不動産 民法 所得税

不当利得返還金の課税関係について

<悩んでいる内容>

●裁判の判決確定により、
 不当利得金を得た場合の所得区分及び計上時期について
(<前提条件>4参照)

●相対での合意(下記①②)により、
 不当利得金を得た場合の所得区分及び計上時期について

①現金で長期分割回収した場合
②不動産(兄の持分)で代物弁済により一括回収した場合
(<前提条件>5参照)

<前提条件>

賃借人と賃貸人の係争でなく、賃貸人同士の係争案件です。

1、3人(兄、弟、妹)の共有物件を賃貸している(事業的規模の不動産)。

2、兄が物件のすべてを管理していたが、経費を大きく水増(※)して収支計算し、
  弟、妹への分配金を、毎年過少に分配していた。
 ※兄の会社からの修繕費名目での架空請求

3、弟、妹は、過少に分配された金額で毎年、確定申告をしていた。
 (収入は事実の金額、経費は水増し後の金額)

4、弟、姉が裁判所へ訴えたことにより、不当利得金の返還の勝訴判決を得た。
 (H29年中に平成25年分のみの違反を裁判所へ訴え、勝訴判決を得た)

5、今後は、相対での話合いにより過年度分(10年間)の不当利得金を、
  現金で分割回収又は不動産(兄の持分)で代物弁済により回収する予定。

その場合の①所得区分及び②収入計上時期で悩んでおります。
法律の視点から何かヒントを頂ければと思い、質問致しました。

宜しくお願い致します。

>法律の視点から何かヒントを頂ければと思い、
>質問致しました。

ということですので、厳密な
法的な権利の性質や理論など
について回答します。
(現実的な考慮は「3 まとめ」
をご覧ください。)

1 不当利得返還請求権について(計上時期との関係)

まず、不当利得返還請求権についてですが、
今回のケースにおいて説明します。

不当利得返還請求権の法的な性質
ですが、

法的には、弟・妹に帰属している
ものを、兄が法的な理由なく
所持していたにすぎないため、
それを回収するものです。

つまり、言い方に若干の語弊
がありますが、

弟・妹が得た金銭
を兄に預けていて、
それを返還請求することと
権利の存在という意味ではあまり
変わりません。

ですので、経費が水増し
され、現実に受け取って
いた金額が過少だったとしても、

本来、その差額(経費水増し部分)
については、

過去分の弟・妹の確認申告が過少
ということになりますので、

法的に厳密に考えると
各年度について、

修正申告をするということに
なるかと思います。

2 和解内容について

上記の修正申告をした前提になりますが、

(1)現金で分割回収とする場合

>相対での話合いにより過年度分(10年間)の不当利得金を、
>現金で分割回収

とした場合には、上記の通り、
いわば、預かり金の返還を受けている
ということと権利の存在という意味では
同じですので、
特段、返還分は、収入金額になるものではありません
(利息分は別です。)。

(2)不動産(兄の持分)で代物弁済により一括回収した場合

この場合は、単純に兄の持分を不当利得返還債務の金額で、
譲渡したということになりますので、兄の譲渡所得を
考えることになるかと思います。

3 まとめ

以上は、法律的視点からの理論的
に厳密な結論になります。

ただ、課税実務上になりますが、
計上時期について
(特に紛争になって権利の明確性が
問題になるもの)は、厳密では
ない運用も認められているもの
があります。

例えば、不当利得返還請求の典型例である
制限超過利息の過払金の返還請求
についてですが、

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/03/05.htm

【回答要旨】の3段落目で、
事業的規模の不動産所得に係る
必要経費に算入されている場合には、
修正の必要があるとしながら、

判決のあった日の属する年分の
不動産所得の総収入金額に算入する
としています。

これは、利息制限法の制限超過利息
という局地的な部分の見解になります
し、理論的に考えてこうなるというもの
ではないので、
今回のケースと過払金を同じ
ように考えてよいかについては判断に
悩ましいところがありますが、

状況次第では、こちらに近づけて
考えることもありかと思います。

よろしくお願い申し上げます。