(前提)
・8月決算法人、顧問契約書なし。
・自動振替で8月分まで顧問料受領。
9月と10月は振替不能。11月は停止。
・源泉所得税は納期の特例だが、29年7月の納税は済んでいない。
28年7月から12月分は納付済み。
・資料が不足しているため、まだ申告完了していない。
・10月中旬から電話やメール、携帯メールなどで連絡しても、
代表者と話ができず返信もない。
・今回の申告も当方では遠慮したい。
(質問)
・28年9月からの顧問料を全額返金して、顧問契約解除、
今回の申告も当方では行わないと通告することは
可能でしょうか?
・可能だとしたら、どのような文言を記載すればよいでしょうか?
・可能だとしたら、内容証明郵便の必要がありますか?
配達記録郵便でもいいでしょうか?
お恥ずかしい話で大変恐縮ですが、
どうぞよろしくお願い申し上げます。
説明しますので、
通知の内容→ご質問への回答
という順番で回答します。
1 解除通知の内容
以下は、
解除通知の内容に含めていただきたい内容
になります。
(1)メインの事項
◯メール・電話等で再三の連絡をしたが、連絡が
つかない状態であるということ
◯上記事情から確定申告に必要な資料も
不足していおり、平成29年8月期の申告も
できていないこと
◯平成29年9月分以降の顧問料の
支払いの確認が取れていないこと
◯このような状況下では、
平成29年8月期の確定申告も含めて、
契約を継続することが困難であるため、
当通知にて、契約関係を解除すること
(2)付随的な事項
以下は、「なお、」等で
文末に書いていただければと思います。
・当通知による契約解除についてご意見などがある場合には、
当通知受領から1週間以内に連絡をいただきたいこと
・平成29年7月の源泉所得税が未納であること
・平成29年8月期の確定申告がされていないこと及び
平成29年7月の上記源泉所得税が未納であることにより、
延滞税・加算税など別途税金が生じる可能性が
あることから、相手の方で対応するようにお願いすること
・念のため同内容の文書を特定記録郵便でも発送したこと
2 ご質問への回答
(1)平成29年8月期の申告について
>28年9月からの顧問料を全額返金して、顧問契約解除、
>今回の申告も当方では行わないと通告することは
>可能でしょうか?
法的には、「過去に遡って」、
「一方的に」契約を解除するということ
はできません。
過去の顧問料を
一方的に返金をしたからといって
過去の契約関係をなかったことにできるわけ
ではありません。
つまり、一方的な解除を行う場合、
解除通知から将来の契約を
終了させる意味になります。
将来に向かって契約を終了させますので
御社に平成29年8月期の申告を
する義務があるのかないのかというところは
確かに法的には一応、疑義があるところです。
ただし、
平成29年8月期の申告も含めて
「契約を継続し難い事由がある」
といえる場合には、
平成29年8月期の申告を先生がする必要はありません。
今回の事例では、
申告月である
>10月中旬から電話やメール、
>携帯メールなどで連絡しても、
>代表者と話ができず返信もない。
ということから
適切な税務処理ができないこと
及び
現実の申告準備に入る9月
・10月の顧問料も振替不能となっている
こと
から
平成29年8月期の申告も含めて
「契約を継続し難い事由がある」
という前提で通知を送る形で良いかと
思います。
(2)文言について
上記「1」のなお書き以外の部分は
(1)からくる記載ですが、なお書きの部分を
解説します。
===================
・当通知による契約解除についてご意見などがある場合には、
当通知受領から1週間以内に連絡をいただきたいこと
===================
先生としては、
>28年9月からの顧問料を全額返金
するご意向もあるということですので、
1週間以内に連絡をもらえれば、
それと引き換えに
平成29年8月期の申告を
しないことをより明確にできます
ので、記載しました。
また、一方的な契約の解除で
「契約を継続し難い事由がある」
という認定の際に、話し合いの
機会も与えたにも関わらず、
連絡がなかった事実はこちらに
有利になることも考慮しています。
ただし、今回の事例では、
返金まで必要な事案かというと、
現状でも、
「契約を継続し難い事由がある」
という前提で問題ないかと思いますので、
先生のご判断で、
この部分は削除するという
対応でも良いかと思います。
================
・平成29年7月の源泉所得税が未納であること
・平成29年8月期の確定申告がされていないこと及び
平成29年7月の上記源泉所得税が未納であることにより、
延滞税・加算税など別途税金が生じる可能性が
あることから、相手の方で対応するようにお願いすること
================
顧問契約の継続している間は、
税理士の先生は説明義務を負いますし
契約が終了したとしても、契約期間中に
説明がなかったということで
将来にわたる加算税などについても、
損害賠償請求などがされることが
あります。
ですので、この通知で、
未納があることや申告がされていない
ことで、延滞税及び加算税が別途課税
されるおそれがあることを説明したことを
明確にするための記載になります。
>・可能だとしたら、内容証明郵便の必要がありますか?
>配達記録郵便でもいいでしょうか?
今回は、どのような内容の
郵便が届いたかがポイントに
なりますので、
内容証明郵便で送る
ことがベターかと思います。
ただし、今回のケースでは、
相手が受け取らない可能性があります。
そうすると
内容証明郵便が戻ってきてしまいますので、
解除の効果が発生しないおそれが
あります。
そのようなケースでは、
同一内容の書面を
内容証明と特定記録郵便を両方
送られた方が良いと思います。
そうすることで、相手が受領を
拒否等した場合でも、ポストに
特定記録郵便の方は入り
ますので、その時点で
解除の効果が生じます。
内容証明の文書の最後に
===============
「念のため同内容の文書を特定記録郵便でも発送したことを
申し添えます。」
===============
と記載し、特定記録郵便の封筒に日付を記載して、
コピーして保存することで
相手が内容証明を受領しなくても、
内容証明通りの特定記録郵便が相手に到達
したことを証明することができます。
よろしくお願い申し上げます。
もう少し、教えてください。
今回分の資料を返却する場合には、宅急便でよいのでしょうか?
また、発送のタイミングは解除通知の前後どちらが よいでしょうか?
ご多用のところ大変恐縮ですが、
どうぞよろしくお願い申し上げます。
>また、発送のタイミングは解除通知の前後どちらが よいでしょうか?
解除通知到達後、
1〜2週間様子を見て、
◯先方から連絡があった場合
連絡が来た際に宅急便で返却する旨を伝えた上で、
宅急便で返却する。
◯先方から連絡がない場合
やむを得ませんので、宅急便で返却する
という形で良いと思います。
その際、
送付書に、返却する書類名を漏れなく記載し、
送付書のコピーをとって保管しておいてください。
どの書類を送ったかが、後から見てわかるように
証拠を残しておく趣旨です。
(本来は、返却する書類のすべてをコピーして
おいていただいた方がよいですが、
これは分量との兼ね合いもあります。)
また、宅急便の郵送先の記載欄の内容を
「返還書類」と記載し、
それをスマートフォンなどで撮影した
上で郵送してください。
送付したこと自体の証拠とするためです。
(お手間でなければ箱に入れた
書類ファイルの表紙なども撮影すれば
盤石です。)
これらをあわせて、
「いつ、どこあてに」、「どのような書類を送った」
かが明確になります。
よろしくお願い申し上げます。