前父との間の子である私(法定相続分1/4)の相続人は3人です。
現時点では、調停にはまだなっておらず郵便で送られてきただけです。
義父は痴呆気味で後見人を立てている状況でした。
その間の子から弁護士作成の遺産目録と残高証明書のみいただいている状況です。
積極財産約7,300万円
葬儀関係費用約143万円
負債その他816万円
で相続財産合計約6,355万円です。
この中で負債その他として財産から控除できるものか教えてください。
1.H23-27年度の介護施設入所代約691万円(年間110万円-150万円程度)債権者は義父と記載あります。
2.残高証明手数料 2,562円
3.戸籍謄本等取得費 5,600円
4.被相続人の施設入所後の被相続人の月額貯金を立替3万円×34=102万円 債権者は義父と記載あります。
5.被相続人の施設入所後の被相続人の月額貯金を立替2万円×11=22万円 債権者は義父と記載あります。
合計約816万円
とくに1の妻に対する介護施設入所代と4.5の月額貯金立替分は控除できるものでしょうか?
夫婦間で扶養義務のある間柄で、母の預貯金の金額もある中で夫が立替えていたということで
控除することはできるのでしょうか?
※また相続税の申告書上、介護施設入所代を債務控除しているかどうかでも考え方は左右されるものでしょうか?
先方は800万円で納得してくださいとあり、納得しないときは調停にしますとありました。
金額的には偶然なのか遺言書はありませんが遺留分とした割合の1/8の金額でした。
この文書のみで相手の弁護士の意図はどのようにしようとしているのでしょうか?
また、弁護士の意図は、末尾にイメージの会話を
つけましたので、そちらもご覧下さい。
1 ご質問①~計算上消極財産になるものについて~
(1)残高証明手数料等
>2.残高証明手数料 2,562円
>3.戸籍謄本等取得費 5,600円について
こちらについて、民事上は、
遺産の管理や清算のために使った費用
として、遺産からの支出が認められると考えられます
(民法885条1項)。
(2)介護施設入所代等
>1.H23-27年度の介護施設入所代約691万円
>4.被相続人の施設入所後の被相続人の月額貯金を立替3万円×34=102万円
>5.被相続人の施設入所後の被相続人の月額貯金を立替2万円×11=22万円
ア 贈与と認められるかについて
扶養義務の履行か否かは別として、
この金額を贈与するものであったという場合には、
相続債務とすることは認められません。
ただ、義父は、後見人を立てているということですが、
裁判所の運用として、
後見人による贈与は基本的に認めないものとされています。
また、後見人の他に後見監督人が選任されている場合には、
贈与をするには後見監督人の同意(民法864条、同法13条1項5号)
が必要となります。
ここは調査やヒアリング等が必要なところでになりますが、
今回のケースで、
成年後見人が選任された後に上記の支出がなされているということであれば、
このような厳しい規制がなされている中で、
あえて贈与をするというのは、実務上あまりないので、
贈与と認定するのは、比較的難しい事案かと思われます。
イ 扶養義務の履行か否かについて
まず、今回の相続人のすべてが被相続人に対し、法律上、
扶養義務を負っている状態でした(夫:民法752条、子:877条1項)。
ただし、現実に上記の費用を負担することが
扶養義務として必要であったか(被扶養者の
状態や資産等によります。)、
扶養義務を誰が優先的に負うか、
その扶養の程度や方法は、当事者間の協議または
家庭裁判所が定めることになります(民法878条、879条)。
ですので、最終的には誰がどのような
扶養義務を負っているのかは裁判に
ならなければわからないところがあり、
個別事情に従って判断されることになります。
子の弁護士としては、立替えていただけで、
義父から被相続人に対する債権が
存在している(扶養義務の履行としてではなく)
として、相続財産の中で、これを考慮して
合意しようという意図かと思います。
なお、これを扶養義務の履行として法的に
構成することが可能な場合には、
相続債務とするのではなく、
別途扶養義務の負担
割合の問題として、義父から「子」「私」
への固有財産として求償請求の問題となります。
この求償できる金額(負担割合)も、
最終的に協議が整わなければ、裁判所で定めるということになります。
長い時間をかけた上、結果として金額的に
相続債務として処理した場合と大きな
違いがないということも多いので、
民事上は、その部分も、遺産分割協議(調停含む)の
中で合意解決しようというケースが圧倒的に
多いかとは思います(もちろん、合意金額の中身
を決める際にこの部分も考慮して合意するという
形は民事上可能です。)。
ウ 申告上債務控除にしている点について
なお、
>※また相続税の申告書上、介護施設入所代を債務控除しているかどうかでも考え方は左右される
>ものでしょうか?
こちらは、一応、義父が被相続人に対して、
債権を有していたということを基礎付ける
間接的な証拠にはなりますが、
あくまでも、申告者の提出時点での認識
を表示しているにすぎませんので、今回の事例
では、大きな意味を持つわけではないと
考えられます。
2 弁護士の意図
>先方は800万円で納得してくださいとあり、納得しないときは調停にしますとありました。
>金額的には偶然なのか遺言書はありませんが遺留分とした割合の1/8の金額でした。
>この文書のみで相手の弁護士の意図はどのようにしようとしているのでしょうか?
もちろん、被相続人の離婚後の生活状況(誰と同居していたかなど)にもよると思いますが、
下記のような考えの可能性が比較的高いのかなと思います。
依頼者である子の相続財産を「私」にあげたくないという意思が硬く、
法的手続きに乗せなければ解決が難しいというところかと思います。
~~~~~~~~~イメージ~~~~~~~~~~~~~~~~
子:「前父の子どもである「私」に、なんで相続財産をあげなきゃならないんでしょうか?」
弁護士:「そこは法律で決まっていますので。」
子:「でも、私と同じだけなんて納得できません。」
弁護士:「わかりました。法律では決まっていますが、「私」が揉めるのも面倒だと考え、それで良いといってくれれば、それで大丈夫です。
ただ、0ということにするとさすがに「私」もそれで納得はしてくれないと思うので、せめて、相続分の半額で一度提案してみましょう。その後、調停になった場合も、この半額から交渉していきましょう。」
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よろしくお願い申し上げます。