条は、「特別の事情があると認めるとき」に限り、現物分
> 割に代えて代償金の支払いの方法による遺産分割の方法を採ることができる
> と規定されています。
> 相続財産のほとんどが現金預金であり、被相続人が亡くなってから既に預金
> は解約されて長女の預金口座に移されています。この場合、不動産のように細
> 分化するのが難しい特別の事情があるわけではありませんが、全ての財産を
> 長女 が取得して、相続人の長男、長女の間で遺産分割に係る協議がまとまっ
> ていれば、代償分割で長女が長男に代償金を支払うことは可能でしょうか。
(2)回答
まず、家事審判規則は、現在では廃止され、
「家事事件手続法」に集約されています。
そして、家事事件手続法195条にも同様の規定が引き継がれています。
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(債務を負担させる方法による遺産の分割)
第195条 家庭裁判所は、遺産の分割の審判をする場合において、特別の事情があると認めるときは、遺産の分割の方法として、共同相続人の一人又は数人に他の共同相続人に対する債務を負担させて、現物の分割に代えることができる。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ただ、これは、
「遺産の分割の審判をする場合」となっているとおり、
裁判所が、「審判」(判決のようなもの)を出す際の
要件につき規定したものであり、
当事者間の協議で分割方法を定める際に、
この制限は受けません。
当事者間の協議により分割方法を定める場合には、
当事者間で合意できる限り分割方法に制限はなく、
自由に決めてもらえれば大丈夫です。
したがって、今回のケースで、
代償分割をすることも可能と考えます。
2 ご質問②
(1)ご質問
>② 遺産分割協議の件ですが、相続人である長男、長女が協議して遺産を分割
> するのは当然のことですが、遺産分割協議書を作成した場合は、長男、長女
> 立会の場で被相続人の遺産総額を提示して署名押印していただかないといけ
> ないでしょうか。長女に遺産分割協議書を渡して長男の署名押印をいただくの
> はまずいでしょうか。
(2)回答
遺産分割協議書の作成についても、
特に制限はありません。
両者がその内容に合意しているという証拠があればよく、
基本的には、当事者の署名・押印があれば、
それが担保されているといえるでしょう。
したがって、
>長女に遺産分割協議書を渡して長男の署名押印をいただく
という方法でよいと考えます。
よろしくお願い申し上げます。