法人のお客様で今期が10期目
前期までは他の税理士が関与
前期までの税理士が間違った税務処理を行っていた。
具体的には全額損金ではない保険料を全額損金として処理していた。
当然ですが移ってきてからはきちんと処理しています。
質問
このように前の税理士が間違った処理をしている場合
間違いに気づいた場合、修正申告を行う義務が当事務所にあるのか。
また、他の事務所から移ってきたお客様については過去の
税務処理については責任を負えない旨の確認書などを
もらっておいたほうがよいのでしょうか。
>処理をしている場合間違いに気づいた場合、
>修正申告を行う義務が当事務所にあるのか。
あくまでも税理士の先生の
善管注意義務の範囲が
どこまで及ぶのかという認定上の話に
なりますが、
これまでの裁判例の分析結果からすると
今回のようなケースで、
明らかな間違いを税理士の先生が認識している
場合、
契約上修正申告を行うことが依頼事項となって
ない限りは
①修正申告を行う義務自体はない。
ただし、
②善管注意義務の説明・助言義務の内容
として、
・これまでの税務処理の誤りの指摘
・今後の加算税等のリスク説明
・修正申告を行うかどうかの意思決定の機会を依頼者さまに提供する
というところまでは必要と認定される
可能性が高いです。
少々わかりにくいですが、
①追加の依頼なしで修正申告をする必要はないが、
②依頼するか否かの(別途報酬は発生)意思決定の
機会はリスクを説明した上、提供しなければならない
ということです。
(なお、②の理由で善管注意義務違反があった場合には、
前の税理士さんと現在の税理士さんの損害寄与度に
よって、賠償責任の負担割合が決まるということに
なるかと思いますので、前の税理士さんの方が
負担は重いとは思います。)
>また、他の事務所から移ってきたお客様については
>過去の税務処理については責任を負えない旨の
>確認書などをもらっておいたほうがよいのでしょうか。
一般論としては、まさにその通りかと思います。
ただし、その確認書があったとしても、
「容易に」発見できる「明らかな」ミスであった場合、
専門家責任の観点から裁判までいけば、
上記の②のような説明がない場合は、何かしらの義務違反が
認定されるおそれが残ります。
今回のケースでは、
②の説明をしたことに合わせて、
修正申告をしないという意思決定を
したことを記載した確認書などを作成して
おけば、万全です。
よろしくお願い申し上げます。