贈与 株式 民法

未成年者の孫への自社株贈与

相続対策として親から子、孫への株式の贈与を検討しています。

孫は3歳です。

未成年者への贈与は、親権者である両親を代理人として贈与者と贈与契約書を交わすと理解しています。

ただ、受贈者が3歳の孫となると現実問題として贈与が成立するのか疑問ですがどうなのでしょうか。

また、仮に3歳の孫への贈与が成立しないとすると、未成年者への贈与は何歳以上で成立するというような年齢の基準はあるのでしょうか。

1 ご質問

>未成年者への贈与は、親権者である両親を代理人として贈与者と贈与契約書
>を交わすと理解しています。
>ただ、受贈者が3歳の孫となると現実問題として贈与が成立するのか疑問で
>すがどうなのでしょうか。
>また、仮に3歳の孫への贈与が成立しないとすると、未成年者への贈与は何
>歳以上で成立するというような年齢の基準はあるのでしょうか。

2 回答

未成年者への贈与をする場合、
方法は、
①未成年者の受諾の意思表示を、親権者が代理する方法
 →つまり、代理人(親権者)が法律行為をする場合
②未成年者自身が受諾の意思表示をする方法
 →つまり、未成年者本人が法律行為をする場合

があり、先生が想定されているのは、
①かと思います。
以下では、まず、①についてご説明した上、
その後、全体的なご理解をいただくため、
②についてもご説明します。

(1)①未成年者の受諾の意思表示を、親権者が代理する方法

先生が懸念されているのは、
3歳の孫に、いわゆる「意思能力」がないため、
契約自体ができるのかどうか、
という点かと思います。

「意思能力」とは、自分の行為の結果を判断することができる能力
(契約の意味を理解できる能力)をいいます。

もっとも、①の方法では、
法律行為を行うのは、孫ではなく、
親権者である両親です。

ですので、孫に「意思能力」がなくても、
契約の成立に問題はありません。
なので、この点はご心配いただかなくて大丈夫です。
(意思能力に関する詳細なご説明は、
下記「(2)ア」をご覧ください。)

なお、①の方法では、
父母が婚姻中の場合には、
原則として父母が共同して行うことになります(民法818条3項)。
この点は、先生のご理解のとおりです。

(2)②未成年者自身が受諾の意思表示をする方法

この方法の場合、以下が
問題となり得ます。

ア 未成年者であるという点についての「意思能力」の問題
イ 未成年者であるという点についての「行為能力」の問題

ア 未成年者であるという点についての「意思能力」の問題

契約(意思表示をする)の場合には、
意思表示の一般理論として、
「意思能力」(自分の行為の結果を判断することができる能力
(契約の意味を理解できる能力))が必要です。
これは未成年者に限られるものではなく、
よくご高齢の方についても問題になります。

意思能力が未成年者に備わっていないと
無効な意思表示となりますので、
贈与契約が無効となります。

未成年者の意思能力の有無は、
年齢で一律に決まるものではなく、
契約内容の複雑さや、金額の大きさ、
契約により未成年者に不利益があるか、
など、様々な要素を考慮して判断されます。
(もちろん、個人の能力によるところもあります。)

一般的な年齢の目安でいえば、
7歳くらいから徐々に意思能力が備わりだす
と言われています。

単純な贈与で、負担付ではなく、未成年者に不利益がない
ということであれば、
契約類型上は、意思能力が認められやすいので、
このぐらいの年齢を目安にしていただいても
よいかもしれません。
(ただ、このようなギリギリのラインを
攻めなくても、方法①によっていただければよいです)

イ 未成年者であるという点についての「行為能力」の問題

【参照条文】民法5条1項
~~~~~~~~~~~~~~
(未成年者の法律行為)
第五条
未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
~~~~~~~~~~~~~~
が規定している問題です。

基本的に、方法②により、未成年者自身が
契約をする場合、単独ではできず、
親権者の同意が必要となります(民法5条1項本文)。

たとえば、未成年者が売買をするときなどは、
親権者の同意が必要です。
(一定の例外はありますが)

もっとも、単純な贈与契約(負担付でなく、一方的にもらうだけ)の場合、
「単に権利を得、又は義務を免れる法律行為」(民法5条1項ただし書)
に当たりますので、
親権者の同意は不要となります。

したがって、上記「ア 意思能力」に問題がないのであれば、
単純な贈与を受けるのみの場合、
親権者の同意なく、
未成年者が単独で契約をすることが可能です。

ただ、「意思能力」があるかどうか微妙な年齢・契約であれば、
方法①により、両親が代理して契約した方が安全です。

よろしくお願い申し上げます。