前提条件で
被相続人(男性)がいて、被相続人には先妻の子長男(以前死亡です)の代襲相続人かつ孫養子の男性30歳(養子縁組H23年・二重身分法定相続分3/6)
と同じく代襲相続人孫の女性44歳(法定相続分1/6)と
後妻の子女性28歳(法定相続分1/3)で遺言書はありませんでした。
被相続人は先妻の子の長男家族とH22年までは同居していましたが、長男H22年死亡後、でていってくれとの被相続人の言動で、
長男家族は家をでていきました。
後妻との婚姻はS48-51年ありその間に生まれた子S48年です。
被相続人の葬儀には後妻の子は来ていません。
私の依頼者は前妻の子の代襲相続人からです。
遺産は4.5億ぐらいあります。
質問1
親戚も言っていたとのことですが、離婚時(相当前です)にまとまったお金を渡していて手切れ金なのか相続分の前払かは不明ですが、
真実、お金は渡しているとのことでした。
お金も相続人である後妻の子に渡して、その後妻の子はすぐに自分の母に渡したと証言しています。
遺産分割の中で特別受益として分割する相続分から控除することはできますでしょうか?
質問2
相続人で話をした際(今日現在、1回だけ話し合いをして今週末に2回目の話し合いの予定です)に、
後妻の子へお金は4,500万円ぐらいですと伝えて不動産の話をしようとしたら不動産はいいのでお金だけでいいですと言った
みたいですが、後日、全体像を見ていなかったので相続分は欲しいとの連絡がありました。
最初にお金だけでいいと言った言動で何か有利になることはないでしょうか?
質問3
先方は法定相続分1/3の主張に変わりました。
法律的には仕方がないのですが、相続分として少しでも有利になるような交渉方法はありませんでしょうか?
何かアドバイスすることがありましたら教えてください。
>被相続人(男性)がいて、被相続人には先妻の子長男(以前死亡です)の代襲相続人かつ孫
>養子の男性30歳(養子縁組H23年・二重身分法定相続分3/6)
>と同じく代襲相続人孫の女性44歳(法定相続分1/6)と
>後妻の子女性28歳(法定相続分1/3)で遺言書はありませんでした。
代襲相続人孫の女性44歳
→28歳
後妻の子女性28歳
→44歳
という前提でよろしいでしょうか。
他の数字と辻褄があわなかったため
念のための確認です。
以下、その前提で回答します。
1 ご質問①について
(1)ご質問および回答の結論
>質問1
>親戚も言っていたとのことですが、離婚時(相当前です)にまとまったお金を渡していて
>手切れ金なのか相続分の前払かは不明ですが、
>真実、お金は渡しているとのことでした。
>お金も相続人である後妻の子に渡して、その後妻の子はすぐに自分の母に渡したと証言
>しています。
>遺産分割の中で特別受益として分割する相続分から控除することはできますでしょう
>か?
今回のケースで、裁判所で最終的に、
特別受益と認められる可能性は高くはないです。
ただ、
交渉の段階では、これらを特別受益として主張し、
こちらに少しでも有利な金額を引き出す材料として
使えばよいかと存じます。
(2)回答の理由
ア 贈与が特別受益として認められる範囲(一般的な基準)
贈与が特別受益といえるかどうかは、
先生ご指摘のとおり、「相続分の前渡し」の趣旨と
認められるかどうかによります。
具体的には、
被相続人の資産状況、贈与の動機、目的、贈与額などの諸事情を考慮して、
・子に対する贈与の場合には扶養義務の範囲を超えるかどうか
・配偶者に対する贈与の場合には夫婦間の協力扶助義務(離婚に伴うものであれば、離婚に伴う金銭的給付)の範囲を超えるかどうか
が一定の基準になると考えられます。
イ 今回のケースでは
今回のケースでは、事実関係が不明確で、
最終的に贈与を受けたのが後妻なのか、
後妻の子なのかは判然としないですが、
後妻への贈与であるとすると、
相続人本人である後妻の子への贈与ではないので、
基本的に、特別受益というのはなかなか難しいと考えられます。
(後妻への贈与が、後妻の子の特別受益となるためには、
実質的に、後妻の子への贈与と同視できるという事情が必要です。)
今回のケースで、特別受益と認められるかどうかのポイントとしては、
・贈与が、離婚に伴う財産分与の範囲内といえる金額かどうか
・この贈与の他に、離婚に伴う金銭的な給付がなされているかどうか
・離婚後も、後妻の子に対する扶養料(養育費)の給付がなされているかどうか
というあたりが挙げられるかと存じます。
ただ、被相続人の資産状況からすれば、
離婚に伴う金銭的な給付・養育費の支払いは
ある程度まとまった金額になっても不自然ではなく、
今回の贈与は、このような趣旨でなされたものとされる
可能性が高いのではないかという感覚です。
もちろん、先生の依頼者側から、
この贈与が特別受益の対象となると主張することは
全然問題ありませんので、
・贈与の金額が、離婚に伴うものとしては高額であること
・離婚に伴う金銭的な給付が他にもなされていること
(もしこのような事実があればですが)
・離婚後も、後妻または後妻の子に対して、
後妻の子への扶養料の支払いがなされてること
(もしこのような事実があればですが)
・この金銭的給付は、実質的には、後妻の子の生活補償の趣旨
でなされ、これにより後妻の子も利益を受けていること
(実質的には、後妻の子への贈与と同視できる)
などを主張して、
贈与を受けた金銭の全部または一部が、
特別受益としての持ち戻しの対象となる
と主張していけばよいと存じます。
ただ、最終的に調停・審判になった場合に、
このような主張が認められる可能性は高くは
ないとも思われます。
2 ご質問②について
>質問2
>相続人で話をした際(今日現在、1回だけ話し合いをして今週末に2回目の話し合いの予
>定です)に、
>後妻の子へお金は4,500万円ぐらいですと伝えて不動産の話をしようとしたら不動産は
>いいのでお金だけでいいですと言った
>みたいですが、後日、全体像を見ていなかったので相続分は欲しいとの連絡がありました。
>最初にお金だけでいいと言った言動で何か有利になることはないでしょうか?
残念ながら、この点はこちらに有利になる事情ではありません。
交渉の途中の段階なので、
この発言に何らかの拘束力があるものでもありませんし、
しかも、全体像を把握していない中での発言となると、
相手の意思が反映されたものともいいがたいと
思われるからです。
3 ご質問③について
>質問3
>先方は法定相続分1/3の主張に変わりました。
>法律的には仕方がないのですが、相続分として少しでも有利になるような交渉方法はあ
>りませんでしょうか?
>何かアドバイスすることがありましたら教えてください。
やはり、先生もご指摘の特別受益を主張して、
こちらに有利に進めていくしかないと思われます。
この際、相手方がこれに反発するようであれば、
特別受益として認められる可能性が高くないことも
考慮して、贈与の全額について強行に主張するの
ではなく、
一部でもよいので(たとえば半額など)特別受益として
考慮するというような柔軟なスタンスの方が、
最終的には依頼者の利益にはなるかもしれません。
この辺りは、
依頼者の意向もあるでしょうし、
交渉の進み方によって、
スタンスを決めることになるかと存じます。
よろしくお願い申し上げます。