(前提条件)
人格のない社団として預金口座を作成し、同団体の資金管理をして参りました。
預金口座の名義は屋号付き個人口座と同様の形式で
[団体名] [経理担当者名]
という口座を使用しております。
(質問事項1)
このたび、経理担当者を変更し口座名義も変更したいと考えているのですが、
経理担当者が協力的では無く、どのように対応すればよいか困っています。
銀行の届出印などは経理担当者個人が持っており、引き渡してくれません。
この口座は経理担当者の屋号付き個人口座として、経理担当者個人に帰属するのか、
あくまでも団体に帰属した上で経理担当者個人が代表して管理していると考えるのでしょうか。
後者であるべきと思っていますが、経理担当者の協力が得られない場合、
団体の代表者の権限で取り戻す方法など、対応についてお知恵を頂ければと思っております。
(質問事項2)
経理担当者が高齢であり、相続が発生する場合も想定しております。
この場合は、やはり相続人の協力が必須となるのでしょうか。
以上です。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
「法人格なき社団」の法律関係について、
一般的なご説明をした上で、
ご質問に回答いたします。
「法人格なき社団」とは、
会社のように法律上「法人格」は認められて
いないけど、
一定の基盤を有しているため、
法人格がある団体とある程度同じような
扱いをしてもよいのではないか
という観点から、判例上、認められている形式の団体です。
「法人格なき社団」と認められるためには、
一定の要件がありますが、
今回は、これを満たしているという前提で回答します。
「法人格なき社団」の大きなポイントとして、
その財産が誰に帰属するのか、という問題があります。
純粋な個人であれば、個人に帰属しますし、
法人(会社など)であれば、法人に帰属します。
法人格なき社団では、その財産は「総有」になるとされており、
ざっくりいうと、社団に所属している人たちが
みんなで持っているという意味です。
代表者が、社団を代表して契約する
こともできますし、
社団の財産がとられた場合には、
財産の返還請求を社団として行うこともできます。
1 ご質問1
>(質問事項1)
>このたび、経理担当者を変更し口座名義も変更したいと考えているのですが、
>経理担当者が協力的では無く、どのように対応すればよいか困っています。
>銀行の届出印などは経理担当者個人が持っており、引き渡してくれません。
>この口座は経理担当者の屋号付き個人口座として、経理担当者個人に帰属するのか、
>あくまでも団体に帰属した上で経理担当者個人が代表して管理していると考えるのでし
>ょうか。
>後者であるべきと思っていますが、経理担当者の協力が得られない場合、
>団体の代表者の権限で取り戻す方法など、対応についてお知恵を頂ければと思っており
>ます。
(1)口座名義の変更ができるか
上記でご説明した法律的な考え方からすれば、
社団の名義で、代表者が口座開設の契約を
行うことも可能と考えられます。
ただ、今回は、口座名義は「経理担当者」であり、
社団の代表者名義ではないため、
「社団として」の契約であったのかどうか、
疑問が残るところです。
銀行としては、
先生ご指摘のとおり、
経理担当者個人として、「屋号つき」の口座を開設した
という認識(その旨の契約)である可能性が高いです。
そうすると、そもそも、経理担当者以外の
口座名義に変更するということには応じない
と思われます。
また、仮に「社団として」の契約であったとしても、
その代表者の名義の変更に応じるかどうかは、
銀行により対応にばらつきが出る可能性があります。
いずれにしても、
まずは、経理担当者の協力が得られることを前提として、
その名義変更ができるかどうか、
その際の必要な手続等について、
その銀行にご確認された方がよいと存じます。
(2)口座名義の変更がそもそもできない、
または、経理担当者の協力が得られない場合の
現実的な対応方法
まずは、あらためて、
社団の代表者の名義にて、
口座を開設します。
その後、経理担当者に対して、
経理担当者名義の口座内の金銭を
この口座に、振り込むように請求します。
口座の名義が経理担当者個人であったか、
社団であったかどうかにかかわらず、
その金銭は、社団として集めたものにかわりはなく、
社団としての返還請求ができることに変わりは
ないと考えられます。
最悪、裁判を行うという事態も想定されるところですが、
経理担当者も、
自身がそのお金を保有する理由がない
ことは認識しているものと思われ、
返還の請求をすれば、
すんなり応じるのではないかと思われます。
(他の目的で使い込めば犯罪になりますし。)
この場合、自動引落等を支払方法の契約などが
ある場合には、変更をするという手続きが
手間ですが、やむを得ない措置かと思います。
2 ご質問2
>(質問事項2)
>経理担当者が高齢であり、相続が発生する場合も想定しております。
>この場合は、やはり相続人の協力が必須となるのでしょうか。
経理担当者が、金銭を返還しないまま亡くなったということであれば、
相続人がその返還債務を引き継ぐことになると考えられます。
この場合、相続人の協力を得るというよりは、
相続人に対し、返還の請求をするということになります。
よろしくお願い申し上げます。