(相続の概要)
・相続日~ 平成25年6月
・相続人~ 子7名(A~G)
・相続財産~7,000万円
・公正証書遺言記載の財産~A2,000万 B3,500万 C~G各100万×5人 ⇒ 合計6,000万
・遺言書に記載の無い財産~1,000万
(分割協議の内容)
・C~Gは遺留分の不足分各400万円を要求する
・Aは遺言書に記載の無い財産1,000万を相続する
・AはC~Gに代償金として各400万を支払う
・Aは公正証書遺言記載のB相続財産500万(自社株式)を相続する
以上の内容で分割協議が合意の見込みです。
Q1
代償金はAのみ負担で問題はないですか?
Q2
自社株式は株式名簿では被相続人名義のまま4年半程経過していますが、(この間無配当)
今回の分割協議での移転は、BからAへの贈与とされる可能性はありますか?
Q3
税理士である私に分割協議書の作成依頼がありました。
相続人間で色々揉めていた経緯も知っていますので、不安に思います。
無償で行ったとしても、非弁行為にはなりませんか?
うまく断る方法、また止む無く引き受ける場合、リスク対策や留意点がありましたら教えて下さい。
よろしくお願いします。
>Q1
>代償金はAのみ負担で問題はないですか?
相続人全員が合意して行うのであれば、
特に問題ございません。
遺言書と異なる遺産分割をする場合で
遺言執行者がいる場合には、
その同意も必要になるので、ご注意ください。
2 Q2について
>Q2
>自社株式は株式名簿では被相続人名義のまま4年半程経過していますが、(この間無配当)
>今回の分割協議での移転は、BからAへの贈与とされる可能性はありますか?
結論としては、
今回の事案において、税務署が贈与と認定することは
難しいかと思われます。ただし、
理論上は、可能性がないわけではありません。
以下は、理論上の可能性についてです。
全相続人の遺産分割のやり直しでは、
民法上の議論はおくとして、
相続税法上は、当初分割後、
再分割を行ったことにより取得した財産については、
相続税法上の「分割」には該当しない旨、
基本通達に規定されています。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/02/06.htm#a-19_2_8
これは、遺産分割により一旦確定した権利関係を、
再度の合意により動かすことになるので、
新たに贈与などがあったと考える
ものです。
一方で、遺言書に反する遺産分割に
ついてですが、
今回の株式については、おそらく遺言書で
Bに「相続させる」という遺言が残されて
いるかと思います。
この「相続させる」旨の遺言については、
遺言の効力が発生した時点(被相続人死亡時点)
で、確定的にBに移転することになります。
このような民事的な判断を前提にすると
理論上は、Bに確定した権利をAに
移転することになるので、
遺産分割のやり直しのケースと同様に
贈与などを観念しうるものと
考えられるかと思います。
ただし、遺言に反する遺産分割の場合は、
・遺言はあくまでも、被相続人が一方的に
行ったものであること(納税者の恣意が
入る余地が少ない。)
・あくまでも1回目の遺産分割であり、
民法909条により「相続開始の時に
さかのぼってその効力を生ずる」
と考えることができること
などの遺産分割のやりなおしとは
異なる背景があることを理由とする
ものであると思いますが、
実務上は、贈与を観念するという
扱いはされていないケースが多く、
更正をするというのはなかなか難しい
かと思います。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4176.htm
ただ、今回は、
時期としては一度、遺言の内容で申告をしている
という事情があれば、
可能性がゼロかと言われれば、ゼロでは
ないということにはなるかと思います。
このあたりは、依頼者の方に
説明はしておいた方がベターかとは、思います。
なお、このような事情があるので、
相続人全員で合意し、
協議書を作成する場合には、
には、遺言の効力を前提にするよりも、
相続人間で、全相続財産を
対象に分割方法を決めた
という形の協議書を残す方法がベターでしょう。
3 Q3について
>Q3
>税理士である私に分割協議書の作成依頼がありました。
>相続人間で色々揉めていた経緯も知っていますので、不安に思います。
>無償で行ったとしても、非弁行為にはなりませんか?
>うまく断る方法、また止む無く引き受ける場合、リスク対策や留意点がありましたら教えて
>無償で行ったとしても、非弁行為にはなりませんか?
弁護士業務は、税理士業務と異なり、
有償独占業務になりますので、
「報酬を得る目的」(弁護士法72条)が
ないのであれば、非弁行為という
ことにはならないでしょう。
>うまく断る方法
・税理士は税務の専門家であって、
契約書や遺産分割協議書の作成については、
専門ではないこと
・特に今回は相続人の数が多いこと
・色々と揉めていた経緯もあること
から、依頼者さまのために、
後からの揉め事の可能性を
なくす必要があるため、
今回の協議書をしっかりと
弁護士などの専門家に作成してもらった方が
良いと伝える方法がよいかと思います。
>止む無く引き受ける場合
この場合は、あくまでも、
代書という立ち位置にすべきです。
おそらく、相続人の代表の方と
やり取りをすることになると思い
ますが、その方から情報をもらい
それに合わせて作成するのみに
留めておくことが良いでしょう。
今回の事案で、
仮に他の相続人への
遺産分割協議書の説明なども
されてしますと、
その段階で、紛争に巻き込まれる
リスクが高いものと思います。
よろしくお願い申し上げます。