役員報酬 会社法 その他

公務員が株主・役員になることについてと個人の副業違反とは

公務員が株主、役員になることについて教えてください。

質問1
具体的には不動産管理法人や不動産所有型法人を設立する際に、公務員である人を
株主、役員とすることは公務員の法律に抵触するのでしょうか?
役員となっても無報酬なら問題はないということにもなりえるのでしょうか?

下記サイトでは役員は副業違反になるとありました。
https://www.bengo4.com/other/1146/1288/b_224842/

下記サイトでは役員で報告して無報酬ならいいのではとあります。
https://就職.co/legal.html

下記サイトでは出資しても問題はないとあります。
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/1082524.html
http://ooya-mikata.com/type/public_sisankanri.html

質問2
仮に個人で不動産賃貸業をしている場合については一定の基準以上になると報告すれば
いいとか自己管理でなく管理会社に管理してもらっていれば問題はないと聞いたことがありますが、
決まりは統一されているのでしょうか?
(国家公務員と地方公務員で取扱い・法律は異なるものでしょうか?)
その基準は
5棟10室未満かつ年間賃料収入500万円未満なら職場への申請もなく投資を続けられ、
それ以上だと申請が必要ということになるのでしょうか?
不動産投資として複数の物件を購入している公務員で懲戒免職になった記事(下記参照)を
インターネットで見たことがあります。
相続により不動産賃貸物件を相続するのは意図的ではないので自己購入の場合と相続の場合でも
異なるものなのでしょうか?

不動産投資を始める公務員が知るべき3つの注意点


http://fudousanshimane.com/category1/entry398.html

回答の便宜上、ご質問ごとに、
回答の結論と理由をわけずに回答させて
いただきます。

1 ご質問①

>質問1
>具体的には不動産管理法人や不動産所有型法人を設立する際に、公務員である人を
>株主、役員とすることは公務員の法律に抵触するのでしょうか?
>役員となっても無報酬なら問題はないということにもなりえるのでしょうか?

(1)公務員を役員とすることについて

公務員は、
~~~~~~~~~~~~~~~~
①営利を目的とする私企業(以下「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員となること
②自ら営利企業を営むこと
~~~~~~~~~~~~~~~~
は、原則として禁止されています(国家公務員法103条1項、地方公務員法38条1項)。
そして、これを行うためには、
許可が必要となります(国家公務員法103条2項、地方公務員法38条2項)。

①について、営利企業には、会社法上の会社(典型は株式会社)や、
法律によって設立される法人等で主として営利活動を
営むものが含まれます。
(人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について)

よって、
>不動産管理法人や不動産所有型法人を設立する際に、
公務員である人を役員とすること
は、①にあたり、原則として禁止され、
これを行うためには許可が必要となります。

また、報酬を受けているか無報酬であるかにより、
禁止されるかどうかを区別する旨の規定はないため、
これは法律に反するか否か(許可が必要か否か)
という点では無関係です。
(ただ、無報酬であることがその後の懲戒処分
でどれだけ重い処分がでるかという点で考慮
されるかと思いますし、単純にバレにくいという
ところでしょう。)

(2)公務員が株主となることについて

「公務員が株主となること」自体を禁止する規定は、特にありません。

ただ、株主となった上で、実際に会社の経営にも参画するということだと、
「②自ら営利企業を営むこと」にあたり、
禁止される場合もあると考えられます。

なお、国家公務員法の運用基準を定めている
「人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について」でも、

名義が他人であつても本人が営利企業を営むものと客観的に判断される場合には、
「②自ら営利企業を営むこと」と同視されるものとされています。

2 ご質問②

>質問2
>仮に個人で不動産賃貸業をしている場合については一定の基準以上になると報告すれば
>いいとか自己管理でなく管理会社に管理してもらっていれば問題はないと聞いたことが
>ありますが、
>決まりは統一されているのでしょうか?
>(国家公務員と地方公務員で取扱い・法律は異なるものでしょうか?)
>その基準は
>5棟10室未満かつ年間賃料収入500万円未満なら職場への申請もなく投資を続けられ、
>それ以上だと申請が必要ということになるのでしょうか?

国家公務員と地方公務員で、
適用される法律が異なっており、
基本的には扱いも異なることになります。

以下、それぞれに分けてご説明します。

(1)国家公務員の場合
ア 許可の要否

国家公務員の場合、個人で不動産賃貸を行うことを規制しているのは、
先ほどご紹介した国家公務員法103条1項です。

これによれば、
「②自ら営利企業を営むこと」
は、原則として禁止されており(国家公務員法103条1項)、
これを行う場合には、許可が必要になります(103条2項)。

個人で不動産賃貸を行うことが「②自ら営利企業を営むこと」に
該当するかどうかについては、
「人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について」
に基準が定められており、
以下の場合には、「②自ら営利企業を営む」に該当し、
許可が必要となります。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
二 不動産又は駐車場の賃貸 次のいずれかに該当する場合
 (1)不動産の賃貸が次のいずれかに該当する場合
  イ 独立家屋の賃貸については、独立家屋の数が5棟以上であること。
  ロ 独立家屋以外の建物の賃貸については、貸与することができる独立的に区画された一の部分の数が10室以上であること。
  ハ 土地の賃貸については、賃貸契約の件数が10件以上であること。
  ニ 賃貸に係る不動産が劇場、映画館、ゴルフ練習場等の娯楽集会、遊技等のための設備を設けたものであること。
  ホ 賃貸に係る建物が旅館、ホテル等特定の業務の用に供するものであること。
 (2)駐車場の賃貸が次のいずれかに該当する場合
  イ 建築物である駐車場又は機械設備を設けた駐車場であること。
  ロ 駐車台数が10台以上であること。
 (3)不動産又は駐車場の賃貸に係る賃貸料収入の額(これらを併せて行つている場合には、これらの賃貸に係る賃貸料収入の額の合計額)が年額500万円以上である場合
 (4)(1)又は(2)に掲げる不動産等の賃貸と同様の事情にあると認められる場合
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

この中で、今回関連しそうな部分をピックアップすると、
賃貸物件が
・一軒家の場合:5棟以上(上記二(1)イ)
・マンションの場合:10室以上(上記二(1)ロ)
・賃料収入の年額が500万円以上(上記二(3))
のいずれかであれば、「自ら営利企業を営む」として、許可が必要となります。

また、ご注意いただきたいのは、
上記にあたれば許可が必要とされるという点であり、
上記に当たらなければ許可が不要であるとはされていません。
明確にこれらに当たらなくても、行政側で、
これらと同様の事情があると判断すれば、
禁止の対象になる可能性があります(上記二(4)ご参照)。

このように、国家公務員の場合には、
許可が必要となるかどうかについて、
一定の明確な基準が示されてはいますが、
これらにあたらなければ必ずしも許可が
不要ということではありません。

これらと同規模のことを行われるということ
であれば、一応、行政に確認された方がよい
と考えます。

イ 許可が必要な場合の許可基準

これらに該当する場合には、許可が必要になりますが、
「人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)」によれば、
以下の場合でないと、許可をしてはならないものとされています。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
①その職員の占めている官職と当該営利企業との間に特別な利害関係又はその発生のおそれがなく、
②営利企業に従事しても職務の遂行に支障がないと認められる場合であって法の精神に反しないと認められる場合として人事院が定める場合
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

そして、②のうちの「人事院が定める場合」の1つとして、
「入居者の募集、賃貸料の集金、
不動産の維持管理等の不動産又は駐車場の賃貸に係る管理業務を
事業者に委ねること等により職員の職務の遂行に支障が生じないこと
が明らかであること」
が求められています。

これによれば、許可を受けるためには、
通常、業務を管理会社に委託していることが必要となる
と考えられます。

ただ、管理会社に委託していることは、
許可基準の1つにすぎません。
基本的には、許可するかどうかは行政側の裁量にゆだねられています
ので、管理会社に委託していれば必ず許可されるということ
ではありません。
(管理会社に委託していることは、必要条件ではあるが、十分条件ではない。)

(2)地方公務員法

地方公務員について、不動産賃貸の規制根拠となるのは、
地方公務員法38条(営利企業への従事等の制限)です。

ただ、不動産賃貸に関して、
どのような場合に兼業として規制の対象とするのか、
その場合の許可基準等は、各地方自治体の裁量にゆだねられています。
したがって、各自治体により扱いは異なると考えられます。

なお、大阪府が出している下記の資料によれば、
国の基準を参考にしている自治体も多いようですが、
これとは異なる扱いとしているところも散見されます。

http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/9519/00046693/soukatsuhyou-3(koumuin).pdf
(3/7ページの一番上の欄をご参照ください。)

この点に関する扱いについては、
該当する自治体に問い合わせていただくしかないと思われます。

3 ご質問③

>相続により不動産賃貸物件を相続するのは意図的ではないので自己購入の場合と相続の
>場合でも
>異なるものなのでしょうか?

この点に関して、扱いを異にする明文上の規定は
ありませんが、

もしかすると、許可の際の考慮要素になるという
レベルの影響はあるかもしれません
(これは、内部判断のレベルの問題なので、
外部からは定かではありませんが)。

よろしくお願い申し上げます。