国税庁の見解だと以下とあります。
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/06/06.htm
一方で、書籍の中には翻訳は役務提供のため、(国税庁のいうように)著作権の使用料にはならない、といった見解が時折見られます。
両者の違いは、国税庁のHPにある通り、第二次著作物として取り扱われるかだと考えています。
知財に詳しくないのでお尋ねしますが、第二次著作物になるかどうかの線引きはどこになりますでしょうか。例えば、ハリーポッターを翻訳するなら第二次著作物になるとは思いますが、会社のマニュアルや契約書の翻訳もこれに当たりますでしょうか?
よろしくお願いいたします。
>国税庁のHPにある通り、
>第二次著作物として取り扱われるかだと考えています。
◯(二次的)著作物に当たる→すべてが使用料となる
という点については、論理必然ではないかと
思いました(かなり近いかとは思います。)が、
◯(二次的)著作物に当たらない→使用料ではない
という論理は、成り立つかと思いましたので、
以下、翻訳された文章の二次的著作物該当性について、
解説します。
1 二次的著作物とは
著作権法上の二次的著作物は、
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
著作権法第2条 ・・・省略・・・
十一 二次的著作物 著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。
・・・省略・・・
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
と定められています。
つまり、
①【著作物】を翻訳し
②翻訳・・・により【創作した】著作物
と言える場合には、二次的著作物に
該当することになります。
2 要件の検討
(1)①【著作物】を翻訳し
まず、翻訳した文章が、
二次的著作物といえるためには、
そもそも翻訳の対象となっている
原文章が「著作物」である必要が
あります。
そして、
著作物とは、
a)「思想又は感情」を
b) 「創作的」に
c) 「表現」したものであって、
d) 「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの
をいいます(著作権法2条1号)。
それぞれ、
a) は単なる事実やデータ
b) は他人の作品の単なる模倣
c) はアイデア
d) は工業製品等
を著作権法の保護対象から除外する
ための要件になります。
おっしゃるとおり、ハリーポッターの原作
であれば、すべての要件に当てはまり
ますので、当然「著作物」と言えることに
なります。
一方で、会社のマニュアルや契約書は、
著作権が認められない
とされることが多いものになります。
中間の線引きというと。。。
裁判でも結論が分かれる部分であり、
その表現内容によるということに
なるのですが、
一般的な契約書やマニュアルなどであれば、
「思想又は感情」を表現したもの
ではないという理由で著作物では
ないという前提で考えて
いただいて良いかと思います。
(調査などでそのように主張する
ことにはかなり合理性があるという意味で。)
(2)②翻訳・・・により【創作した】著作物
仮に原文章が、
「著作物」に当たるとしても、
2次的著作物といえるためには、
既存の著作物をもとに「創作性」を
付与することにより新たに生み出された
著作物といえる必要があります。
例えば、文学作品などで
翻訳者が異なる文化的
背景を持ち、異なる言語で、
執筆された物を、
自然な文章として読むことが
できるように創意工夫を凝らした
ものなどのに限られると思われます。
ですので、翻訳の場合、単にマニュアルなどの
逐語訳や機械的翻訳には、「創作性」は
認められないかと思われます。
著作物性については、最終的には
裁判所でも結論が分かれる部分が
多いものになりますので、
具体的に中身を見ずにこれはOKこれはNG
という一般論を説明することは
困難ですが、税務調査などで
主張することには合理性がある
のではないかと思います。
よろしくお願い申し上げます。