医療費、固定資産税、葬儀代その他の葬儀関連費用(戒名代、葬儀当日の心づけなどを含む)については
遺言に記載が無いため、消極財産のみの遺産分割が必要になると考えますが、この理解で正しいでしょうか?
なお、相続人は4人いますが、遺言の内容は「ある相続人1人(A)にのみ全ての財産を相続させる」
という内容になっています。
なお、実際には既にAが支払い済みです。
Aは全ての積極財産を相続しているので、消極財産についても全額を負担しているし、
このままでOKと考えてはいます。
ただし、法的な形式としてはどうなるの分かりませんので、ご教示ください。
なお、おそらくですが、今後、遺留分の減殺請求があるものと思われます。
よろしくお願い致します。
1 特定の相続人に対するすべての財産を相続させる遺言がある場合の相続債務の帰趨
>相続人は4人いますが、遺言の内容は「ある相続人1人(A)にのみ全ての財産を相続させ
>る」という内容になっています。
>消極財産のみの遺産分割が必要になると考えますが、この理解で正しいでしょうか?
遺言の解釈の問題として、
長年争いがあったケースですが、
当該ケースでは、
最高裁平成21年3月24日判決
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/455/037455_hanrei.pdf
(下線部参照)
によって、
原則として
相続債務もAがすべて承継するという
ことになります。
理論上は、「相続分の指定」も伴うもの
とされ、債務の承継までさせる遺言
というよう解釈されます。
ですので、ご質問の
>医療費、固定資産税
などの純粋な相続債務については、
遺産分割等の話ではなく、
遺言の効果
として、当然にAが負担するということになります。
>なお、おそらくですが、
>今後、遺留分の減殺請求があるものと思われます。
もちろん、この相続債務の額は、
遺留分算定の基礎となる財産額
(民法1029条1項)
を確定する上で、全額マイナスすることに
なります。
2 葬儀代その他の葬儀関連費用について
こちらは、理論上、相続債務(相続時に被相続
人が負っていた債務)ではないため、
法的には実は争いがある部分です。
リーディングケースといえる
名古屋高裁平成24年3月29日判決は、
次のように判断しています。
「亡くなった者が予め自らの葬儀に関する契約を締結するなどしておらず、
かつ、亡くなった者の相続人や関係者の間で葬儀費用の負担についての合意がない
場合においては、追悼儀式に要する費用については同儀式を主宰した者、
すなわち、自己の責任と計算において、
同儀式を準備し、手配等して挙行した者が負担するのが相当である。」
ですので、原則として喪主負担になります。
おそらくは、今回のケースも、
>なお、実際には既にAが支払い済みです。
ということですので、Aが喪主
なのかなと思います。
また、実務上は、Aが喪主でなく
ても、すべての財産を相続している
場合には、Aが負担するということは
よくあるかと思います。
なお、遺留分減殺請求時に
この葬儀関連費用をどう考慮するか
ですが、基本的に儀式を主宰した者
が負担するものですので、
相続人間で相続財産から支出することの
合意や遺言でそのようにする記載が
ない限り、
理論上は、
遺留分算定の基礎となる財産額
に影響を及ぼしません。
(実務上は、交渉の後の和解の
過程で考慮して、和解額を決める
ということはままあります。)
3 まとめ
>Aは全ての積極財産を相続しているので、
>消極財産についても全額を負担しているし、
>このままでOKと考えてはいます。
以上の通りですので、基本的に
おっしゃる通りかと思います。
よろしくお願い申し上げます。