会社法

出席取締役の印鑑がない議事録の効力について

表題の件、教えてください。

(前提条件)
・株式会社で、株主と代表取締役は別人(親族関係等もありません)
・役員はこの代表取締役1名のみで、経営と所有は分離しています
・株主総会にて、出席取締役であるその代表取締役の解任決議が行われました
・代表取締役はこれを不服として、議事録には出席役員の押印がされません

(質問事項)
一般的には株主総会の議事録に出席取締役の押印がされると思いますが、今回のような場合の押印のない議事録は、有効な書面となるのでしょうか

宜しくお願いします。

1 ご質問

>一般的には株主総会の議事録に出席取締役の押印がされると思いますが、今回のような場合
>の押印のない議事録は、有効な書面となるのでしょうか

2 回答

旧取締役(「A」とします)の解任と同時に、
新取締役(「B」とします)の選任決議もされていると思いますので、
その前提で回答します。

「有効な書面」の意味として、
①会社法上適法なものといえるか
②登記の添付書類として十分か
という2つの観点がありますので、
以下、分けて回答します。

(1)①会社法上適法なものといえるか

会社法上、議事録に押印しなければならない
というルールはなく、必要事項の記載さえあれば、
会社法上は、有効な書面といえます。

慣行として、議事録作成取締役の押印に加え、
その他の出席取締役の押印がなされることも多いですが、
会社法上求められているものではありません。

ですので、今回、旧代表取締役の押印がなくても、
会社法上は、有効です。

(2)②登記の添付書類として十分か

今回は、この議事録を添付書類として、
旧代表取締役の解任(+新代表取締役の就任)の登記申請を
することになると思いますが、
会社法上の書面の有効性とは別に、
その際の添付書類として十分か(登記を受け付けてもらえるか)、
という問題があります。

基本的に、議事録作成取締役の押印のない議事録は、
原本性の確認ができないため、
登記では受け付けてもらえません。
ですので、議事録作成取締役として、Bの押印が必要になります。

では、Aの押印が必要かというと、
結論としては、
旧代表取締役であるAが株主総会に
出席していた場合には、
Aの押印が必要ということになります。

「代表取締役の選任」をする株主総会では、
その議事録に、「議長及び出席した取締役」の
押印が必要とされているためです
(商業登記規則61条6項1号)。

ですが、登記は形式審査なので、
Aが出席していたのか、議長だったのかを、
議事録のみを見て判断します。
なので、(実際に出席していたとしても)
「出席取締役」の氏名としてAが表示されいない、
議長であったことも示されていないのであれば、
議事録のみから判断して、Aの押印が必要とはならないので、
Aの押印がないことは問われないと思います。

以上が法律上の扱いになりますが、
実務には、管轄法務局によって実際の運用は
異なるということがままあります。

ですので、実際にお客様自ら
登記申請をされる際には、
事前に登記申請を行う管轄の法務局に
ご確認されることをおすすめします。
(司法書士に依頼されるのであれば、
確認してもらえばよいですが)

よろしくお願い申し上げます。