株式 会社法

株券発行会社における株券の発行の追認など

株券発行会社における株式の贈与につき、
株券の交付していなかったケースにおいて、
1年から数年などの相当期間が経過した後であっても
株券の発行、交付をすれば、会社法128条の要件は
満たされることになるでしょうか?

また、1年から数年などの相当期間が経過した後に
株券の発行、交付を追認すれば、
会社法128条の要件は満たされることになるでしょうか?

さらに、上記方法がいずれもNGである場合、
株券を交付せずにした贈与後に
当時の贈与を有効に成立させる方法はあるのでしょうか?

よろしくお願い致します。

1 贈与契約後に株券の発行・交付があった場合

>1年から数年などの相当期間が経過した後であっても
>株券の発行、交付をすれば、会社法128条の要件は
>満たされることになるでしょうか?

まず、株券発行会社の株式譲渡については、
株券の交付が、対抗要件ではなく、株式の
譲渡の効力発生要件となっています。

ただ、贈与者と受贈者との関係では、
契約が全く効力を有さないわけではなく、
あくまでも贈与者は、株券を交付し、完全な
株を譲渡する義務自体は負っています。
(株式は、意思表示のみでは移転しませんが。)

ですので、会社が、贈与者(またはその
相続人)に株券を発行して、贈与者が
それを受贈者に交付すれば、
その時点で、株式の
譲渡の効力は有効なものとなります。

ただし、この方法ですと、法的には
上記の通り、株券の交付が、
効力発生要件ですので、その株券の
交付があった時点で、株式譲渡の
効力(所有権移転のようなもの)
が生じるということになります。
(契約書自体の日付が過去のもので
あったとしても。)

2 贈与契約後に株券の発行・交付を追認する場合

>また、1年から数年などの相当期間が経過した後に
>株券の発行、交付を追認すれば、
>会社法128条の要件は満たされることになるでしょうか?

「追認」とは、会社から受贈者に株券の発行・交付が
なくても、会社から受遺者に対して、株式譲渡の
効力を認めることができるか?という趣旨でしょうか。

その前提で回答します。

この部分は、
従来から争いのあるところで、学説上は、
有効になるという説が優勢でした。

しかし、現行の会社法128条第2項
が、「対抗することができない」
という表現ではなく、
明確に「その効力を生じない」として
しまった関係で、そのように解釈
することは難しいという見解が
強くなっています。
(しかも、株券不発行会社が
原則になった関係で、それ以降
議論が進まない状況になっています。)

3 その他の方法

ただし、少なくとも、
会社が発行を不当に遅滞した場合には、
受贈者から株式譲渡の有効性を
会社に主張できるというという
最高裁昭和47年11月8日の考え方は、
残っていると考えられています。

ですので、受贈者から会社に対して、
株券の発行を請求しているにも
かかわらす、相当期間(1~2か月)
内に発行されないということがあれば、

相当期間経過時に株式譲渡の効力が
生じると考えることに問題はないでしょう。

なお、その場合にも、発行請求の前
の時点の契約時に遡って有効な
ものとして扱うことができるかは、
明確な答えがでているわけではありません。

法務上の争いであれば、何れにしても
株券発行の請求があって、その遅滞
(相当期間経過後)があった時点で
株式の保有が認められるというところで、
紛争が解決し、
このようなケースが現実的にはあまり想定されて
いない点があるからだと思われます。

よろしくお願い申し上げます。