以下の相談がありました。
今後の対処方法の留意点などについて、ご指導いただけますでしょうか。
【前提】
顧問先で不動産賃貸をしている法人あり。
そのうちの店子に、弁護士法人あり。
(大阪本店、東京支店の形態)
先日、検察庁から大家さん(当方顧問先)に訪問があり、
この弁護士法人との賃貸契約書を見せてほしいと要望あり、
要望に従って、賃貸契約書を提示した。
ただし、検察庁が大家さんを訪問したことは
当該弁護士法人に通知しないように、と説明があった。
なお、賃貸契約書は、不動産業者を通じて手続きしており、
ごく一般的な内容になっている。
家賃などの滞納はない。
賃貸契約は約10か月程度前。
具体的な弁護士法人名を聞いて、インターネットで検索したら
東京支店には5名くらい弁護士が所属している様子。
HPを見る限り、特に変わった様子は見当たらない。
(交通事故、刑事事件、親切に対応します、みたいなHPです)
【質問】
検察庁が弁護士法人の家賃の賃貸契約を調べる?ということは
具体的にどのような事件が考えられますか。
また、大家さんの立場として、今後に注意すべき事項がありますか。
なお、今後のテナント入居のときに、不動産やさん経由の案件で
あまり事前に信用調査などをしてこなかったが、
今後は、入居者の信用調査を簡便なものでもしたほうがよいのでしょうか。
あるいは、退去を促すような行動は慎んで、
大家さんとしては様子をみるしかないのでしょうか。
よろしくお願いします。
>検察庁が弁護士法人の家賃の賃貸契約を調べる?ということは
>具体的にどのような事件が考えられますか。
この情報だけですと、
事件の内容の特定は難しいですが、
一般的に、検察は、警察に捜査の指揮命令をし、
直接捜査に動くのは、警察であることがほとんどです。
検察が直接捜査に動くということはそうそうあることではありません。
検察の特捜が絡んでいる事件や、
規模の大きい、あるいは複雑な事件など、
捜査機関として、特に力を入れるべき案件であること
が予想されます。
一般的には、企業の不公正な取引関係に絡む事件、
株式や債券など証券取引に絡む事件、、マネーロンダリング絡みなど
が考えられるでしょうか。
(あとは、弁護士法違反事件は特捜が動くことがあります。)
また、弁護士法人自体ではなく、その顧客の事件に絡んで、
裏付け捜査に動いているということも考えられなくはありません。
(このケースで、弁護士法人の賃貸借契約書を見るというのは、
あまり考えられないかとは思いますが)
いずれにしても、
警察ではなく、検察が動くべき規模・種類・複雑さの
重大な事件である可能性が高いです。
2 ご質問②
>また、大家さんの立場として、今後に注意すべき事項がありますか。
現状でいうと、
弁護士法人に伝えるメリットもないと思いますし、
証拠隠滅への加担などを疑われると面倒なので、
検察の言うように、検察が捜査に来たことを、
弁護士法人には伝えない方がよいでしょう。
3 ご質問③
>なお、今後のテナント入居のときに、不動産やさん経由の案件で
>あまり事前に信用調査などをしてこなかったが、
>今後は、入居者の信用調査を簡便なものでもしたほうがよいのでしょうか。
今後ということであれば、
できれば、信用調査は行っておく方がベターですが、
コストとの兼ね合いにもよるところです。
ある程度の規模(金額)の賃貸であれば、
賃料不払いなどの影響も大きいことから、
信用情報の調査をするコストをかけてもよい
のではないかと思います。
4 ご質問④
>あるいは、退去を促すような行動は慎んで、
>大家さんとしては様子をみるしかないのでしょうか。
契約書の内容にもよりますが、
現状で、賃貸借契約を強制的に解除する事由
はないと思います。
検察が捜査に動いているというだけでは、
弁護士法人が何らかの犯罪を行ったという
確証はないですし、可能性は低いですが、
弁護士法人自体ではなく、
顧客の犯罪の裏付け捜査ということもなく
はありません。
解除の事由もないにもかかわらず、
退去を求めるような行動に出ると、
相手が弁護士法人であることも考え
合わせると、無用な紛争に発展するだけ
だと思います。
ですので、現状で、変にこちらから
アクションを起こすのは得策ではなく、
基本的には、今後の進展も含めて様子を
見るという対応になるかと思います。
よろしくお願い申し上げます。