以下、長文になりますが、よろしくお願いします。
1.政治家からみて寄付を法人から受領する場合について
政治家の立場からみると、法人が国等の補助金を受領しているか、
あるいは当該法人が赤字であるかどうかは、決算書を見るまでわかりません。
(当該法人のみしか決算書内容は、厳密にいえば把握できません)
政治家側の注意点は寄付を募る際に
「補助金受領がないか、赤字法人ではないか」という注意をするのが
現実的な対処方法になりますでしょうか。
その他、有効は対処方法はありますでしょうか。
2.政治家個人に対する団体献金の禁止について
法人は、政党と政治資金団体以外の者(事例、政治家個人の資金管理団体や政治家個人)へ
寄付をするのも違法になるかと思いますが、
後援会の会費も寄付に相当すると考えてよいでしょうか。
あくまで、後援会に参加し、会費を払うとしたら、個人名義の範囲となりますでしょうか。
政治家の立場からみたら、後援会の会員名簿に
法人名が記載されていたら、会費をご返却して、法人名義では
後援会に入れないというご説明が現実的な対処でしょうか。
その他、有効な対処方法はありますでしょうか。
3.いわゆる政治パーティ券の購入について
「○○くんを励ます会」とか「○○さんの活動報告会」などというタイトルで
いわゆる政治資金パーティ券の購入依頼が入る法人があります。
具体に案内文書を確認し、「政治資金規正法第●条に該当します」という
フレーズがあれば、政治資金パーティと解釈し、支払をするケースがあります。
(金額上限などは対処します)
しかし、案内文書の中には「政治団体が主催」と思えない主催者があり、
有志の集まり(支援者と思われる)で、かつ政治資金規正法の該当条文の記載がない
案内もあります。
(ただし、当日は政治家が何か講話をする内容)
この場合の参加費は、著しく注意して、法人名義では支払しない、(個人はよい)
という対処が現実的でしょうか。
その他、有効な対処方法はありますでしょうか。
4.現役政治家が役員になっている公益法人について
当方顧問先には公益法人がいくつかあるのですが、
そのうちには現役の政治家が役員に入っている団体があります。
(役員報酬は無報酬)
この場合において、公益法人としては団体名義で通常の寄付を受領していますが、
何か現役の政治家が役員に入っている場合に、特別留意すべき事項はありますでしょうか。
当該、現役の政治家については、団体からみると
必要な経費精算はしますが(普通の交通費など社員と同様)
役員報酬の支給はないので、公益法人が受領した寄付がその政治家にお渡しすることは
理論上はないという想定です。
また、仮に役員報酬を低廉な金額でも設定する場合には、
(非常勤です)その他の非常勤役員と同様の金額であれば、問題にならないでしょうか。
金額は1日1万とか、そのような程度の範囲の想定です。
以下、参考にしたサイトになります。
総務省(政治資金規正法のあらまし)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000174716.pdf
総務省(なるほど!政治資金 政治資金の規正)
1 ご質問①
>政治家側の注意点は寄付を募る際に
>「補助金受領がないか、赤字法人ではないか」という注意をするのが
>現実的な対処方法になりますでしょうか。
>その他、有効は対処方法はありますでしょうか。
ご指摘のとおり、
・1年以内に補助金を受けている会社(22条の3第1項)
・3事業年度以上にわたり継続して欠損が生じている会社(22条の4第1項)
は「政治活動に関する寄附」をすることはできません。
そして、
これらの会社から寄附を受けることも禁止されています。
(22条の3第6項、22条の4第2項)
これらの規定に違反すると刑事罰があります。
補助金を受けている会社からの寄附:3年以下の懲役または50万円以下の罰金(26条の2第3号)
赤字会社からの寄附:50万円以下の罰金(26条の3第2号)
刑事罰ですから、「故意」があることも要件となっており、
違反する寄附であることを知らなければ、
罰則は課されません。
故意:犯罪事実の発生を認識しながらこれを認容すること
今回であれば、寄附を行えない会社であること、つまり、
・1年以内に補助金を受けている
・3事業年度以上にわたり継続して欠損が生じている
を「知っていた」かどうかがポイントとなります。
この「知っていた」というのは、
事実認定の問題ですので、
真実は別として、
これを疑わせるような事情がある事案では、
「知っていた」と認定される可能性はあります。
なので、このような「知っていた」ということを
疑われないような状況を作っておかなければなりません。
方法としては、ご指摘のとおり、
・1年以内に補助金を受けている会社
・3事業年度以上にわたり継続して欠損が生じている会社
は寄附ができないことをアナウンスして、
該当しないことを前提として、
寄附をしてもらうということは最低限すべきです。
また、その他にも、疑わしい事情があるのであれば、
・そもそも寄附を受けない
または、
・これらの会社に該当しないという証拠を提示してもらう
ということも検討すべきでしょう。
この場合、赤字かどうかを確認するのであれば、
決算書類を見せてもらうということになるでしょう。
一般的に、ここまでしているの?というと
微妙なところですが、
疑わしい事情があるのであれば、
行うべきかと思います。
2 ご質問②
>法人は、政党と政治資金団体以外の者(事例、政治家個人の資金管理団体や政治家個人)へ
>寄付をするのも違法になるかと思いますが、
>後援会の会費も寄付に相当すると考えてよいでしょうか。
ご指摘のとおり、
会社は、政党及び政治資金団体以外の者に対して、
政治活動に関する寄附をすることはできません(21条1項)。
そして、法人その他の団体が負担する党費又は会費は、
寄附とみなされます(第5条2項)ので、
法人が後援会(政治団体)の会費を支払うということはできません。
会社から寄附を受けること(要求すること)も禁止されており(21条3項)、
これには刑事罰もあります。
1年以上の懲役または50万円以下の罰金(26条2号)
>政治家の立場からみたら、後援会の会員名簿に
>法人名が記載されていたら、会費をご返却して、法人名義では
>後援会に入れないというご説明が現実的な対処でしょうか。
>その他、有効な対処方法はありますでしょうか。
会社からの寄附かどうかは、
その資金の出所が「会社としての負担」かどうか
がポイントになると考えられます。
名義が個人であっても、会社が負担しているということであれば、
寄附は違反となる可能性が高いです。
受け取る側からすれば、
ここでも、ご質問①と同様、「故意」の問題になります。
基本的には、個人名義での寄附であれば、
故意なし、とされる可能性が高いとは思われますが、
会社からの寄附であることが疑われる事情があれば、
もう一歩進んで、個人負担であることも確認はとられた方がよいと思います。
この点も程度問題を含む点には、ご注意ください。
3 ご質問③
>この場合の参加費は、著しく注意して、法人名義では支払しない、(個人はよい)
>という対処が現実的でしょうか。
>その他、有効な対処方法はありますでしょうか。
まず、前提として、政治団体以外の者が
政治資金パーティーを開催することは禁止されていません。
第8条の2で、政治資金パーティーは
政治団体が開催すべきとされていることから、
原則としては政治団体が開催することが望ましいですが、
政治団体以外の者が開催することを前提とした規定もある
ことから、政治団体以外が開催することは禁止されていないと
解釈されています。
ただし、政治資金パーティーの開催者は、
パーティー券等を購入する者に対して、
当該パーティーが政治資金パーティであることを
書面で告知する必要があります(22条の8第2項)。
この告知がなされていないということは、
政治資金パーティーではないということ
なのだと思われます。
なので、政治資金パーティーとして、
会社が行ってもよい(適法)ということにはなりません。
一方、政治資金パーティーではないとしても、
債務の履行としてされるものは「寄附」には当たりませんので(第4条3項)、
「催し物に対する参加費」であるという解釈をとれば、
法人がこれを行うことも、「寄附」にはあたらず、
違反にならないという可能性もあります。
ただ、このような解釈がとれるかどうかは、
事例判断になってしまうので、政治資金パーティーでないのであれば、
法人では支出しないというのが穏当な判断かと思います。
なお、個人で寄附することは問題ありませんので、
個人の名義で(個人負担で)行っていただくのは
よいと思います。
4 ご質問④
>また、仮に役員報酬を低廉な金額でも設定する場合には、
>(非常勤です)その他の非常勤役員と同様の金額であれば、問題にならないでしょうか。
>金額は1日1万とか、そのような程度の範囲の想定です。
上記のとおり、「寄附」には、
「債務の履行としてされるもの」は含まれません(4条3項)。
そして、一般的には、
講演料、顧問料、車代、旅費などは、
債務の履行としてなされるもので、
寄附には該当しないと解されています。
役員報酬も同様に考えて、債務の履行として、
妥当な範囲(業務に見合った対価)であれば、
「寄附」には当たらないと考えられます。
ただし、その金額が社会的に見て
相当な対価の支払いを超える場合には、
寄附とみなされる可能性もありますので
ご注意ください。
あくまで一般論にはなりますが、
1日1万円という金額は、
それなりの業務を行っているのであれば、
許容される範囲なのではないかと思われます。
よろしくお願い申し上げます。