贈与 株式 会社法

非公開株式の買戻特約付贈与契約書の有効性

以下のような特約を付した、株式贈与契約書は有効でしょうか?
退社時点でほとんどキャピタルゲインがないため、法的な有効性がある
と言えるのかどうか、疑問があります。

1 将来の幹部候補生である従業員へ、社長からの株式の贈与契約書
→ 会社経営に責任を持たせるため
2 仮に退社した場合には、全株を贈与を行った社長に譲渡する
3 2の場合の譲渡時価は、退社時の時価に関係なく、額面金額による

よろしくお願いいたします。

1 回答の結論

>以下のような特約を付した、株式贈与契約書は有効でしょうか?
>退社時点でほとんどキャピタルゲインがないため、法的な有効性がある
>と言えるのかどうか、疑問があります。
>1 将来の幹部候補生である従業員へ、社長からの株式の贈与契約書
>→ 会社経営に責任を持たせるため
>2 仮に退社した場合には、全株を贈与を行った社長に譲渡する
>3 2の場合の譲渡時価は、退社時の時価に関係なく、額面金額による

「買戻特約付贈与」というものは法律上ありませんが、

今回のケースであれば、
「贈与契約(社長→社員)」+「売買契約(社員→社長)の予約」
として、法的に有効となりうると考えられます。

もし、実際に契約を行われるのであれば、
「贈与契約(社長→社員)」+「売買契約(社員→社長)の予約」
であることが明確になるように、
契約書の内容を整備しておく必要はあります。

なお、詳細は回答の理由に譲りますが、

会社への「売買契約(社員→社長)の予約」
が実際の売買契約の効力を生じた場合には、
社員(譲渡人)から、または社長(譲受人)と社員
共同で、会社へ譲渡承認請求がなされ
なくてはならないという規定があるため、

スッキリと疑義なく

>→ 会社経営に責任を持たせるため

という趣旨を実現するためには、
種類株やストックオプションの発行
をご利用になる方法もご検討
ください。

2 回答の理由

「買戻特約付売買」は、民法579条以下に規定されており、
法律上存在します(対象は、不動産に限られていますが)。
一方、「買戻特約付贈与」というものは法律上ありませんので
今回の契約は、「買戻特約付贈与」ではありません。

もっとも、

社長から社員に株式を贈与した上で、
>2 仮に退社した場合には、全株を贈与を行った社長に譲渡する
>3 2の場合の譲渡時価は、退社時の時価に関係なく、額面金額による
という契約は、

法的には、
「贈与契約(社長→社員)」+「売買契約(社員→社長)の予約」
として、有効となりうると考えられます。

もし、実際に契約を行われるのであれば、
「贈与契約(社長→社員)」+「売買契約(社員→社長)の予約」
であることが明確になるように、
契約書の内容を整備しておく必要はあります。

売買契約の予約は、売買を完結する意思表示をした時点で、
効力を生じますので(民法556条)、
社員退社後に、社長が(元)社員に対して、
売買を完結させる意思表示をした時点で、
売買の効力が生じ、株式を譲渡したことになります。

また、

>退社時点でほとんどキャピタルゲインがない
ため不当ではないかという点は、
あくまで、社長と社員の間で譲渡価額をどのように定めるかの問題で、
社員がこれで納得して契約を締結するのであれば、
契約の有効性に関わるということにはならないと考えます。

なお、当事者間では、このような契約も有効であると
考えられますが、

会社との関係では、
会社法136条及び137条2項
により、

社員(譲渡人)から
または
社長(譲受人)と社員共同で、

会社へ譲渡承認請求がなされ
なくてはならないという規定があります。

株主名簿の変更を会社から一方的に
認める措置とは異なり、譲渡自体の承認
については、会社から一方的に認める措置を
講じることはできないと考えられています。

そして、やめてしまった社員(譲渡人)が
譲渡承認請求をわざわざするかというと
難しい部分もあるので、

疑義を残さず、スッキリとしたい
ということでしたら、

>→ 会社経営に責任を持たせるため

の目的を実現するためには、
種類株やストックオプションの活用
をした方が無難かと思います。

よろしくお願い申し上げます。