前提として
H29.7.25死亡の被相続人所有の築古のアパートがありました。
被相続人は1人で住んでいて、相続人との接触は6年ほどしていませんでした。
被相続人は自己管理で高齢で管理がずさんだったことにより、空室も多く、
滞納者がいました。被相続人は放置していたものと思われます。
滞納については被相続人の通帳で入金がなかったため判明しました。
私は相続人から相続の依頼を受けました。
その相続人は、自分で調べて、どこかの不動産屋に依頼して滞納についてやり取りをしてもらえば
いいことを、ご自身で動いています。
その際に下記の債務承認弁済契約書を作成していました。
平成29年12月2日
******様
同居人様
〒****
住所 ***********
電話番号:********
氏名 ********
債務承認弁済契約書
貴殿は、平成4年10月に締結した賃貸借契約により
アパート名**** 203号室を賃借しておりますが
現在、家賃合計 参百八十三萬四千円(3,834,000)を滞納しています。
水道料金2017年1月~2017年11月未納しています。
2017/11/29 借主*******様に借金を確認致しました。
2017/11/30現在入金確認できません。
返済方法
毎月25日までに118,000円を下記の口座まで振り込みください。
同日までに振込が確認できない場合は、
118,000円のみならずそれに伴い遅延損害金(遅延日数×200円)を
合わせて請求させていただきます。
なお、本賃貸借契約の解除、法的手段も検討させていただきます。
なお、本請求と同時に連帯保証人様へも請求させていだだきます。
やむをえず退去する場合、退去後も完済するまで支払い義務があり請求いたします。
記
1.物件名:アパート名****203号室
2.未納賃料:
平成19年9月分賃料68,000円
平成20年7月分賃料68,000円
平成21年3月分賃料68,000円
平成21年7月分賃料68,000円
平成25年3月分賃料68,000円
平成25年4月分賃料68,000円
平成25年5月分賃料68,000円
平成25年7月分賃料68,000円
それ以降は毎月
平成29年11月分賃料68,000円
詳細は別紙参照ください。
合計3,834,000円
3.振込先:
三菱東京UFJ銀行 支店
普通口座
口座名義
4,支払い計画
平成29年11月30日より、家賃68000円と返済額50000円の
合計118,000円を毎月25日までに支払う。
家賃は過去の滞納分から補填していくものとする。
支払いに応じます
平成 年 月 日
貸主
住所
署名 印
借主
住所
署名 印
借主
住所
署名 印
以上
質問1
上記の債務承認弁済契約書でおかしなところはありますでしょうか?
(1号の3文書3の金額の記載のないものは200円と)
質問2
上記の債務承認弁済契約書を滞納者が記載することをもって債務の承認に該当し、
時効の中断したと考えてよろしいでしょうか?
1度中断したとした場合には、今後、認めた債務については時効にはならないものなのでしょうか?
(今回は、3,834,000円÷50,000円=76か月となり5年を超えて回収ということになっています)
賃料債権は5年ということですが、家賃の入金=回収は、常に古い家賃から回収したものとして
考えて問題はありませんでしょうか?
http://fudousanbengoshi.info/chinryou-tainou/shoumetujikou/
http://www.your-realestate-lawyer.com/qanda/2011/04/3-3/
https://saimuseiri-pro.com/columns/157/
質問3
現在、滞納者と接触している相続人はAさんで、その賃貸不動産を相続する人は別の相続人Bの予定です。
相続人Aは自分で動いたため、死亡日までの滞納金についてはAがもらいたいと現在、主張しています。
未収入金としての賃料債権も相続財産であるため分割対象財産となり、Aが滞納金をもらうことは問題はないでしょうか?
現時点で遺産分割は成立していませんが、相続人Bは相続したら売却すると言っています。
そうすると滞納金が古いものから充当するという概念だと新しい買主がでたとしてもしばらく賃料をもらえなく
なるものでしょうか?(そんな物件だと買主が現れないリスクがありそうだと個人的には思います)
そこで、上記の契約書においてタイムリーな家賃68,000円と滞納家賃5万円を別々に分離して今後しらいをしてもらうということ
にしたら対処できそうですが、回収金をいつの賃料のものかというのはお互いの認識で決めてもいいものなのでしょうか?
下記サイトだと古いものから充てるとあります。
https://www.yazawalaw.jp/2015/12/02/%E6%BB%9E%E7%B4%8D%E5%AE%B6%E8%B3%83%E3%81%AE%E6%B6%88%E6%BB%85%E6%99%82%E5%8A%B9%E3%81%A8%E5%85%85%E5%BD%93%E9%96%A2%E4%BF%82/
質問4
遅延損害金1日200円は妥当な金額でしょうか?
>質問1
>上記の債務承認弁済契約書でおかしなところはありますでしょうか?
>(1号の3文書3の金額の記載のないものは200円と)
(1)賃料債権の帰属について
まず、今回の債務承認弁済契約書(以下「本契約」といいます)
についてご説明する前に、
前提として、相続が発生した場合に賃料債権が誰に
帰属するかについて、説明します。
なお、預金債権については、ご承知のとおり、
最高裁判決平成28年12月19日が判例変更をし、
預金債権は相続人ごとに当然分割されるのではなく、
遺産分割の対象となる
という判断をしましたが、
この判決は、賃料債権には当てはまらないという前提です。
賃料債権についても、現在の流れでいくと
判例変更がなされる可能性はありますが、
この判決の射程は及んでいないというのが実務での
一般的な理解なので、現状では、下記の回答になります。
ア 滞納開始~遺産分割成立までの賃料について
賃料債権は、単純な金銭債権として、相続人ABに、
それぞれ相続分に応じて当然に分割され、
遺産分割の対象にはなりません。
(相続開始前の発生分は相続財産として当然分割、相続開始後遺産分割成立前発生分は相続分に
応じて帰属)。
以下では、AとBが相続分2分の1ずつであるという前提とすると、
滞納額3,834,000円のうち、Aが権利を有しているのは、
2分の1の1,917,000円のみです。
残りの1,917,000円は、Bが権利を有しているので、
Aが勝手にこの部分について、借主(債務者)と
新たに合意をすることはできません。
なお、本来は、上記の通り、遺産分割の対象になりませんが、
相続人全員の同意によりこれらの賃料も含めて
遺産分割協議の対象として、AB間で合意することは可能なので、
たとえば、遺産分割により、
全額をAが取得するということも実務上は、
可能ではあります。
イ 遺産分割成立以降の賃料
遺産分割によりアパートを取得した相続人が、
同時に、貸主の地位も引き継ぎます。
そして、貸主となった相続人が、賃料を受け取る権利も取得するので、
仮にアパートをBが取得したとすると、
Bが賃料全額を受け取る権利を取得することになります。
(2)本契約について
ア 本契約の有効性
まず、上記のとおり、Aは、
滞納額3,834,000円の半分についてしか権利を
有していないにもかかわらず、
本契約では滞納額全額について、借主と合意をしてしまっています。
ですので、少なくとも、Bの分の半額については、
権利のない者が合意をしたということになるため、
錯誤により
・合意の全てが無効
または
・合意のうち、滞納額の半額にあたる部分が無効
とされる可能性が高いです。
イ 契約書の締結し直しのすすめ
このように、本契約の全てが有効とされる可能性は非常に低いため、
借主との間で契約書をあらためて締結し直した方がよいでしょう。
内容としては、以下が考えられます。
①現時点で、Aのみが自分の権利がある部分について締結する。
②現時点で、AとB両方が、自分の権利がある部分について、(一緒に、または、別々に)締結する。
③遺産分割協議成立後に、遺産分割の内容を踏まえて、権利者になった方が締結する。
なお、今回は権利関係が非常に複雑になっているため、
契約書の締結を当事者のみで行うと内容に誤りが生じる可能性が高いです。
専門家に依頼して契約書を作成することをおすすめします。
ウ 仮に本契約書が有効だとした場合の合意内容の意味
本契約書は、その記載内容からすると、
滞納賃料合計3,834,000円を、
以下の期限までに、分割して返済することを約する合意と解釈されます。
平成29年12月25日 50,000円
平成30年1月25日 50,000円
平成30年2月25日 50,000円
・・・以降、各25日までに50,000円ずつ
(返済金額の合計が3,834,000円となるまで続く)
※賃料68,000円の支払いについて定めている部分は、
賃貸借契約に基づき、今後支払うべき賃料を期限どおり
ちゃんと払ってくれ、ということを言っているにすぎず、
特に法的な意味のあるものではないでしょう。
このように解釈されるのは、
>平成29年11月30日より、家賃68000円と返済額50000円の
>合計118,000円を毎月25日までに支払う。
として、「家賃」と「返済額」とを分けて規定しているところから、
滞納賃料への返済としては「返済額」の50000円のみ、
「家賃」の68000円は今後発生する家賃の支払義務を確認している
(家賃の支払義務はもともとの賃貸借契約により負うものなので、
今回の確認に法的な意義はない)
と解釈されるということです。
これまでのご説明のとおり、この契約書のすべてが有効である
という可能性は非常に低いですが、
そうすると、ご質問の前提が崩れしまうため、
以下のご質問への回答では、
・本契約書が有効であること
を前提とします。
また、本契約書は、上記のご説明のとおり、
・滞納額3,834,000円を、50,000円ずつ分割で支払う
・今後生じる賃料は、毎月68,000円ずつ本来の賃貸借契約の約束に基づいて支払うことを確認する(特に法的な意味はない)
という趣旨であることを前提とします。
2 ご質問②について
>質問2
>上記の債務承認弁済契約書を滞納者が記載することをもって債務の承認に該当し、時効の中断したと
>考えてよろしいでしょうか?
債務承認は、債務者から債権者に対してなされる必要があります。
今回は、上記のとおり、滞納金額のうち、Aが半額、Bが半額の
権利を有しています。
ですので、債権者は、滞納額の半額はA、残りの半額はBとなります。
今回の債務の承認は、借主からAになされているので、
Aが債権者になっている半額のみが債務承認の対象となります。
そして、残り半額のBの部分については、債務の承認がなされていないという
ことに理論上はなります。
(ただし、AとBの関係性を考慮すれば、
債務の承認にあたらないからといって、
この状況で借主がBの分について時効を主張することは
信義則違反だ、というような判断を裁判所がする可能性はあります。)
>1度中断したとした場合には、今後、認めた債務については時効にはならないものなのでしょうか?
>(今回は、3,834,000円÷50,000円=76か月となり5年を超えて回収ということになっています)
債務の承認が認められて、時効が中断したとしても、
時効期間がリセットされるだけで、
債務承認の時点から、また時効期間のカウントがはじまります(民法157条1項)。
一度認めた債権については、もう時効にかからない
ということではありません。
ただし、今回の合意では、上記で記載したとおり、
>平成29年12月25日 50,000円
>平成30年1月25日 50,000円
>平成30年2月25日 50,000円
>・・・以降、各25日までに50,000円ずつ
というように、返済期限を再設定しています。
この各50,000円の返済金債務の時効の起算点は、
「権利を行使できるとき」(民法166条1項)、
つまり、各返済期限からとなります。
もっともはやく時効期間がくるもので、
平成29年12月25日 50,000円
→平成34年12月25日時点で時効消滅
その後、1ヶ月ごとに、50,000円ずつが時効にかかっていく、
ということになります。
ですので、約定通り順調に返済してもらえれば、
ご懸念されている状況は発生しません。
>賃料債権は5年ということですが、家賃の入金=回収は、常に古い家賃から回収したものとして
>考えて問題はありませんでしょうか?
滞納者から、弁済する際に、「どの月の分に充当する」
という指定が特にない場合には、
その理解でよいでしょう。
3 ご質問③について
>質問3
>現在、滞納者と接触している相続人はAさんで、その賃貸不動産を相続する人は別の相続人Bの予定です。
>相続人Aは自分で動いたため、死亡日までの滞納金についてはAがもらいたいと現在、主張しています。
>未収入金としての賃料債権も相続財産であるため分割対象財産となり、Aが滞納金をもらうことは問題はない
>でしょうか?
以下では、
・遺産分割協議の中で、「これまでの滞納金+遺産分割までに生じた賃料」については分割の合意をしない(したがって、そのままAとBが半分ずつ取得する)
・遺産分割により、賃貸不動産をBが取得する
ことを前提とします。
〇死亡日までの滞納金について
上記のとおり、Aは、滞納金の半額を受け取る権利を有しているので、
返済額の合計が、滞納金3,834,000円の半額に達するまでの間、
Aが受け取れることになります(Bに渡す必要はない)。
〇死亡日~遺産分割協議成立までの賃料について
Aは、賃料の半額のみ受け取る権利があります。
ですので、賃料68,000円を受け取ったとすると、
そのうち半額の34,000円は、Bに渡さなければならない
ということになります。
〇遺産分割成立後の賃料について
遺産分割により、Bが賃貸不動産を取得するのに伴って、
賃貸人としての地位もBが自動的に全部取得することになります。
ですので、この賃料を受け取る権利があるのは、Bで、
Aは受け取る権利がありません。
したがって、遺産分割後の賃料として支払われた
ものは、すべてBに渡す必要があります。
>現時点で遺産分割は成立していませんが、相続人Bは相続したら売却すると言っています。
>そうすると滞納金が古いものから充当するという概念だと新しい買主がでたとしてもしばらく賃料をもらえなく
>なるものでしょうか?(そんな物件だと買主が現れないリスクがありそうだと個人的には思います)
>そこで、上記の契約書においてタイムリーな家賃68,000円と滞納家賃5万円を別々に分離して今後しらいをしてもらうということ
>にしたら対処できそうですが、回収金をいつの賃料のものかというのはお互いの認識で決めてもいいものなのでしょうか?
ご質問の趣旨に応えられていない部分があるかもしれませんが、
Bが不動産を売却した時点で、
貸主の地位が、Bから不動産の買主に移転します。
ですので、その時点で、
Bは不動産の貸主ではなくなり、
賃料を受け取る権利はなくなります。
そして、その後の賃料は、買主(新しい貸主)が受け取ることになります。
よって、懸念されている
>新しい買主がでたとしてもしばらく賃料をもらえなくなる
という状況は生じないと考えられます。
4 ご質問④
>質問4
>遅延損害金1日200円は妥当な金額でしょうか?
今回の事例では、
消費者契約法9条2号により、
遅延損害金の上限は年14.6%になると考えられます。
今回は、118,000円に対する遅延損害金として定められているため、
これを前提に計算すると、
118,000円×年利14.6%=17,228円(1年間の遅延損害金の上限)
よって、1日の遅延損害金の上限は、
17,228円÷365日=47.2円
なので、
1日200円という遅延損害金の額は、
上限オーバーです。
上限を超えた152.8円については、民事上無効となります。
なお、消費者契約法は、「事業者」と「消費者」との契約に適用されるもので、
今回の貸主は「事業者」にあたらないという可能性がないわけではありません。
ただ、個人でもアパート経営を行っている場合には、
反復継続性が認められ、「事業者」となるという考え方が一般的です。
したがって、消費者契約法が適用になるという前提で
お考えいただいた方がよいと思います。
よろしくお願い申し上げます。
(相続人AとBは腹違いの子同士です)
なお、本来は、上記の通り、遺産分割の対象になりませんが、
相続人全員の同意によりこれらの賃料も含めて
遺産分割協議の対象として、AB間で合意することは可能なので、
たとえば、遺産分割により、全額をAが取得するということも実務上は、可能ではあります。
→質問1
遺産分割協議書に未収入金 家賃収入等 入居者名ほかと
記載したものに署名と実印を押印してもらえました。
遺産分割をした場合には生前の滞納家賃は全額、相続人Aのものと考えていいのでしょうか?
遺産分割協議書にはAが相続すると記載はしましたが、あとで相続人Bが自分にも権利がある
と主張してくることはありますでしょうか?
(Bにも遺産分割協議書の原本を押印後、渡し済みです)
質問2
債務承認弁済契約書については不完全なものというのは認識しました。
不完全の中で入居者が納得して滞納家賃を支払い続けてくれれば問題は当然にありませんが、
遺産分割で相続人Bが相続して売却するため、Aはもし滞納者が支払いをしなかったとしても
退去させる権利は当然にないもののため、入居者は新所有者には支払い続けるということも
実務上は考えられますが、Aについて滞納者に対して支払いをしてもらえなかった場合には
何か保全することはありますでしょうか?
遺産分割協議後に再度、滞納者と同じ契約書を交わした場合には相続人Aのものとすることは
可能でしょうか?
(未収家賃として相続税課税はされてしまいます)
質問3
遺産分割協議書について、押印してもらう場合にはどの程度の説明が必要でしょうか?
遺産分割協議書をBに見せて特に質疑がなくB自身が署名押印した場合は
、その遺産分割に対して重要な財産が漏れていた時などでなければ
錯誤無効になることは一般的にはありませんでしょうか?
今回は、118,000円に対する遅延損害金として定められているため、
これを前提に計算すると、
118,000円×年利14.6%=17,228円(1年間の遅延損害金の上限)
よって、1日の遅延損害金の上限は、17,228円÷365日=47.2円
なので、1日200円という遅延損害金の額は、上限オーバーです。
上限を超えた152.8円については、民事上無効となります。
→質問4
うち5万円がAの滞納家賃の回収分を前提とした場合には
50,000円×年利14.6%=7,300円÷365日=1日20円ということになりますでしょうか。
よろしくお願いします。
>遺産分割をした場合には生前の滞納家賃は全額、相続人Aのものと考えていいのでしょうか?
はい。おっしゃる通りで、問題ございません。
>遺産分割協議書にはAが相続すると記載はしましたが、あとで相続人Bが自分にも権利があ
>ると主張してくることはありますでしょうか?
事実として、
主張自体はしてくるかはわかりませんが、
その遺産分割協議書であれば、
その主張は、認められないでしょう。
2 質問2~滞納家賃の保全について~
>入居者は新所有者には支払い続けるということも
>実務上は考えられますが、Aについて滞納者に対して支払いをしてもらえなかった場合には
>何か保全することはありますでしょうか?
こちらは、滞納金(遺産分割前までの滞納家賃)ということで
良いでしょうか。以下その前提です。
まず、今回の遺産分割により、厳密には
・滞納金半額については、相続によりもともとAが権利を取得
・残りの半額については、相続によりBが取得し、その後B→Aに債権譲渡
がされたことになります。
したがって、債権譲渡された半額(もともとのBの分)
を債務者に請求するには、厳密には、
債権譲渡の債務者対抗要件を備える必要があります(民法467条1項)。
方法は以下のいずれかです。
・譲渡人(B)から債務者(賃借人)への債権譲渡通知をする
・債務者(賃借人)から譲受人(A)に対する承諾をとる
(1)Bに債権譲渡通知をしてもらう方法
Bから債務者に債権譲渡通知書を送ってもらいます。
(通知には、「前回の契約書の通り・・・」
という記載で通知してもらえれば違和感はないでしょう。)
ただし、
例えば、Bの債権者がこの半額分の
債権を差し押さえた場合の債権者や
Bがこの債権を第三者に譲渡した場合に、
その第三者に対して、
Aが優先する債権者
だということが認められるには、
確定日付のある証書である必要がある
(第三者対抗要件。民法467条2項)ので、
内容証明郵便で送ってもらう方がベターです。
なお、Bがこの通知を行うことは、
Bが債権譲渡をしている以上は、
法的な義務(AはBに請求できる。)
になります。
(2)債務者の承諾をとる方法
今回の状況ですと、何度かAへの滞納金
全額分の支払があれば、その支払行為を
もって、債権譲渡の承諾があったと認定される可能性はあります。
当初の債務弁済契約書で、賃借人は滞納金全額について、
Aへの支払義務を認めていること(前回の回答のとおり、
法的にはこの時点では、Aには半額分の請求権しかありませんでしたが)、
その前提で滞納金全額の支払いをしていることから、
債権譲渡の承認といえなくもないということです。
ただ、債務弁済契約書と遺産分割書の日付
が前後していると思いますので、
これのみでは厳密には難しい点があります。
ですので、遺産分割協議後に再度、
債務弁済契約書を締結し直すという方法で、
債権譲渡の承諾を得るという方法も
1つかとは思います。
ただ、債権譲渡の承諾も、
Bの債権者がこの半額分の
債権を差し押さえた場合の債権者や
Bがこの債権を第三者に譲渡した場合に、
その第三者に対して、
Aが優先する債権者
だということが認められるには、
確定日付のある証書である必要があるので、
そこのリスクまでヘッジしたいという
ことであると
公正証書で
作成するまたは内容証明で債務者から
承諾通知をもらうということが必要になります。
(3)(1)と(2)の方法どちらが良いか
ア 債務の承認(時効の中断)との関係について
前回の回答のとおり、
当初の債務弁済契約書では、
理論上はBの半額部分については、
債務の承認にはならない
という可能性があります。
(実際は、B部分についても、信義則違反などで、
時効の主張が認められない可能性が高いとは思われますが。)
なので、この観点からは、
すべての権利がAに移転したこの段階で、
賃借人との間で債務弁済契約書を締結し直しておいた方が
良いかと思います。
債務弁済契約書をし直しておけば、
上記(2)のとおり、債権譲渡の承諾の効果も
得られますので、一石二鳥ではあります。
イ Bの債権差押者やBが同一債権を譲渡した者との関係について
(2)の方法
ですと、公正証書を利用するかまたは
債務者に内容証明による通知を送って
もらうことになりますが、
現実的には、応じてもらえない可能性も
あります。
一方で、表題のような者が現れる
可能性は、Bがどういう方かにより
ますが、あまり高くはないでしょう。
ウ まとめ
以上からすると、
①公正証書や内容証明で債務者から承諾をもらう
または
②(1)(2)の両方をする
確定日付は(1)でとって、時効との関係で承諾は、
別途債務者からもらう
という方法がベストかと思います。
①と②の両方とも難しい場合には、
(1)と(2)どちらも問題が
顕在化するリスクはそこまで
高くないので、依頼者様に
デリメリを説明した上で決定してもらうことになるか
なと思います。
(4)滞納金が支払われない場合に備えた保全の方法
まずは、上記の
方法で債権(滞納金)を法的に
認められる(債務者に請求できる)形にします。
その後は、通常の債権回収の
作業になりますので、もし
滞納金が支払われない場合には、
裁判をして、債務者の財産に
強制執行(もちろん、
債務者に財産がなければ、回収できない
のですが。。)をすることになります。
または、
「債務者の執行認諾文言※付き公正証書」
を締結すれば、裁判手続きを
経ずに強制執行をすることができます。
※弁済が滞った場合に、相手が強制執行を受けることについて異議を唱えない
旨の記載
>遺産分割協議後に再度、
>滞納者と同じ契約書を交わした場合には
>相続人Aのものとすることは可能でしょうか?
ご質問のご趣旨が定かではありませんが、
前回の回答のとおり、
Bから新所有者への所有権が移った
後の賃料は、債務者(賃借人)が
新所有者(賃貸人)に対して、
支払うものであり、
債務者が新所有者にその分を
請求することはできません。
弁済の充当順位の話は、
あくまでも、
債権者と債務者が同一人の場合の
問題です。
3 質問3~錯誤無効について~
>遺産分割協議書をBに見せて特に質疑がなくB自身が署名押印した場合は
>、その遺産分割に対して重要な財産が漏れていた時などでなければ
>錯誤無効になることは一般的にはありませんでしょうか?
そうですね。この程度であれば、
錯誤無効と認定されることは
一般的にはないでしょう。
4 質問4~遅延損害金の上限について~
>→質問4
>うち5万円がAの滞納家賃の回収分を前提とした場合には
>50,000円×年利14.6%=7,300円÷365日=1日20円ということになりますでしょうか。
ご理解のとおりです。
ただ、厳密には、閏年だと年間366日で、
50,000円×年利14.6%=7,300円÷366日=1日19.945…円
となってしまうので、
「年利14.6%」とする方が正確です。
なお、おそらくこれ以上の
アドバイスとなると、実際の分割協議書
などの資料を見せていただいた上で
ないと難しそうですので、
メーリングリスト会員様と関与先様は、
初回の面談による相談も無料で
お受けしておりますので、そちらをご利用ください。
よろしくお願い申し上げます。