遺言書作成後に新たに遺言者(現在も生存中)が賃貸アパートを建築し、借入金も遺言書作成時より増加しています。
質問1
その他一切の財産は配偶者という遺言書で遺言者も新しく建築したものは配偶者でいいと言っている
場合で、遺言書はわざわざ追加作成または訂正して作成しなおす必要はあるのでしょうか?
質問2
特に遺言書作成時には存在していて記載していなかったパターンと
遺言書作成時に存在することとなったため当初作成時の遺言書に記載していないパターンで
文書の趣旨や遺言書作成時は考慮されるものでしょうか?
その他はオールマイティーなのでしょうか?
質問3
仮に預金、有価証券、生命保険権利など特定の記載がない遺言書の場合でもその他一切の財産の記載が
あればどんな財産でも名義変更はできるものと解してよろしいでしょうか?
http://相続登記.jp.net/wp/%E3%80%8C%E3%81%9D%E3%81%AE%E4%BB%96%E4%B8%80%E5%88%87%E3%81%AE%E8%B2%A1%E7%94%A3%E3%80%8D%E3%81%A8%E6%9B%B8%E3%81%8B%E3%82%8C%E3%81%9F%E9%81%BA%E8%A8%80%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E7%9B%B8%E7%B6%9A/
結論としては、妻Aが上記の遺言を添付し、そこに明記されていない不動産についての相続登記申請をしても受理されるはずです
とあるため登記上はできると読み込めました。
(1)ご質問①~遺言書追加作成の必要性~
>質問1
>その他一切の財産は配偶者という遺言書で遺言者も新しく建築したものは配偶者でいいと言っている
>場合で、遺言書はわざわざ追加作成または訂正して作成しなおす必要はあるのでしょうか?
法律論(最終的な裁判の結論)
としては、特別な事情がない限り、
新築したアパートも「その他一切の財産」に
含まれると考えられます。
ただ、不動産が絡む遺言内容に疑義の余地が
多少でもあると、紛争にはなりやすいので、
できれば、可能であれば追加作成または訂正をされた方が
良いかと思います。
なお、仮に追加作成などをしない場合でも、
遺言者の意思を明確にしておくため、遺言書とは別に、
賃貸アパートを含めて、「その他一切の財産」として、
遺贈すること(「その他一切の財産」に賃貸アパートが含まれること)を
確認する書面を残しておいた方が良いでしょう。
(2)ご質問②~「その他一切の財産」に含まれる財産~
>質問2
>特に遺言書作成時には存在していて記載していなかったパターンと
>遺言書作成時に存在することとなったため当初作成時の遺言書に記載していないパターンで
>文書の趣旨や遺言書作成時は考慮されるものでしょうか?
>その他はオールマイティーなのでしょうか?
上記の2パターンとも、一般的には、
「その他の財産」に含まれるという結論は異ならないと考えられます。
ただ、疑義が出る場合に備えて、
「その他の不動産、動産、現金、預金、貯金、有価証券、
・・・その他一切の財産(遺言書作成後に取得した財産を含む)」
または
「相続開始時において有するその他の不動産、動産、現金、預金、
貯金、有価証券、・・・その他一切の財産」
のような記載にしておけば、
疑義の余地が少なくなると思います。
(3)ご質問③~名義変更の可否~
>質問3
>仮に預金、有価証券、生命保険権利など特定の記載がない遺言書の場合でもその他一切の財産の記載が
>あればどんな財産でも名義変更はできるものと解してよろしいでしょうか?
基本的には、文言どおり、
記載されていない預金や有価証券についても
名義変更できると考えられますが、
名義変更を行う金融機関や証券会社の運用によっては
簡単には認められないということもあります。
(弁護士が交渉するケースもあります。もちろん
最終的には裁判まですれば認められます。)
ですので、遺言書作成の際には、
わかる限りで預金口座や有価証券を
特定して、記載しておいた方がベターです。
なお、生命保険金の請求権は、民事上は
受取人固有の財産で、相続財産とはなりませんので、
ご注意ください。
2 回答の理由
(1)遺言書の解釈(総論)
遺言書の条項により、
具体的にどのような財産を引き継ぐことになるのかは、
遺言書の解釈によることになります。
どの財産を、誰に引き継ぐか、ということが明確に記載してあれば
解釈の余地はありませんが、この点が不明確な条項の場合、
争いになれば、最終的には裁判で遺言書の解釈を行い、
解決することになります。
判例は、遺言書の解釈にあたっては、
・遺言書の文言
・遺言書全体の記載内容
・遺言書作成当時の事情及び遺言者のおかれていた状況
などを考慮して判断するものとしています(最高裁昭和58年3月18日)。
(今回の事例とは異なりますが、遺言の解釈についての
私の参考記事です。)
http://zeirishi-law.com/souzoku/igon/kaishaku/
(2)ご質問①~遺言書追加作成の必要性~
「その他一切の財産」というのは、
具体的な財産を個別に挙げている条項と比べると、
明確性に欠ける部分がありますので、この文言により、
どのような財産を引き継ぐこととなるのかが争いになり、
遺言の解釈が問題となる可能性はありうると思われます。
ですので、遺言作成の一般論としては、
個別の財産を列挙して、
誰に遺贈する(相続させる)かを記載しておくべき
ではあります。
ただ、一般的な解釈として、相続財産を個別に列挙した後に、
「その他一切の財産」をに遺贈する(相続させる)など
と記載されているのであれば、「その他一切の財産」というのは、
個別に挙げた以外の財産をすべて含むと考えるのが一般的と思われます。
ですので、「その他一切の財産」に含まれないと考える
特別な事情がないのであれば、
他の財産はすべて含まれると考えてよいと思われます
し、最終的に裁判になれば、そのようになるでしょう。
よって、ご質問①については、純粋な法律論
からすれば、
「その他一切の財産」に含まれないといえる
特別の事情がないのであれば、
新築したアパートも含まれると考えられますので、
遺言書の追加作成の必要性は高くないと思われます。
ただ、不動産が絡む遺言内容に疑義の余地が
多少でもあると、紛争になりやすいので、
できれば、追加作成または訂正をされた方が
良いかと思います。
もちろん、他の相続人に弁護士がつけば
ここを攻めてくるでしょう。
なお、仮に追加作成などをしない場合でも
遺言者の意思を明確にしておくため、
賃貸アパートを含めて、「その他一切の財産」として、
遺贈すること(「その他一切の財産」に賃貸アパートが含まれること)を
確認する書面を残しておいた方がよいでしょう。
この場合の書面は、遺言者の意思を残しておき、
遺言書の解釈の指針とする趣旨なので、
必ずしも遺言書という形でなく、
遺言者の自署・捺印があれば、形式は問いません。
(3)ご質問②~「その他一切の財産」に含まれる財産~
上記のように、「その他一切の財産」に
どのような財産が含まれるかは、
究極的には遺言書の解釈の問題で、具体的な事情により、
結論が異なる可能性はあります。
一般論として、
遺言は、相続の開始(遺言者の死亡)により効力を生じるものなので、
「その他一切の財産」というのは、「相続開始時に遺言者が有している一切の財産」
を意味していると考えられます。
ですので、
>特に遺言書作成時には存在していて記載していなかったパターン
>遺言書作成時に存在することとなったため当初作成時の遺言書に記載していないパターン
の2パターンとも、遺言書に記載されていない財産の一切を含む
という結論は異ならないと考えられます。
もちろん、遺言書の解釈の問題なので、
遺言書の作成後に取得した財産が、
遺言書作成時に有していた財産と比べて多額な場合などには、
解釈により、これは含まれない、ということはなくはないです。
このような場合に備えて、
「その他の不動産、動産、現金、預金、貯金、有価証券、
・・・その他一切の財産(遺言書作成後に取得した財産を含む)」
または
「相続開始時において有するその他の不動産、動産、
現金、預金、貯金、有価証券、・・・その他一切の財産」
のような記載にしておけば、
疑義の余地が小さくなると思います。
(4)ご質問③~名義変更の可否~
ご質問③については、
遺言の法的な解釈からすると
名義変更可能ということになります。
ただし、実務上は、名義変更を行う各所の運用による
部分があります。
裁判まで行えば、
法的な解釈としては「その他一切の財産」に含まれる
という場合でも、
各所の運用によっては、
申請の手続段階では簡単には認めてくれない
ケースも散見されます。
預金や有価証券であれば、各金融機関や証券会社により
扱いが異なる可能性もあります。
基本的には、文言どおり、
記載されていない預金や有価証券についても、
「その他一切の財産」に含まれ、
名義変更の手続もできると考えられますが、
各所の運用によっては、
これでは簡単に認められないというところも、
なくはないと思われます。
(実際に弁護士が交渉するケースもあります。)
ですので、遺言書作成の際には、
わかる限りで預金口座や有価証券を特定して、
記載しておいた方がよいでしょう。
なお、生命保険金の請求権は、民事上は
受取人固有の財産で、相続財産とはなりませんので、
ご注意ください。
よろしくお願い申し上げます。